今彼女《イマカノ》・支えと再出発/小説⑨-③【完結】/ストレスジャンププール
目が覚めて、ホテルのカーテンを開けると、夕陽が落ちる所だった
ぐっすりと深く眠れたのは一体、いつ以来だろうか?
安心・安全な場所で眠れることが、、
こんなにも有り難くて、幸せなことだと、身を持って知ることになるとは…
普通や凡人で終わる、人生だと思っていたけどね…
昨夜は、途中で寝てしまったが、あたしの身の振り方を考えないと、いけない
人生を立て直す、最後の機会を、あたしに与えて、くれたんだ
元彼に、これ以上、金銭的に頼ったり・甘えるのことは出来ない…
あたしの話しばっかり聞いて貰ったけど、、、
元彼達が、今どんな生活や暮らしをしているかは、話そうとはしないし、聞いても、はぐらかされたりした…
元彼の美学とも言える、、
"人に恩を着せるのを嫌うし、人から恩を着せられるのを、すごく嫌う所"
人としての潔さや、さっぱりしているとも思うけど、、
それは、どこか人を寄せ付けなかったり、拒絶しているようにも感じた
付き合っていた頃も、元彼の全てを知っているわけでは、ないしね…
あたし自身の事を、考えよう
けど、どうしたらいいのか…
誰に、頼ったらいいのかな…
役所に行っても、また不快な思いを、するかもしれないし…
人が怖いし、誰を信じたらいいかも、分からない…
ふと、昨夜、元彼が言っていた事を思い出す
今、泊まらせて貰っている部屋は、今彼女さんを頼って、探して貰ったと言っていた
付き合っていた頃の元彼なら、1人で抱え込み自分1人の力だけで、解決しようとしただろう
だからかな?
元彼から余裕やゆとりを感じて、安心して話せたし、聞いて貰えたのかな?
分からない事や不安な事は聞いて貰って、頼ってもいいのかな?
信頼できる人や、安全と思える人になら…
あたしは、昨夜、貰ったテレホンカードを握りしめ、公衆電話のある、ホテルの受付へと向った
~~~~~~~~~~
昨夜、遅く帰ってきた今彼
お互いの話しが終わり、簡単に作った料理を持っていくと、横になり眠っていた…
この人、がんばり過ぎる所が有るから、無理しちゃったのかな?
それが、今彼のよさであり、いい所でも有るんだけどね
風邪を引かないように、毛布を掛けて上げて、あたしも眠ることにした
お互い、過去の恋愛については、必要以上に探ったりしない
今の2人に、関係がない事ならね
元彼女さんの事は以前、今彼から話してくれて知っていた
あたしと付き合ってから、当時の事を後悔したり、申し訳ないと思うように、なったそうだ
「そう思っているなら、伝えてみたら?」
と言うと、、
「いい別れ方が出来なかったし…
連絡を取っていないから…
今、どんな風に自分の事を思っているか分からないし、会うのが怖いんだ…」
物怖じしない強さもあるけど、とても臆病な面も持っている人だと思った
そんな所も、人間らしくて・人間臭くて好きなんだよね
昨日の事も、今彼にとっては、元彼女さんに謝る機会が、突然に訪れたんだと思う
それは、生活に困窮し窮地に陥っている状態での、再会だったけど…
肝心なことは、ちゃんと伝えられた様で、よかったと思う
できることなら、生きている間に、お互いの想いを伝え合う事ができる方がいいと、あたしは思うからだ
翌日の今日は、お互いに休みが重なっていた
いつもなら、一緒に散歩に行ったり、買い物に行くけど…
昨日の事も有り、遅い朝に目が覚めた
早起きの、今彼が起きていなかったのも、まあ昨日の今日だしね
様子が気になり見に行くと、なんだか苦しそうな顔をしている
おでこに手を当てると、熱があるようだ
心身ともに、疲れきってしまったのだろう…
以前も、似たような事があったけど、安静にして休養をしていれば、回復するのを知っている
それに、この時期に病院に行って、下手にPPP検査を受けさせられ反応が出ると、大変な事に巻き込れる、、、
(科学的根拠や証明が不十分でも…)厳し過ぎる法令により、仕事で関わる人達が、濃厚接触認定されると、出勤停止の自宅待機にさせてしまうし…
尚且つ、事業所自体が数日の営業停止にもなりうるから、職場に多大な迷惑を掛けてしまう…
原因の発端だから当然、、、
陰口を言われ、差別をされ、村八分が待っている…
職場に居ずらくなり、仕事を失うことになる…
また、反応が出たと知った人達の口から噂が広まり、差別が増長し、住む場所も失いかねない…
検査を受ける事で、起こる結果を理解している人は、検査さえ避ければ、対人関係を破壊せず、身近で関わる人達に害を及ぼさないと熟知しているが…
繰り返し、繰り返し…
何度も、何度も…
命の不安と恐怖を煽る、偏った報道で信じ込まされ…
検査を受ける事が、命の危機から唯一の救済手段と、誤解と誤認をさせられている人が多い…
ふぅ…
今彼に、身体に優しいものを作ってあげようと思い、冷蔵庫に行こうとすると…
「…ごめん。熱が出ちゃった…
今日、一緒に出掛ける約束してたのに、ごめん…」
と、あたしの腕を弱々しく掴んで言った
「…いいよ。
昨日、今彼、とっても頑張たんだし、仕方ないよ。
また、休みが合った時でいいよ。
それより、食べれそう?
何か作ろうか?」
「…昨夜、作って貰ったの
食べたい…」
「うん、わかった。温めてくるね。」
「ありがとう。
こんな状態だけど…
今彼女に、頼みが、お願いがある…」
「…元彼女さんのこと?」
「…うん。
元彼女の力になれる人を、探そうかと思っていたけど…
頭が働かないし、動けなくて…
オレの友人や知人にメールを送って欲しい…
文面は…
仕事を失い、住む場所を失った女性がいる
まともな支援をしていて、信頼できる人や団体を知っていれば教えて欲しいと…」
「うん。わかったわ。あたしの友だちにも聞いてみるね。
今彼の、スマホ借りるよ。
あと、共通の友達以外で、送る人を教えて。」
今彼のスマホでは代筆して、自分のスマホでは自筆でメールを送った
今彼の看病や家事をしながら、お互いのスマホに返信や電話が掛かってくる
情報が集まると、支援を受ける知恵が集まり、道筋が見えてきた
お互いの友人や知人達が、時間を使い調べてくれて、有り難たいと思う
今度、会ったら改めて、お礼を言おう
夕方になり、今彼のスマホが鳴る
"公衆電話"と表示された
昨夜の話しから、元彼女さんだと思った
今彼は寝ているし、あたしが出るしかないよな…
「…はい、今彼の携帯です。」
今日、何度か口にした言葉だった
電話先の相手は、はっと息を呑む気配がした
「…えっ、えっと、今彼女さんでしょうか?
あたしは、元彼の元彼女です…」
「ええ、今彼から、元彼女さんの事情は聞いているわ。
実は、今彼が、熱を出しちゃてね…
今彼に頼まれて、代理で電話に出ているの」
「…えっ、熱って…
だ、大丈夫ですか?」
「まあ、時々、がんばり過ぎると、よくある事だから大丈夫だと思うの。」
「…ああ。」
と肯定されて、元彼女さんと付き合っていた頃から、そうだったのだろうと知る
呻き声がして振り向くと、今彼が、あたしに手招きをして、電話を代わって欲しい動きをした
スマホを渡すと、熱が出たことを謝りながら、元彼女さんに、この先についての考えを聞いていた
一旦、電話を保留にした今彼が、あたしに言った
「…元彼女、支援を受けたいが、不安や怖さが、あるらしい。
今彼女に、また頼んでしまうが、ちょっと会って、話しを聞いたりして貰ってもいいかな?
本当は、オレが動けたらいいが…」
「…まあ、乗り掛かった船だし、みんなに調べて貰ったおかげさまで、支援については、あたしの方が、助言や力になれると思うの。
それと、自分のこと、責めたりしないでね。」
「…わるい」
「…それだと、責めてない?」
「…ああ。ありがとう。助かるよ。」
「そう、それでよし。
じゃあ、この先は、あたしが話すね。スマホ貸して。」
電話を代わり、元彼女さんに、2時間後にホテル近くのファミレスで会おうと約束をした
元彼女さんとは、会うことはないだろう…
会ったとしても、今彼と一緒だと思っていたけど…
まさか、2人きりで、会うことになるとはね…
初対面だけど、お互いに微妙な関係で、気まずさもある…
心の準備や、気持ちの整理が必要だから、会うまでの時間に、ゆとりを持った
ふう~
まあ支度しながら、考えるか…
支援についても、あたしの気持ちも…
~~~~~~~~~~
今彼女さんと待ち合わせをしたファミレスで、時計や出入口に目を配る
お互いに初対面だし、元彼不在で会うのに躊躇う気持ちもあった…
熱が出たのは、あたしのせいではない、と言ってくれた
付き合っていた頃にも、似たようなことが、あったなあとも思い出した
それでも、元彼に無理をさせて、しまったのかと、自分を責める気持ちもある…
そう考えていたら、視線を感じた
人を探しているように見えるし、なんとなく、この人かなと思い、腰を上げた
すると、ほっと安心した表情に変わり、あたしの席まで来ると、、
「元彼女さんですか?」
と聞いてきた
電話で話した時と、変わらない口調に、利発で頭のよさそうな印象を強くした
「あ、はい、そうです。
今彼女さんですよね?
わざわざ、来て頂いて、ありがとうございます。
あの、元彼の具合は、どうですか?」
「熱も下がってきたし、食欲はあるから、大丈夫だと思うの。
とりあえず、注文しませんか?」
「はい。」
今後についての話しは、頭を使うだろうし、お互いの気まずさも有り、料理は場を繋いで、くれるだろう
~~~~~~~~~~
注文した料理が、運ばれてきた
「それで、今後の事についてだけど…」
今彼女さんの言葉を遮り、
「その前に、今彼女さんに少し、お話ししても、いいですか?」
「…ええ。」
「あの、あたし、元彼とはケンカ別れをして、連絡も取っていなかったし、ずっと会っていなかったんです。
両親は事故で亡くなっていて、頼れる人がいなくて…
昨日、不思議な夢を見て、元彼の事を不意に、思い出したんです。
それで、連絡を取ろうと思ったんです。
あたしの為に、色々として頂いて、とても感謝しています
お二人の幸せや関係を邪魔したり、立ち入るつもりは、ないことは、お伝えしたくて…」
「…ありがとう。
率直に、正直に話して貰って、安心したわ。
浮気をする様な人ではないし、まあ分かりやすい人だから言葉や態度に、すぐに出るだろうけどね…
信頼はあるけど、不安や心配が、なかったわけでは、なかったの…」
「…そうですよね。」
「今彼って、素直でまっすぐだけど、その反面なんか、危うさもあってね…」
「それ、わかります!
付き合っていた頃、魅力にも感じましたが、それが生きずらそうにも、見える事があって…」
「ねえ…」
付き合った時期は違っても、同じ男性を好きになって、共感できることが、あるんだなあ、、、
「それじゃあ、本題に入ってもいいかな?」
「…はい。」
~~~~~~~~~~
実際に会って話してみないと、どんな人かは分からない
今彼から、話しは聞いていたが、思いやりもあるし、誠実な人でよかったと、ほっと安心できた
改めて、元彼女さんから、今後についての考えや、不安や心配を聞いた
それを踏まえて、元彼女さんにとって必要とする提案や、情報提供を、、、
ふう~
「今彼か、あたしが、役所や支援団体まで、一緒に出向いたり、話しを聞いたりすることは、協力できるの。
ただ、最終的な選択や判断は、元彼女さん自身に、決めて貰う事になるの。
その点は、大丈夫かしら?」
「…はい。一緒に行って頂けるだけでも心強くて…
とても助かります。」
「税金による公助で有る、福祉政策にも困っている人を喰い物にしようとするクズや、金儲けに利用しようとする企業や団体が群がってくるの…
養育費(税金)目当てに、養子縁組制度を悪用する輩…
HPや役所に対しては、綺麗事と慈善事業を全面に打ち出しても、実際は私腹を肥やす事に専念する、悪徳NPO団体…
ブラック企業が、面接で騙したり、労働契約を反故にして、後出しで悪条件を承諾させるようにね…
あたし達の、頼れる限りの伝手の力を借りて、脈が有りそうな選択肢を、いくつか考えてきたの。
その中から検討して貰って、1つ1つ、実際に会ったり、話しを聞いてみて、見極めていくしか、ないんだけど…」
~~~~~~~~~~
元彼だけでなく、今彼女さんも、あたしの為に、調べてくれたり、考えてくれている事に、とても驚いた…
世の中で、あたしの事なんて、誰も助けてくれない・関心もないと思い、生きることを諦めたのに…
この先が、どうなるかは、まだ真っ暗で分からない
けど、足元を照らしてくれたり、近くで寄り添ってくれる2人の存在は、大きな支えだ
住む所を見つける…
仕事を探す…
仕事を続ける…
再び自立できるまでには、様々な困難が待っているだろう…
2人とは、友人という新たな関係に、なれたらと願う
ずっと先になるだろうけど、この恩をいつか、返せる日が来ることを祈りたい
終わり
………………
お読み頂いて、ありがとうございます。
3話に分けて投稿しましたが、1話毎の話しが長くなりました💦
物語と併行して、日頃、感じてる想いや考えを込めました
私自身、住所を失う経験は無いですが、、、
"きっとうまくいく"
"きっと大丈夫"
と、主人公の行く末と、幸せを願います
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