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【小浦翼】1敗の重みを知った元東洋太平洋王者 今度こそ世界へのキップをつかみにいく! 2021年11月12日

◇WBOアジアパシフィック・ミニマム級王座決定戦12回戦
 同級2位 小浦翼(E&Jカシアス) 16戦15勝(10KO)1敗
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 同級3位 重岡優大(ワタナベ) 3戦3勝(2KO)

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 元東洋太平洋ミニマム級チャンピオンの小浦翼が久々にタイトルマッチのリングに立つ。タイトルマッチの舞台は王座から陥落した2019年3月以来、およそ2年8ヶ月ぶり。一度は世界戦線に乗り込みかけていた元王者は新鋭とのタイトルマッチを素直に歓迎している。

「1戦、2戦やっておけばランキング(WBC9位、IBF12位)は下がらないかなと思っていたんですけど、タイトルマッチがきましたから。こんなチャンスはないと思っています」

 殊勝に語る小浦はこの一戦の重みをだれよりも分かっている。その理由を語るには、やはり2019年のプロ初黒星を振り返らなければならない。あの日、小浦はいつもの後楽園ホールではなく、横浜市の大さん橋ホールのリングにいた。イベントはE&Jカシアスジム15周年記念大会を銘打たれ、小浦の東洋太平洋王座の4度目の防衛戦がメインイベントに選ばれたのだ。

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 挑戦者のリト・ダンテ(フィリピン)はこの時点でキャリア10敗を喫しており、「イージーな挑戦者」というイメージは拭えなかった。ところが蓋を開けてみれば、小浦はダンテのしつこく前に出て右を打ち下ろすボクシングに屈して最終12回にTKO負け。まさかの王座陥落劇に、本人も言葉を失うしかなかった。

「チャンピオンになって防衛して、なあなあになっていたこところがあったと思います。それまで無敗できて、『まあ、負けないだろう』という気持ち。甘さですね。プロの1敗は大きいです。あのときは世界ランキングで3位までいってましたから。やっちゃいましたよね」

ひょっとすると何もかもがうまくいきすぎていたのだろうか。プロデビューは2014年。小浦は軽快な動きと回転力のあるコンビネーションを武器に白星を重ね、2015年の全日本新人王に輝いた。17年にはジェイセバー・アブシード(フィリピン)との王座決定戦を制して東洋太平洋王座を獲得。あれよ、あれよと世界ランキングも手に入れた。

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小学生のときから空手に親しみ、ボクシングを始めたのは高校からだが、アマチュア時代にそれほどの実績を残したわけではない。高校時代はインターハイに出場したものの初戦敗退。進学した東洋大では1年生にして関東大学リーグ戦に出場したものの、わずか1年で大学を辞めてプロ入りという道を選んだ。

アマチュア時代の大きなエピソードといえばE&Jカシアスジムに通い始めたことだったかもしれない。2011年3月11日、日本を襲ったあの東日本大震災が小浦のボクシング人生に少なからず影響を与えた。

「高校の部活動でボクシングを始めたんですけど、震災が起きて学校で部活動がしばらくできなくなったんです。そのとき、顧問の先生と会長(カシアス内藤会長)が親しかったことからE&Jカシアスジムで練習するようになりました。ジムと学校はすぐ近くなんですよ」

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以来、小浦はカシアスジムでボクシングを覚え、プロになり、東洋太平洋チャンピオンになった。そして思いもしなかった王座陥落という挫折を経験した。一敗の重みを知り、受け入れ、心を入れ直して再び世界を目指してトレーニングに励んだ。今、小浦はチャンピオンだったころの自分よりはるかに強くなっている手応えを感じているという。

「東洋太平洋チャンピオンだったころとは全然違うと思います。いろいろ変わったとは思いますけど、一番は筋肉量が増えて体が大きくなったことですね。フィジカルトレーニングもそうなんですけど、練習の質が上がっているからだと思っています」

対戦相手の重岡はプロ3戦ながら全日本選手権を取っている元トップアマ。小浦は「アマチュア上がりのうまい選手、きれいなボクシングをする選手」と重岡を評した。そして「けっこう気が強そうなので倒しにくるんじゃないですか、KOになるんじゃないですか」と試合を予想してみせた。

一度は世界ランキングの上位までいきながら、念願の世界挑戦はまだ実現していない。東洋太平洋王座の初防衛戦で退けた谷口将隆(ワタナベ)、V2戦で勝利した田中教仁(三迫)に世界挑戦で先を越され、悔しい思いをした。コロナ禍で試合が組まれず、黙々とトレーニングに励む孤独とも戦った。

悪いことばかりではない。昨夏、第一子である拳翔(けんと)くんを授かったのは小浦の人生にとって最大の喜びだったことはいうまでもない。

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「子どもが生まれて守るものができたというのは強みだと思っています。父親になって初めての試合ですから絶対に負けられないですね。この試合は世界への通過点。しっかりチャンピオンになります」

 もう同じ轍は二度と踏まない。父になった小浦が新鋭を踏み台にして再び世界挑戦のウェウティングサークルに入ろうとしている。

<渋谷淳>

●ライブ配信情報
 ▷配信プラットフォーム:BOXINGRAISE
 ▷ライブ配信:11月12日(金)17時45分~試合終了時刻まで
 ▷料  金:月額会員制 980円/月
 ▶視聴サイトはこちら

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