幽霊騒ぎ#3

第3警戒所(哨所)は静かであった。

「草善」も意外とおとなしかった。

濃い霧、真っ暗の中で沈黙の中で歩くたびに硬い軍靴の音と「草善」の首に掛かっているひも(Leash)が首を囲むステンレス製首バンドにかちゃんとする音…

そして、右肩に掛けているK2自動小銃の銃口が自分の右太ももを触れるリズミカルな音がとりわけ寂しく感じられてまるで夢の中で浮かんでいる気分であった。

俺はもしかして襲ってくる「居眠り」からの攻撃(?)に備えて予め考えておいたレパートリーの通り最新歌謡からはじめ自分が知っている曲はすべて絞り出した。さらに幼稚園卒園式に歌った曲まで思い出しているところであった。

大体90曲ぐらい歌ったらもう喉が痛くて声が出ない段階まで来た。

お前、いったい何やっているだろう。というふうに情けない目で見ている「草善」の目と合った。

ため息が出た。俺、何やっているだろう。苦笑い…

腕時計を見たら時間はちょうど夜中2時30分をすぎるとことであった。

その時だった。

体を丸めて座っていた「草善」が突然まっすぐに立って遠い第2警戒所の方向に向けて神経質に吠えはじめた。

「草善」の突発的な行動でびっくりした俺は「草善」の力に圧倒されつい握ていたひも(Leash)を落としてしまった。

やつはこの瞬間を待っていたように止める暇もなく弾力をうけたバスケットボールのように体をはねて出てしまった。そして、暗黒の中に消えてしまった。

<続く>

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