ゴリラの惑星とゴリラピクニック/私小説⑥-1記憶/ストレスジャンププール
はぁ…
一体、世の中どうなってしまたんだ…
駅のホームのベンチで、途方に暮れていた…
事故に遭い、ここ1~2年の記憶を失っていると医者から、説明を受けた
自分のことや最近の事が、よく思い出せないが、こんな世界で生きていたのか?
個室に入れる様な身分でなく、相部屋で入院している人の愚痴を聞いて、耳を疑った…
"ゴリラだから"
"ゴリラ禍だから"
盛んにそう言って、面会が禁止され、今際の際も、ご遺体にも対面できないと、言っている…
おれが生きていた、世界じゃない
"あれもダメです"
"これもダメです"
看護師から、禁止だらけの小言ばかり言われ、うんざりした…
何なんだ、ここは?
本当に、病院なのか?
心身が弱って心細い時に、面会に来て貰うだけでも、励まされたり、気力が戻るだろうに…
病院じゃなくて、何かの収容所にいるのか?
おれは耐えきれなくなって、消灯された夜に、こっそり病院を抜け出した
それにしても、お腹空いたな…
自販機を見ると、全てバナナが売られていた
ここの特産品なのか?
まぁいいかと、小銭を入れて、出てきたバナナを食べ始める
空腹が満たされると、眠気がやってきた
あぁ、もう信じられないことばかりだった
疲れたな…
ウトウトと舟を漕ぎだすと、足元がプールに変わっていった…
~~~~~~~~~~
目を覚ますと、、、
一体ここは、、、
ゴリラが、二足歩行で歩いて、服も着ている!
魔酢苦もしている!
"ようこそゴリラピクニック会場へ☆ 案内所はこちら☺︎"
と書かれた所に行くと、受付に暇そうなゴリラがいた
「あのう...」
と恐る恐る、声をかけて見ると、、、
「今年のゴリラピクニック、遠京・咲色玉・歌泣川では、無観客試合となったので、自宅でご覧下さい。」
と何度も説明して、うんざりした様な、口調で言われた
「あのう、ゴリラピクニックっていうのは?…」
と言うと、ゴリラと目が合った
「おっ、認可が下りた人間か。
最近、増えたな~。
人間優遇法案が可決されて、入国もしやすくなり、住居も仕事もゴリラ研修生として確保されて、うらやましい位だよ。
オレ達ゴリラは、失業や貧困で苦しみ、住む所を失い、追い詰めらている、ゴリラもいるのにさ…」
「えっ、ちょっと、なに言ってるんですか?
ここって地球ですよね?」
「なに寝ぼけたこと、言っているのさ。
ここは、ゴリラの惑星だよ。」
"ゴ、ゴ、ゴリラの惑星!?"
サルの惑星では、ないのか?
「先程から仰る、ゴリラピクニックとは?」
「4年に一度、世界中のゴリラが集まり、ピクニックをしている様子を、観戦するんだよ。
雲行きが、怪しくなったのは、昨年からPPP検査が始まったからさ。」
PPP検査!?
「ピンク ピクニック パラダイス検査の、頭文字を取ってな。
なんでも、毛色がピンクになるゴリラが出るそうだ。
毛色がピンクになっても、健康に問題も支障もないし、可愛いと思うんだけどな。
ただ検査で、ピンク反応が出ると大変なことになるのさ…」
「大変なことって?…」
「ゴリラ病院やゴリラホテル に強制収用され、外出ができない!
ストレスに耐えきれず脱走でもしたら、指名ゴリラ手配されるのさ…
えげつないのが、ピンク反応が出た日から、2日以内の行動履歴が、問題視されてな…
魔酢苦をしないで、長い時間一緒に居たゴリラと場所が、濃厚ピンクゴリラになり、ピンクゴリラ拡大をさせるな!
と、非難されるのさ…
それは、ひどいものさ…
ピンクゴリラ対策をしても、ピンク反応が出ると、罪人や魔女の様に扱われ、あらゆるゴリラから、責めらるのさ…」
「なんか、人間社会と似ていますね…」
「そうさ。
今 、 人間化問題が起きていてな。
ゴリラが人間から支配を奪い、ようやく平和が訪れたと思ったら、人間の様に欲や支配に溺れる、ゴリラが増えたのさ…」
えっ!?
「人間みたいに、愚かで欲と利己的には、絶対にならないと、誓ったはずだがな…
統治を始めてから、人間化するゴリラが、続出したのさ、、、
そして、人間化問題がある渦中で、人間を入国させ続けて、優遇している…」
なんだ、この話、ズキズキと頭が痛む…
「ゴリラの土地も、人間に買い漁られて、ゴリラの主権や自治権も人間に、奪われそうになっている…」
はっきりと、思い出せないが…
この手の話を、知っていてる気がする…
「それとな、オレ達の憩いの店、バナナ食堂が、窮地に追い詰められている。
ピンクゴリラ拡大の悪者にされて…
"緊急ピンクゴリラ宣言"
"新型ピンクゴリラ等対策特別措置法"
"新型ピンクゴリラまん延防止等重点措置"
が、発令要件を満たしていなくても、、、
ゴリラ知事やゴリラ総理が、ピンクゴリラ拡大の、予防や防止を口実に、乱発され続けて、ゴリラ食堂は…
・営業休止(ゴリラ常連客の喪失)
・営業時間の制限(売上の減少)
・バナナを提供すると罰金と罰則(主力商品の販売停止で、売上減少)
と、営業妨害ばかりされている…
しまいには、バナナ食堂への融資も、ピンクゴリラ対策をしていないと、融資を中止しろと…」
すごく、頭が痛くなる話だ…
なんでだ?
「世紀の悪法こと、、、
"新型ピンクゴリラ等対策特別措置法"
通称 "ゴリ措法"
が、議会・パブリックコメントを関与せずに、発令や法令が決められるのよ。
後出し・事後承諾、何でも有りだから、異を唱えることもできず、手も足も出せないのさ…
この問題点を共有しているゴリラは限られているし、多くのゴリラは、理不尽や不条理を感じながらも、耐えるしかないのよ…」
なんて、ヒドイ悪政だ…
こんな国や統治者がいるのか?
胸の奥では、他人事の様に感じられない…
なんでだ?
「オレも、人間が優遇される仕事をしたくなかったのよ…
けど生活して、生きていくには、働くしかなくてな?
なにしろ、"自己責任と自助"って言われて、困ったことや問題があっても、ゴリラ自身でなんとかしろってさ…
あんたは、どうなんだい?
ゴリラ研修生として、家も仕事も確保されているのかい?」
おれは、おれは、、、
そういえば、自分が誰で何者か、考える余裕がなかった…
ポケットを探り、財布や免許証を見ても、自分でなく別人の様に思えた…
ポケットから、何か落ちたと思ったら、手紙だった
広げて見ると…
"面会に行けなくて、ごめんなさい
どんなに、お願いしても、頼んでも、ダメでした…
事故だけでなく、記憶を失ったと聞いて、、、
わたしのことを、覚えていますか?
会うことができたら、出会いのきっかけや、思い出話しも出来たり、記憶も戻るかも、しれないのにね…
この手紙は、困り果ていたわたしを見兼ねた、清掃員さんが、あなたに届けてくれると、請け負ってくれたの
清掃員さんを信じて、あなたに届く様に、祈っています
わたしのことを思い出しても、思い出せなくても、電話をかけてほしいの
大丈夫
わたしは、あなたのことを覚えているから"
読んでいて、なぜか涙が流れて止まらない…
おれは、この人を知っているのか?
大切な人なのか?
「なんだい、帰りを待ってくれる人がいるのかい?
なら、帰ってあげなよ。
ここにいても、観戦もできないしな。」
帰る…
けど、あの世界にか…
おれを待ってくれる人がいても、戻りたいとは…
「ケンカでも、したのかい?
そうだ、せっかく会場まで来て貰ったし、バナナをあげるよ。
オレらゴリラが、公園や路上で食べることは許されないけど、人間なら優遇されているから平気だろう?」
と言われて、バナナを貰った
頭も回らないし、疲れていたので、ゴリラにお礼を言って、食べ始めた
空腹が満たされると、眠気がやってきた
一体どうしたら…
ウトウトと舟を漕ぎだすと、足元がプールに変わっていった…
~~~~~~~~~~
気が付くと、駅のホームのベンチに座っていた
全てバナナの、自販機もある
元に戻った?
それとも、ゴリラの世界が、元々いた世界なのか?
こちらの世界では、ヒドイ扱いを受けるが、、、
ゴリラの世界に行けば、人間なら優遇されて、生きやすいのか?
ポケットから手紙を取り出して、読み返す
目を閉じて考える
おれは、どうしたいのか…
ゴリラの世界には、おれと繋がりが、ある人はいなかった
けど、ゴリラ研修生なら、家も仕事も確保されているようだし…
おれと繋がりのある人…
おれのことを想ってくれる、人がいる世界…
悩み、迷ったけど、公衆電話へ向かった
つづく
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お読み頂いて、ありがとうございます。
世相を反映した内容で、小説になるのかと不安も、ありました。
けど、みんな地に足を付けて生きている中で、、、
日々、感じることや思うことを、小説にしても、いいのかとも、思いました。
よかったら、感想をお聞かせ頂けたら幸いです。
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