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足立区強盗殺人事件公判傍聴記・2022年9月1日(被告人:川瀬直樹)

2022年9月1日
東京高裁12刑事部
622号法廷
事件番号・令和4年(う)第370号
罪名・住居侵入、強盗殺人
被告人・川瀬直樹
裁判長・田村政喜
裁判官・室橋雅仁
裁判官・白石篤史
書記官・酒井悠里

この事件は、被告人である川瀬直樹が、2002年12月、足立区のアパートで会社員の男性を、強盗目的で殺害した事件である。長らく未解決であったが、2018年12月8日、川瀬直樹が自首したことで、事件は解決へと向かった。起訴から初公判まで2年数か月と長くかかり、精神鑑定も行われたようだ。被告人は自首し、統合失調症らしき言動もあったため、量刑がどう判断されるか注目していたが、2022年2月2日に言い渡された判決は、無期懲役であった。
一審の初公判では、法廷の前に行列ができていたが、控訴審は、私を除き6名ほどしか並んでいなかった。しかし、途中入廷があり、結局は12人に増えた。
弁護人は、髪の短い、丸顔の、3~40代ぐらいの男性一名。
検察官は、二階堂直樹と同じ、眼鏡をかけたセミロングの中年女性。
書記官は、眼鏡をかけて髪の長い、30代ぐらいの女性。
被告人は、やや痩せた中年男性だった。眉は薄く、真面目そうな顔立ち。色は日に当たっていないためか、白い。眼鏡をかけ、丸坊主。白いラインの入った、黒いジャージの上下を着ている。白いマスクをつけている。刑務官二人に挟まれ、下を向いて入廷。被告席に座る。
11時から開廷予定だったが、11時1分に、裁判長らは入廷した。裁判長は、白髪交じりの初老の男性だった。「おはようございます」と礼をする。
こうして、川瀬直樹の控訴審初公判は、開廷した。

裁判長『川瀬さん』
被告人『はい』
裁判長『始めに、名前などを確認させてください。座ったままで良いです。名前は』
被告人『川瀬直樹です』
裁判長『生年月日はいつでしょうか』
被告人『昭和46年10月31日です』
裁判長『本籍は』
被告人『青森です』
裁判長『その後』
被告人『青森県八戸市(略)』
(略)
裁判長『職業は』
被告人『無職です』
裁判長『それでは、これから審理しますから、そのまま、座って』

弁護人は、控訴趣意のとおりに陳述する。しかし、口頭で若干の補足を行った。
今回の強盗殺人については、時効が撤廃されています。川瀬さんの自首がなければ、詳しい供述がなければ、永遠に川瀬さんが捜査をされ、処罰はなかった。協力が、第一審での判決を決定的にしたと考えられます。自首の趣旨である減刑の根拠である捜査を容易にした、ということを決定づけている。自首の経緯、長年後悔し、苦しんできたからこそ、幻聴も聞くことになったと考えられます。川瀬さんの自首は、長年の後悔に基づくもの。自首は、減刑根拠、そのまま当てはまる。自首による減刑を、ぜひ。量刑不当であり、破棄されるべきもの。詳細は趣意書のとおりです。
裁判長『内容的には、控訴趣意書に書いてある通りで、論旨、よろしい』
弁護人『はい』
裁判長『検察官は』
検察官は、立ち上がる。
検察官『控訴趣意に理由はなく、控訴棄却相当です』
裁判長『被告人質問、請求』
弁護人『はい』
裁判長『検察官の意見は』
検察官『不要。やむを得ない事由ないと思料します』
裁判長『立証趣旨②、それが尋問事項②に反映されていますが、原判決後の一審判決後の事情とある。趣意書に特にない。この部分については、具体的に考えていることは、何かあるのか』
弁護人『原判決後の事情も、反映すべきものと考えています』
裁判長『趣意書には特に記載ないが、取り調べの結果について、職権判断促すものと。その趣旨の上で、検察官の意見を伺います。②含めて、検察官の意見は不要』
検察官『はい』
裁判長『被告人質問の全体としての質問時間、15分となっている。判決後の反省に限ると、どの程度ですか』
弁護人『まあ、5分程度』
裁判長『それではですね、原判決後の事情に限り、採用します』
弁護人『却下した部分について、異議あります。刑訴法396条の必要性の判断を誤っている』
検察官『異議には理由ない』
裁判長『異議に理由なく、棄却します。そうしましたら、川瀬さん、話を聞きますので、前に出てください。椅子を引いて、座ってください』
被告人は、証言台の椅子に座る。
裁判長『いろいろ話を考えてきたかもしれませんが、今回、一審判決後の』
被告人『はい』
裁判長『反省深めたかについて』
被告人『はい』
裁判長『話を聞く。記録は、要旨で』
弁護人『はい』
被告人質問が始まる。被告人の声は、一審に比べ格段に小さく、聞き取りにくかった。

<藤原弁護人の被告人質問>
弁護人『弁護人の、藤原から。判決について、一審、無期懲役』
被告人『はい』
弁護人『刑を受けたことについて』
被告人『そうですね、妥当だと思います』
弁護人『なぜそう思うのですか』
被告人は何か答えたが、聞き取れなかった。
弁護人『無期懲役という判決受け、改めて今、被害者には』
被告人『こんな大それた事件を起こしてしまって、被害者の方、被害者遺族の方に大変申し訳ないと思っています』
弁護人『一審で、無期懲役の判決を受けた今、自首についてどう思っていますか』
被告人『良かったと思います』
弁護人『なぜ』
被告人『いろいろ夢の中に出てきたりとか、事件、夢の中に出てきたりとか、犯行夢の中に出てきたりとか、結構辛かったので』
弁護人『判決後の体調の事について聞きます。今何か、飲んでいる薬は』
被告人『統合失調症の薬飲んでいます』
弁護人『判決後の症状は』
被告人『騒音問題に』
弁護人『簡単に言うと』
被告人『立てたり、立てられたり、騒音による嫌がらせですね』
弁護人『誰がするのですか』
被告人『解りません』
弁護人『嫌がらせをされる心当たりありますか』
被告人『ありません』
弁護人『今後の事について聞きますね。今後、自身の刑確定した後の事お聞きします。確定した刑について、どう考えていますか』
被告人『・・・第一審ていうことですか』
弁護人『聞き直します。刑確定して今後のこと。確定後の服役の気持ちは』
被告人『自分のできる範囲内で罪を償いたいと思います』
裁判長『そういう気持ちですね。弁護人からは以上です』
検察官の質問は、行われなかった。
裁判長『それでは、終わりましたから、戻ってください』
被告人は頷き、被告席に戻る。
次回期日は判決であり、9月29日14時に、指定される。裁判長に次回期日を告げられ、被告人は頷く。
裁判長『終わります』
11時15分に、控訴審初公判は終わった。
被告人は閉廷後、「29日」と、弁護人に判決期日を確認していた。傍聴席の方に目をやることなく、退廷した。
9月29日に言い渡された判決は、控訴棄却であった。

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