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研修で一番大事なのは受講生のお話を聞くこと

7月に入って、終日研修と専門学校の講義が続いています。1回1回の研修や講義を丁寧に、全力を注いで担当させていただいています。

私が本気度が届くのか、研修も講義も、皆さん積極的に受講しワークに取り組んでくださって、会場や教室を出るときにはスッキリした表情になっていらっしゃいます。
特に研修は、始まる前と終わったときとでは、会場の雰囲気も皆さんの様子も全然違います。

少人数の研修のときには、終わると会場後ろの出入り口前に移動し、お一人お一人にごあいさつをしてお見送りをします。
「楽しかった」「スッキリした」「ありがとうございます」「またよろしくお願いいたします」「職場の皆で内容を共有したいので資料を余分にもらっていいですか?」「またお会いしたいです」「お話を聞いてくださってありがとうございます」「明日からまた、元気で仕事をします」
研修が終わって「終わり」ではなく、このやり取りが研修の「終わり」と思って大切にしています。

5月以降は、リーダーや管理職の方、現場スタッフさんの研修を多く担当させていただいています。現場スタッフさんの大半は会社を定年退職されて再就職でこのお仕事に従事されている方で、65歳以上の方がほとんどです。

31年、研修講師の仕事を行っていますが、当初から再就職されたご高齢の方の研修を担当することが多かったです。そして、現在も、年間を通じて60代以上の方の研修を多く担当させていただいています。

最初の頃は大変でした。「そんなこと言われなくても知っとるわ」「こんな研修受けたくない」「そんなことやっても意味がない」始まる前からあちこちから、そんな声が聞こえてきていましたし、おっしゃらなくても仏頂面で研修を受講される方が多かったです。

しかし、対応に困ったことはありません。物流会社で毎日、朝から晩までクレーム対応をしていましたし、父が受講してくださる方と同じくらいの世代でしたから、ワンマンで融通の利かない父に比べたら対応しやすかったです。

長年会社勤めをする中で、仕事を通して成果や実績を上げ、管理職や会社の幹部として活躍された方も少なくありません。年齢も経験も私よりはるかに上なのですから、「そんなこと言われなくても分かっている」なのです。何か突っ込まれたり持論を述べられることが、1回や2回ザラにあります。逆にツッコミも持論を述べられることもないと、物足りなさを感じるくらいです。そういうときは、無表情で受講されている何人かの方に、休憩時間にお声がけをして、研修内容について感じていらっしゃることを伺ったりしています。

お話しを伺ううちに、表情が和らいで会話がテンポよくなります。お隣の方とのワークも、このことがきっかけでスムーズになることがよくあります。
先日の研修で、ある男性の方が2回、「ちょっと質問していいですか?」とおっしゃって、「私はこういうふうにしてきた」とご自身の経験されたことを話されました。

内心、”待ってました!”と思ってワクワクしながらお話を伺いました。一つ目のお話は、基本に添った内容でしたので、

「そうですね。それはとても大切なポイントですね。そしてそこに今、行っていることを加えるともっと印象アップにつながりますね」
とお伝えすると、”なるほど!”という表情をされていました。

そしてしばらく研修を進めていくと再び「ちょっといいですか?」と声がかかりました。
その内容は、これから説明することでもあったので、お話してくださったことに対して、
「具体的な体験事例をお聞かせくださり、ありがとうございます」と伝え、「実は、○○さんがおっしゃったことと関連する内容をこれから話そうと思っていたのです」
と伝えて、次のポイントの説明に入りました。

その方がお話してくださったことは、グッドタイミングだったのです。そして説明が終わった後で、
「○○さんがお客さまに喜ばれたのは、ここをしっかり踏まえておられたからだと思いました。ありがとうございます」とお伝えしました。

研修が終わって、ごあいさつをしたときに、その方が、
「大西さん、今日は勉強になりました。ありがとうございました!」
とにこやかにあいさつをしてくださいました。そのあいさつのしかたは、その日の研修でお伝えしたことがしっかり組み込まれていて、とても素敵でした。

「自分が長年取り組んできたことを認めてもらいたい」
「自分自身のことを認めてもらいたい」
口ではおっしゃっていなくても、そんな思いが伝わってきます。特に長年会社勤めをして、キャリアを磨いてこられた男性の方ほど、全く違う待遇や仕事内容に戸惑ってそんな雰囲気を醸し出しておられたり、持論を話されたりする方は少なくありません。

私も今年63歳になりました。受講してくださっている方に比べるとまだまだ若輩者ですが、先輩方の気持ちや今まで以上に理解できるようになりました。
だから、日々、いろいろなことに戸惑いながらも、研修を受講するために足を運んでくださったことを、心からありがたく思っています。大切なことをお伝えするだけでなく、様々な問いかけや受講されている様子に触れながら、その一つ一つをしっかり受け止め、認めて、”明日からも元気で仕事に取り組もう!”と思っていただくことが私の務めだと考えています。


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