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財布と公衆電話/私小説④/ストレスジャンププール

どうしよう困ったな…

財布を落としちゃったけど、取りに戻ることができない…

また、あの怖い人に会ったらと思うと、、、

怖くて身体が動かなくなる

はぁ…

なんとか、駅のホームまで、走って逃げてこれたけど

使い慣れた公衆電話で、お守り袋に入れて貰っていた100円玉を入れて、おとうさんとおかあさんの携帯に電話したけど、繋がらない…

お仕事中かな…

受話器を戻すと、ピピーという音がして、涙が浮かんでくる

はぁ…

ふと見ると、受話器に魔酢苦がぶら下っている

さっきまでは無かったのに

なんだろうこれ?

だれのかな?

手に取って見ると、辺りが急にプールに変わり始めた

~~~~~~~~~~
気が付くとプールは消えていて、公衆電話の前に立っていた

あれ?へんだな?

プールに変わったと思ったのに

すると、、、

「あれ!?やっぱり、あの時の魔酢苦だよ!」

大人の女の人の声がする

びくっと身体が固まり、動かなくなる

どうしよう、また怒鳴られたりしたら…

ぎゅっと目を閉じていると、さっきの女の人の声がした

「ねえ、どうしたの?大丈夫?」

優しい声がして、恐る恐る目を開くと、心配げにわたしをみている

女の人の後ろに、男の人もいたけど、2人とも魔酢苦をしていない

なんだかホッとして、涙が止まらなくなり、声を上げて泣いてしまった

「よし、よし。もう大丈夫だよ。」

と、優しく背中をさすってくれた

わたしが泣き止むと、ジジョウ?なにがあったのか、話せるかと聞かれ、頷いた

男の人が、落ち着いた所で、話そうと言い、ファミレスに行くことになった

以前は、おとうさんやおかあさんが、休みの日に、よく連れて行って貰ったけど…

でも、財布を失くして、お金を持っていないと言うと、2人は顔を見合わせてから、男の人が、

「お金のことは、心配しなくていいよ。ぼくも、こどもの頃に困ったときに、大人達に助けて貰ったことがあるから。自分の番が来たのかなと思うんだ。」

優しそうで、わるい人ではなさそうだ

ファミレスに着くと、女の人に遠慮しなくて、いいからねと言われ、メニューの飲み物とデザートとを指差すと、微笑んで頷いてくれた

料理が運ばれてくるまでの間、とても仲がよさそうに見えたので、夫婦ですか?と聞くと、2人とも照れたように笑い、首を横に振った

2人を見ていると、以前の仲がよかった頃の、おとうさんとおかあさんを思い出す

ジシュクと言われ、人が出かけたりしないと、エイキョウを受ける仕事をしていた、おとうさんとおかあさんは、カイシャが、カイコをしなくてはいけなくなり、お仕事がなくなった

シツギョウホケンがなくなると、ケンカが増えて、家にいるのが怖くて嫌だった

今は、おとうさんはアルバイト、おかあさんはパートの仕事をしている

ケンカは少なくなったけど、おとうさんもおかあさんも、疲れて帰ってきて、寝ている時も苦しそうだ…

食べ終わって気持ちが落ち着くと、2人はわたしが話すまで、静かに待っていてくれた

ゆっくり、すこしずつ、怖いことが起こる前の話しから

ジシュクが始まってから、小学校は以前にも増して、嫌いな場所になった

みんなと同じとか、流行のマンガとか、有名YouTuberとか、わたしは好きじゃなかった

合わない、馴染めないと思っていた

ジシュクが始まると、手が痛いのに手を洗いなさい

暑くて息苦しいのに、体育の時間も魔酢苦をしなさいと、先生が言う

先生がいない時も、守っているか見張っている子がいて、いちいち先生に言いつける

だから、わたしはケイムショという、大人の人がわるいことをしたら入る場所に変わったのかと思った

てれびやしんぶんが言うと、オウムの様に、そっくりマネする子が現れる

以前より悪質なのは、おとうさんやおかあさんのことを、バカにする子がでてきた

「ジジョ努力が足りない・ジコセキニンだから甘えるな・ヒセイキハ底辺」と、ヒドイ言葉を言われた

悔しくて、顔が熱くなったけど、なんて言い返したらいいか分からなくて、涙が溢れた

放課後、誰もいない教室で、机に突っ伏して泣いていたら、用務員さんに教室の鍵を閉めるので、お家に帰りなさいと言われた

泣いている顔を見られたくなかったので、慌てて出た時に、机の中に魔酢苦を忘れてしまった

下を俯きながら歩いていたら、犬の散歩をしていてた、大人の男の人とすれ違った

「オイ!」

と突然、呼び止められた

「なんで、魔酢苦していないんだ!学校は何をしているんだ!」

と大声で怒鳴りだした

怖くて、頭が真っ白になった

「名前を言いなさい」と言われ、嫌だったので首を横に振ると、何度も言いなさいと、しつこく言ってきた

おとうさん、おかあさん怖いよと思っていたら、、、

当然現れたネコが、犬に威嚇をして、吠え合いが始まったの

注意が、犬とネコの争いに向いた隙に、わたしは駅に向かって走って…

ようやく話し終えると、女の人が、

「大人の男の人に、大声出されて怖かったよね。

ネコさんの、おかげで逃げられてよかったね。

怖い思いをしたこと、勇気を出して話してくれて、ありがとう。

それに、今の子って、そんなヒドイこと言うんだ。

政治も報道も最低だからかな?」

と聞かれた男の人も、頷いていて、何かに怒っているようで、険しい表情をしていた。

「えっと、その時に財布を失くして、しまったのかな?」

と男の人に聞かれ頷くと、涙が出てきた

小学校の入学祝いに買って貰った、お財布

大切に使っていたのになと、悲しくなる

「大丈夫。私達が一緒に探すから。」

と女の人に言われ、いいんですか?と聞くと、

「任せておきなさい」

と頼もしく言ってくれた

あんなに心細かったのに、2人がいると守られているようで、あの怖い場所にも行くことができた

そこで「妖怪を探している、大学生のお姉さん」と出会った

女の人と、意気投合をして盛り上がっている

なんだか楽しそうで、いいなあと思う

そうだ、わたしは、お財布を探さないとと思い、1人離れて探し始めた

すると、あの時のネコさんが座っていて、むくりと立ち上がると、わたしのお財布があった

よかった見つかって

猫さんが守ってくれていたのかな?

ありがとうと言おうと思うと、姿が見えなくなっていた

あれ?どこに行ったの?

と探していたら、

「おい!」

と、あの怖い人の声がした

「まだ、魔酢苦をしていないのか!」

と怒鳴られて、身体が強張る

「名前を言いな…」

「ちょっと! こども相手に怒鳴って、人として恥ずかしくないんですか?」

女の人が、わたしを庇いながら現れた

「うるさいわ!むむむ、お前も魔酢苦をしていないとは、けしからん奴だ。

勤務先と名前を言いなさい。クレームの電話をして、魔酢苦をするように、指導させるからな!」

「はあ!?何言ってのよ?教えるわけないじゃない。

それに、あなたのしてることって、臆病で卑怯なやり方じゃない?」

「女のくせに生意気な。この前も、仕事帰りでくたびれて、弱そうな女が魔酢苦をしていなくて、注意してやったら、妙に眼光が鋭く、パワハラするな!と怒り出して、 負けたばかりなのに、クッソ!」

「うっわ、自分が勝てそうな相手にしか言えないなんて、ダサくて最低ね。」

「な、な、な、なんだと!言わせておけば、口が達者だからって!」

「ちょ、ちょと何?まさか暴力に訴える気?!」

女の人が危ないと思った時に、男の人が息を切らして、女の人を守るように立ち塞がった

「相手なら、ぼくが相手になるけど」

「魔酢苦をしない奴は、けしからん奴だと、てれびが言っていたから、制裁をしても、いいんだ!」

「はあ?!何言っての?それ、ただの犯罪だよ。

それに、てれびやしんぶんが伝えることが、必ずしも、正確な事実と根拠に基づく、一次情報ではないんですよ。

あなたが信じていること、ご自身の目や耳で確かめられましたか?」

「てれびやしんぶんが間違ったことを言うわけがない!みんなが信じているし、正しいものなんだ!」

「それって、ぼくも、以前は長い間ずっと同じでしたけど。

自分が信じたいものを裏付けも取らずに、信じているだけじゃないですか?

みんな競うように、聞きかじっただけの話を、さも自分の知識の様に、得意げに言っているだけで。

普段、面識もない・よく分からない人の話を、信じたりしませんよね?」

「うるさい!おまえのような奴が、陰謀論やデマを流している輩だろう?!」

「ぼくが、今まで根拠のない話をしましたか?

具体的に、お聞かせ願えませんか?

なんなら、一緒に中央官庁のHPを見てもらったり、電話しているのを聞いて貰ってもいいですよ。」

「な、な、な、なぜ、そんなことをしないと、いけないのだ。

てれびやしんぶんの情報だけが、正しいのだ!」

そこへ妖怪のお姉さんが、颯爽と現れて、話しに加わる

「む、またしても魔酢苦をしない、けしからん奴め!」

「魔酢苦のことで、私達が傷つけあったら、魔酢苦が悲しみますよ。」

「何を言っとる、小娘が!」

「あっそうだ、さっき、てれびで、新しいこと言ってましたよ。

えっと、なんだったかな?

みんなが知ったら、スーパーで、また売り切れが、起こるかもしれないですよ。」

「むむむ、なんだと!それは、いかん。早く知らないと、出遅れてしまう。次は、何の対策をして、何を守ればいいんだ。」

と言い去り、居なくなった

わたしは、怖い人から逃げずに、対峙して退散させた、3人を見て、かっこよくて、すごいと思った

「あ~怖かった。暴力を振るわれるかもと思って、足が震えてたの。」

と女の人が言い

「間に合ってよかったよ。ぼくも、実は犬が苦手で、吠えられやしないか、手が震えてた。」

と男の人が言い

「わたしは、魔酢苦で同じ地域の人同士が傷つけあう姿が、見過ごせなくて…

ちょと怖かったですけど、お2人がいたので、勇気を出せました。」

と妖怪のお姉さんが言った

わたしは、大人になれば、怖いものがなくなり、強い人になれるのかと思っていた

でも違うんだ

大人になっても、怖さや弱さもあるんだ

おとうさんもおかあさんも、そうなのかな?

「あ、あの、お財布見つかりました。怖い人から、助けてくれて、ありがとう」

「 お財布見つかって、よかったね。」

女の人が、嬉しそうな顔をして、頭をなでてくれた

小学校は楽しくないけど、この人達といるのは、安心して楽しくていいなと思う

あ、あそうだ

おとうさんとおかあさんに電話しなきゃと、目についた公衆電話に向かう

電話に出てくれるかなと、思っていたら、あの時の魔酢苦が、受話器にぶら下がっている

あれ?

どうして、ここにあるんだろう?

手に取るとプールが現れて…

~~~~~~~~~~
気が付くと、駅のホームの公衆電話の所に戻っていた

あれ?

夫婦みたいな2人や、妖怪のお姉さんは、どこ?

お財布は、しっかりポケットに入っているけど、、、

もう、あの人達に会えないのかな?と思うと、寂しい気持ちになる

はぁ…

とため息をつくと、、、

「妖怪いないかな…」

と呟いている、妖怪のお姉さんとすれ違った

あれ!?

でも、わたしのことを気付いていないし、覚えていないの?

さっきみたく、お話ししたいのにな…

ポケットのお財布に手を触れると、ネコさんのことを思い出した

ネコさんも、もしかして…

わたしは、お姉さんを追いかけて、勇気を出して声をかけた…

「あ、あ、あの。わたし、妖怪を知っているかも…」

とう言うと、お姉さんは振り向いて、目を輝かせていた

今度は、妖怪のお姉さんと、ファミレスに来て話をした

お姉さんは、ジシュクに疲れ、妖怪と出会うために、人と話したり聞いたりする内に、人との出会いが増えて、生活や人生が楽しくなったと

わたしと出会えたことも、話を聞けたことも嬉しいと、ステキな笑顔で話している

すると、隣の席から女の人の声がした

「あの、よかったら、話しに入れてもらってもいいですか?」

振り向くと、夫婦みたいな、男の人と女の人が座っていた

おしまい

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4作目、お読み頂いて、ありがとうございます。

今回は、過去作品の登場人物に出てきて貰いました。

その分、話が広がり、長文にも、なってしまい大変でした💦

けど、困っている子どもを助けるなら、実在の大人が登場した方がいいと思い、彼女達しかいないと思いました。

子ども時代、親を含め、様々な大人達に助けられ、見守られ、叱られた経験があったから、作品にも反映できたのかもです。

今、思い出しても、アンパンマンの様に、カッコいいと思うし、そういう人が増えればいいなあと思います。

もしよかったら、感想など頂けたら幸いです。

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