幽霊騒ぎ#4

Σ( ̄□ ̄|||)
闇の中に消えてしまった「草善」を逃した俺は大パニック状況であった。
しかし、その直後俺は「草善」の吠える声と共に聞こえた別の音を感じ始めた。
それは…誰か歩いて来る軍靴の音だった。

遠くから聞こえた軍靴の音は収まっている「草善」の吠える声に対してどんどんはっきり聞こえて間違えなく第2警戒所(哨所)の方から俺に迫って来た。
正体不明の何か近づいて来る。
「ど、どういうこと?」体と共に声まで本能的に震えて来た。
暗黒と濃い霧の中で徐々に現れる正体は…幸い(?)に何となく人の姿であった。
驚いたのは大人しくなった(?)「草善」をコントロールしながらひもを握て連れてくるのではないか!
常に軍犬はパートナ(飼い主)以外の親しみない者に対しては警戒したり攻撃するように訓練されているのに…これは実に異変であった。
空軍飛行団(飛行場)の中でミスで軍犬が逃げたら飛行団全体が非常事態モードになりその以後は君の想像に任せる。
だから戻ったのは良かったけど…まだ油断できない。向こうの正体が分からん。
反射的に俺は冷たいK2小銃の向きを前に狙て警戒モードに入った。
固唾をごくりと呑んだ。

(第2警戒所の)もしキム三等兵(一般兵士で兵長に続いて2番目高い階級一等兵の上)なのか…
こいつ、つまらなくておしゃべりでもしに来ているのか。
ところが、やつは三等兵に進級したばかりで勤務地から勝手に離れて、しかも警戒所有線電話やTRS(軍隊で使用する無線機器)で事前連絡もなしで上級者である俺に突然来るわけがなかった。
狂ってなかったら…
じゃないと巡察中の当直士官か。北からの敵か。
だったら第2警戒所の方面からだから同然キム三等兵から何だかのジェスチャーや通報が来るわけなのに…
あいつもしかして居眠りしているのか。

じゃないと…まさか…

だけど、今あちから見えている姿は人で間違えない。
やがて軍服の姿の彼(?)が目の前に現れた、俺は兵長らしく落ち着いて冷静になって通常マニュアル通り対人誰何モードに入った。
「停止!」
「手を上げろ!」
(今日の暗号交換)「ロミオ!」
「…ジュリエット。」当たり。
「誰だ?」
「当直士官だ。」
「目的は?」
「巡察中。」
(身分が確認されたから小銃方向を上に戻し警戒モードオフにして)「必勝!(当時空軍の敬礼のスローガン)勤務中異常なし!」
「草善」を逃したから異常あるけど…

彼の右腕には確かに「飛行大隊当直士官」と馴染みある黄色い腕章がはっきり見えた。
とにかくほっとした!
俺が想像したあのもの(?)じゃなくてよかったという安心感で問われるかもしれない「草善」を逃した責任問題はこの瞬間だけはどうでも良かった。

当直士官は意外と無口で「草善」のひもを俺に渡した。
「? あ、ありがとうございます。これからは気を付けます。」
「…」
こんな広い駐機場(軍用機滑走路)を徒歩で巡察する珍しい(あまりにも広すぎて普通は軍用ジープで回る。)当直士官と真面目な牛みたいについて来る「草善」の姿、責任も問わない様子はちょっと怪しいことであったけど、とにかく彼は人間(?)であり、「草善」は大騒ぎなく戻ってきたのが何よりであった。

自分より3~4才ほど年上に見える彼によると個人的にちょっと心がもどかしく当直室から出たら夜中の空気がとても涼しくて濃い霧が神秘的に感じついここまで来たというつまらない(?)話を語り始めた。彼も話し相手を見つけて嬉しかったようにも感じた。
そして、彼ともいろんな話が続けた。
俺は彼がほとんどの幹部たちと違って部下である兵士(俺)を見下ろすじゃなくて同じ人間として尊重してくれる姿勢が気に入った。
自分より少なくとも10センチも背が高い彼の顔は闇の中だし、戦闘帽を深く被ってありはっきりは見えなかったが、暗くて寂しい印象を受けた。
風邪でも引いたか少し枯れた声は話の途中でも結構小さい咳が出た。

宗教がクリスチャンか彼の人生の話の中では何回もイエスキリストを賛美する話が多かった。
当時カトリックであった自分の宗教とは別として一人の人間として基本的に彼の話には共感も多い、俺らの話は一時間も続いた。
そんな彼に分けなくビビって(?)いた「草善」に対しても彼は「立派なやつではないか!大事にしろ。」という誉め言葉も忘れなかった。
「風邪気を付けろ。」というヒューマニズム(?)まで見せた彼は第3警戒所を離れまた闇の中に去った。
とりわけ寂しく見える彼の後ろ姿をみたら彼が地が沈むようにため息をしながら話したのを思い出した。
「生きているのは…とにかくいい事だ。与えられた人生を無駄に使うのは罪悪だ。大切に…」
当たり前の話だが、その話は俺に長い余韻を残した。

なんだかんだ時間は進んで後残り2時間ほどであった。
軍隊で警戒(哨兵)勤務を経験した者は言うまでもないけど、最後の1~2時間はマジで…本当に…ホンマ…クッソ!進まない。
眠い!寒い!だるい!つまらん!
その法則から自分も自由にはなるのは無理だろう。
「草善」を連れて警戒エリアを回った俺は第2警戒所と俺の第3警戒所の真ん中のエリアでキム三等兵に会った。やつもまるでだるい猫がネズミを見つけたようにうれしい顔だった。

軍隊は意外と単純なところだ。
俺は先の騒ぎを言いながらやつをからかうつもりで言った。
「おい、お前さ、当直士官お前のところ(第2警戒所)から来たのに何で通報なかった?お前彼女の夢中でも見たのかい?」

「はい?オー兵長、何をおっしゃっていますか。俺のところから誰も行ってないですよ。」
「???」

<続く>

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