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005 日本をやり直す/忖度

 現行選挙制度の最大問題は、賞味期限。特に、日本の現行選挙制度は明らかに賞味期限を過ぎている。何故ならば、目的とした政権交代が起きないからである。かつての中選挙区制では、疑似政権交代が何度も起きており、賞味期限が切れるときには細川連立内閣が誕生している。
 1994年に選挙制度が改革されて以降も自民党の優位は続いたが、徐々に民主党が大都市を中心に勢力を伸ばす。この頃、守旧派の一掃と利権構造の解体、ということが声高に叫ばれるようになる。新しい選挙制度の下で、2度に亘って本格的な挑戦がなされた。小泉内閣と民主党政権である。国民の高揚感は高まったが、2度とも結果的に失敗する。
 改革路線がとん挫する中で、2011年3月、東日本大震災に襲われる。その後の選挙では、戦前回帰を思わせるような自民党右派が伸長する。守旧派によって利権構造が温存される。あらゆる組織における忖度の蔓延。
 映画「怪物」では、小学校の校長に対する忖度を滑稽に描いている。忖度は、官僚や教育だけではない。地方自治体、企業経営、研究・開発、医療、介護・・・あらゆる人間組織を侵食している。忖度は、改革や創造の対極にある。もちろん忖度を簡単に悪と見做すことはできない。人間社会にとって必要不可欠なものでもある。要はバランスであるが、今は間違いなく行き過ぎている。

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