【梶颯】期待の無敗チャレンジャーが初タイトル戦　3本のベルトと世界ランキング総取りを狙う！　2021年10月2日

◇日本&東洋太平洋&WBOアジアパシフィック・スーパーフライ級タイトルマッチ12回戦
　王者　福永亮次（角海老宝石）　17戦14勝14KO4敗
　×
　挑戦者2位　梶颯（帝拳）　15戦15勝9KO

　デビューから15連勝のホープ、24歳の梶がいよいよタイトルマッチの舞台に立つ。デビューから7年目でビッグチャンスをつかんだ新鋭は「コロナ禍で試合が決まるとは思っていなかった。試合が決まった上にタイトルマッチということで喜びと驚きが半々でした」と試合が決まった心境を語った。

　驚いたとはいえ上位ランカーとしてタイトル挑戦を意識していなかった訳ではない。チャンピオンの福永が「梶選手とやりたい」とメディアに語っていることも耳にしていた。それでも漠然と「福永さんは自分とはやらずに世界に行くのかな」と思い始めたところで飛び込んできた正式オファーだ。チャンス到来の喜びにテンションが上がると同時に、ピリッと身が引き締まったのは当然だろう。

「福永さんはこの試合を機にもっと自信をつけて世界に行こうとしているんだなと思いました。僕との試合は世界に行くためのテストだと考えている。そういう気持ちがすごく伝わってきました」

　世界にかける思い―。それは梶だって決して負けていない。35歳のチャンピオンが25歳という遅いスタートから現在のポジションを築いたのは確かに立派だが、中学卒業と同時にプロボクサーとして身を立てようと決意し、日々汗を流してきた24歳の意気込みにも筋金が入っている。

　父の幸雅さんの勧めで空手を始めたのは小学校に入る前だった。「習い事という感じでそこまで本気じゃなかった」と振り返りながら、のちにプロボクサーになる兄の龍冶さんと父子で熱心に練習してかなりの実力を誇った。小学校5年生からはキックボクシングにも親しみ、全国大会で優勝したことも。中学生ではムエタイに取り組み、気持ちは次第にボクシングへと傾いていった。

「キックやムエタイは組織が多くてチャンピオンが多いけど、ボクシングを見るとそうではない。それに当時、西岡利晃さんとか八重樫東さんの世界タイトルマッチを見て、ボクシングの試合ってこんなに熱いのかと思ったんです」

　中学を卒業すると高校へは進まず、世界王者になる夢を抱いて名門、帝拳ジムの扉を叩いた。同時にマクドナルドでアルバイトを始め、バイトと練習に明け暮れる日々が始まった。最初に指導を受けたのが西岡のトレーナーだった葛西裕一さんだ。葛西さんは現在、独立して世田谷区でボクシングジム「GLOVES」を開いており、梶は現在、そこでトレーナーとして働いている。

学校を出てからバイトは休まずに続けてきた。自宅暮らしだからといって親に甘えるのではなく、ボクシングのグローブやヘッドギアの費用、横浜・鶴見から神楽坂のジムまでの交通費など、ボクシングにかかるお金は自分で稼ぐべきだと考えたからだった。

2015年2月、17歳で念願のプロデビューを果たすと、梶は豊富な格闘技経験をバックボーンとして連勝を重ね、デビューした年にスーパーフライ級の全日本新人王に輝いた。スピードがあり、足が使え、パンチも強かった。回転力のある連打は何より目を引いた。帝拳の梶はいいぞ―。そんな声が関係者の間でささやかれるようになった。

　その後も白星を重ねる一方で、多くのホープがそうであるように対戦相手選びには苦労することになる。その結果、タイやフィリピン、インドネシアといった外国勢との対戦が続くことになるが、これは結果的に良かったのだと本人は考えている。

「どの試合も満足できたかといえば決してそうではないですけど、独特の戦い方だったり、間合いだったり、パワーがあったり、いろいろな選手と試合をさせてもらいました。この7年間でそれなりに経験は積めたと思っています」

　勝てば福永が持つ3つベルトと世界ランキングを総取りできるハイリターンなタイトルマッチ。試合に向けての準備には自ずと力が入った。あまり経験のないサウスポーが相手ということもあって、左構えの選手とのスパーリングは特に入念に行った。集中力はいつになく高まり、試合に向けての自信を少しずつ深めていった。

「けっこう打ち合いになると思うので、自分から打ち合いにいっても、向こうから打ち合いを仕掛けられても打ち勝つ試合をしたい。自分が挑戦者なんですけど、チャンピオンにふさわしいと言われる試合をしたいんです。福永さんはすごいチャンピオンですけど、僕も負けているとは思っていませんから」

　中学生でプロの世界チャンピオンを志してから9年、プロになって7年目で迎えるタイトルマッチは、勝てば一気に評価を高めることができる大一番だ。24歳の若武者が今、夢の世界に向けて大きな一歩を踏み出そうとしている。
＜渋谷淳＞

●日テレＧ＋放送予定
　▷生放送　10月2日（土）17時45分～
　　※野球中継延長時 開始時間変更の場合あり
　▷再放送　10月8日（金）17時30分～
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