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「どん底旅」#4. どん底で見えた青空


2012年1月、退職旅後のストーリー

「明」

絶好調で盛り上がる

2011年
海外人気グループの来日コンサートで
熱狂的なパフォーマンスが続いた
さいたまスーパーアリーナ
ドームの場内

雷の様な観客の歓声と
太陽の核に負けないエネルギーで
まるでドームの屋根が揺れて
東京湾まで吹き飛びそうに

公演が終わっても
感動や熱気はなかなか縮まない
帰りの足が動かない
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「暗」

一方、
同じ時間
同じ空間
その巨大な舞台の暗い裏では
白いヘルメットと作業道具で武将した
部隊員の様な数百人のグループが
緊張して
作戦開始のシグナルを待っている様

カサカサ
ひんやりとした空気が
水をいっぱいかけた綿の様に
舞台の裏を支配し
じっくりと
染・め・る

何とも言えない
複雑な心境だが、
そんな感情も
今は余計

……

ハロワークに求人登録して
通いながら

生存稼ぐの生活が始まる

恐竜橋とも言う
東京湾の新しいランドマーク
東京ブリッジ・ゲートが開通した2月

完成を目前にしたスカイツリーを見ながら

大田区の個人自宅のリフォーム
千葉のパチンコリニューアル
種苗工場のクリーニング
東京駅大丸ビル内徹夜の店舗解体
小平市パチンコクリーニング
町田市グランベリーモールの徹夜店舗解体
千葉県松戸市パチンコリニューアル
渋谷ヒカリエオープン前のクリーニング
次々
しながら

応募した旅行会社は
次々
種類が戻る

あるいは自転車で
江戸川を渡り千葉県市川で
あるいは都内作業場所近い所で
ハロワークを巡る

全力を尽くして
代2次高位幹部面接まで進んだ
第一種有名旅行会社は
その後連絡もない

挫折?
絶望?
しない!

荒い仕事をやっていつ間
いつの間にか
何回も一緒になる
顔見知りの仲間も出来て
自分の努力を認めてくれた
チームの上司も出来て

慣れてきた

冬らしい
固まった表情は
少し笑顔戻り、
心からのやっと花が咲いた。

現場の空気も
穏やかになり

仲間たちに
先話をかけたり
新人をサポートしたり

派遣会社からも
現場からも
徐々に
信頼を得る

渋谷の派遣事務所に
仲間達と作業の伝票を渡して

一緒に食事、
皆の生き方や夢は
それぞれだが
素晴らしいご縁
人生のこの視点で
出会った僕ら

すれ違う短いご縁かもしれないけど、
それでもやっぱり不思議だなと。
笑顔で言いながら
飲む生いっぱい

汗をかいて終えた
仕事の後ビールは
実に旨い!

「俺が年上だから
今日は俺がごちそうするよ!」

「何言っているんですか。ここは日本ですよ、稼がなきゃ(笑)…兄貴、ありがとう。」

……

帰り道見える夕焼け
毎日見えるのだが、
今日はとりわけ美しい

ビールのせいか
気分のせいか

そう、
世の中は
まだまだ
生きる価値があるぞ

諦めは
まだまだ早いぞ

その時、
雷の様な
シグナルを感じ

頭を見上げたら
青空が見えた

それは正に

退職旅以後
初めて感じる
青空だった。







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