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05.自分のことを認めてもらえた

『秘書技能検定試験』_。わたしは、この資格にちょっとしたこだわりを持っていました。

この資格に、興味を持ち始めたのは、会社に入社して3年が過ぎた頃です。それまでのわたしは、履歴書に書けるような資格を一つも持っていませんでしたし、「仕事ができれば資格なんて必要ない」という考えでした。

しかし、社内で、女子社員のビジネスマナーの指導を担当するようになり、自分自身のビジネスマナーや仕事の進め方について、見直す時期にきていました。秘書検定というのは、秘書のための検定試験ではなく、社会人として必要な技術や知識の習得を目指している資格試験でした。

「社員教育に携わっていくのなら、1級のレベルを持っているのが当たり前。経験のない女子学生と違って、実務経験を積んできているわけだから、頑張ったら、わたしにだって取得できるかもしれない!」。
資格が、必ずしも全てではありませんが、目に見える評価として、これからは、資格をとることも必要なのかもしれないと考え始めたのでした。

しかし、夫にそのことを話すと

「上司をアゴで使うような君に、秘書的なセンスなんて理解できるわけがない。合格なんて、絶対に無理無理!」
と一蹴されてしまったのです。最初は、“合格したら儲けもの”という気軽な気持ちだったのですが、夫のこの言葉によって、やる気に火がつき「絶対に合格してみせるから!」と、夫に合格宣言をしました。

独学で勉強を初めて2年後に、1級の筆記試験合格までたどり着きました。しかし、最大の難関である面接試験には、2回チャレンジして2回とも不合格。(面接試験3回までは、筆記試験が免除されます)。その時点で、わたしは出産のために会社を退職しました。そして、長女を出産して2ヶ月後に、最後のチャンスである、3回目の試験に臨みました。

平成2年12月8日、広島市内にあるビジネスホテルの一室で、最後のチャンスである面接試験は行われました。 

仕事を辞めて4ヶ月がたち、そのうちの2ヶ月は長女の育児に振り回されて、勉強もろくに出来ない状態でした。万全に準備を整えて臨んだわけではなかったのですが、わたしは全然あがることもなく、むしろ、ウキウキして面接の順番が回ってくるのを待っていました。

この2ヶ月間、悶々として子どもに向き合い、父や母に気を遣ってひっそりと過ごしてきたわけです。それに比べると、面接は緊張はするけれども、舞台の上でわずかな時間でも主役になれるのです。頑張ってきたことを正当に評価してもらえる!それが、合格になるか、不合格になるかは関係なく、とにかく、この場に立てたことだけでも嬉しかったのです。

ですから、わたしは、面接の間中、ずっとニコニコしていました。
後日、面接を担当してくださった方から、「あなたの笑顔は、心の奥から滲み出てるくらい素敵だったよ!」と褒められたくらいです。
ドキドキすることもなく、与えられた課題もスムーズに暗記できましたし、応対演技も、言葉に詰まらず自然にてきぱきと行えました。

今、自分が持っている実力を、100%出し切れた!
面接が終わったとき、わたしは大きな満足感を覚えていました。

“これでもし、不合格になっても、また筆記試験から再挑戦すればいい!”
心からそう思えたのは、育児の合間でも勉強や再就職の準備ができると確信できたからなのでしょう。

久々の充実感、開放感を味わい、、背伸びをしたらフワッと飛んでいってしまいそうなくらい軽やかな気持ちで、わたしは試験会場をあとにしました。

不思議なことに、その後の育児は、今までの事が嘘だったかのように、順調に進みました。
昼夜逆転の生活パターンが直ったことも手伝って、わずかな時間ですが、毎日机に向かって勉強する余裕も生まれてきました。
父と母への接し方にも余裕が持てるようになり、お正月を過ごした後、わたしは大阪に戻りました。

そして、大阪の自宅に届いたのは、合格通知でした。しかも、優秀賞というご褒美までついていました。

夫は、「信じられない!まぐれだ!」を繰り返すばかり...。
殺風景な紙切れ1枚の通知でしたが、多くの体験を経て手にしたのです。わたしには、札束以上の価値にも思えましたし、とてもいとおしく感じられました。

ひとつの資格を取得したことで、今までもやの中に隠れていたわたしの進むべき道が、ほんの少しだけ見えてきたような気がしました。
資格をとることが目的になってはいけないし、それだけでは武器にはならないものですが、あの頃の不安だらけだったわたしにとっては、唯一、自信を回復させてくれた、心強い味方のように感じられました。
研修講師への道を、踏み出した小さな一歩でした。

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