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3か月の審判が下る日(2)

私の修了試験は、レポート試験です。

A3の答案の半分は、「この講義を受けて気づいたことを書いてください」

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そして、もう半分は、テーマを選択して書いてもらっています。

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最後の講義から修了試験まで、2か月近く空くので、講義最終日に、修了試験対策として、下書きをする時間を設けています。
下書きしたものは試験には持ち込めませんが、ここで準備をしておくと、2か月経っていても書けるのです。

修了レポートの内容は、24年前からずっと変えていません。
スマートフォンがコミュニケーションの中心になり、講義形式はパワーポイントが主流になりました。最近の学生たちは、手書きでノートを取る、手書きでレポートを書くことに慣れていません。でも、そんな学生たちが、60分間、筆記具を持って一生懸命レポートの空白を埋めているんです。

講義の終わりに感想レポートを書いて提出してもらっていますが、書いてある内容には個人差があります。レポートにぎっしり感想を書いてくれる学生ばかりではなく、2~3行の学生もいます。でも、修了試験では、全員が空白を埋めてくれるのです。その光景を見ているだけで、もうウルウルしてしまいます。
そして提出してもらったレポートを、帰りのバスの中で読むと、涙が止まらなくなってしまうのです。

「講義を受けて気づいたこと」は、”この内容がためになった”というありきたりの感想ではありません。

・こんなチャレンジをしてみました。
・アルバイトで実践したら、店長やお客様に喜んでもらえました。
・苦手だと思っていたけど、は少し克服できました。
・今、この時期に、学べて本当によかった!!
・思い切って相談して、気持ちが楽になりました。…etc
・教えてもらったメモの取り方を今も実践しています

学んだことを実践して、自分の中に起きた変化を報告してくれているのです。そこには一人一人の成長の物語が記されています。

文章は幼さが残っていますが、形式を気にせず、のびのびと書かれていて、一人一人の「らしさ」が伝わってきます。

試験開始の合図とともに、一斉に書き始めています。何度も消しては書き、書いては消している学生もいて、机の上は消しゴムの消しカスがいっぱいになっている学生もいます。

書きたいことがあれば書ける!
「書きたい!」という衝動に駆られている学生たち。
そう思えるものを、自分の手で発掘できたことが、素晴らしいなと思うのです。

可能性を信じて、寄り添い、見守ってきた3か月
何十倍にも大きくなった贈り物を手渡してもらえたように思います。

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数年前から、中国から留学生を受け入れるようになりました。毎回の講義についていくのも大変そうなので、「修了レポートは中国語で書いてもいいですよ」とお伝えすると、レポートは、中国語でぎっしり埋めつくされます。自国の言葉で、素直な気持ちや気づいたことを、感謝の気持ちを添えて書いてくださっています。

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翻訳アプリを駆使して読んでいますが、一緒にインタビューした時のことや、グループワークに楽しく取り組めたことで、「日本語をもっと勉強して、もっと積極的に関われるようになりたい」という気持ちに繋がったと締めくくられていました。

これから、時間をかけて全員のレポートを読みこみながら、成長した一人一人との対話を楽しみたいと思っています。

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