地方で研修講師として仕事をする(3)
広島にUターンして企業研修講師になる準備を始めたのは30年前です。
パソコンはなく、ワープロがやっと小型化してきた頃でした。ですから、インターネットやメールもありません。
今のように、必要な情報が必要な時に簡単に手に入る時代ではありませんでした。
必要な情報はそれを持っている人から直接入手する必要がありました。しかし、Uターンした私は仕事に関連するネットワークがゼロの状態でした。
そのことが、私の意欲を搔き立てました。
ゼロというのは、何でもあり!ということです。
”広島で講師になる”という目標につながることは、可能性を信じて何でもやってみよう!と思いました。
ありがたいことに、秘書検定1級に合格したことで、その面接・審査官をしておられた方や、
前職で社内講師を行っていたことをまとめた資料によって、女性の活躍を支援している企画会社の方と繋がることができました。
しかし、ネットワークができたらすぐに仕事がくるわけではありません。
”まだ子育ての渦中だし、母の病気のケアやお店の手伝いもあるので、今は力をつける時期にしよう!”
自分にそう言い聞かせて、参加できる講座やセミナーにはできる限り参加しました。
研修講師に関するテーマや内容よりも、子育て、一般教養、人間関係、コミュニケーション、再就職支援など様々でした。
広島市には、中学校区に1つ公民館が設置されていて、広島市全域で70余りあります。当時の公民館は、生涯学習と青少年育成を目的に、各公民館が様々なテーマで無料講座(しかも託児のついたものもありました)を開催していたので、バスやJRに乗って講座を受講しました。
仕事に直接関係ないテーマなのに?と思われたかもしれません。
そうです。講座の内容を学ぶためではなく、受講者として講師の方の話の進め方を学ぶために受講していました。
企業研修ではなく、自分に関係ないテーマでないけれど、ひきつけられたら、それは講師の方の進め方が上手ということです。そう感じた講座は、帰宅してどんな進め方や工夫だったか?を検証しました。共通していたのは、講師自身の経験やたとえ話などが具体的だということでした。
講座を受講する際には、一緒に受講している方とあいさつや言葉を交わすようにしましたし、必ず質問や感想を言うようにしました。
また、自己紹介を求められたときは、講師になるという目標を持っていることを伝えました。
素敵な講師の方には、受講後に手紙で感想などを書いて送りました。
ネットワークや、何かに参加すれば作れるものではありません。
そこで自分から何もアクションを起こさなければ、何も変化は起きないのです。
質問や感想を伝えることは、講座の時間内に内容をまとめて伝えることのトレーニングになります。
講師を目指しているのなら、自己紹介は、自分のことを発信するチャンスです。
またその講師の方にお会いしたいと思っても、情報が手軽に入手できないわけですから、自分から繋がりを持たなければそのご縁は育っていきません。
受講者という立場であっても、講師になるトレーニングはいくらでもできる!
講座を受講するたびに、出逢いが広がり、自分の研鑽につがりました。
「学ぶだけでなくサークルを作ったら?」
あるとき、地元の公民館で受講した子育て講座の講師の方から、そんな提案をいただきました。
講座が終了して、一緒に受講したお母さんたちと「WITH」というサークルを作りました。
子育てだけでなく、”自分自身を高めたい!”という思いを持った者同士、定期的に集まり交流を深めました。
そんな活動を見ておられた、公民館の職員の方から、「公民館で講座の講師をやってみない?」と声をかけていただきました。
サークル仲間のご主人が、公民館の職員の方だったのです。
企業研修講師としては、まだアシスタント的な役割や先輩講師と一緒に登壇していた頃でした。
私が直接ご依頼をいただいて、担当させていただいた最初の仕事になりました。
高齢者大学でのお話、マナー講座、子育て講座、再就職講座・・・・。一つ目の仕事が二つ目,三つ目と続いていきました。
再就職講座を受講した公民館の方から、「この講座の出身でもあり、今も目標に向かって準備を進めていると思うから、ぜひ講師を務めてもらいたい」と声をかけていただき、「再就職講座」が私の定番講座になっていきました。
最初の仕事から2年後に公民館を管轄している事務局から、「公民館のことを一番よく知っている方に、職員の研修をお願いしたい」というご依頼をいただきました。
そして現在は、広島市役所、区役所、公民館、市立の学校、社会福祉協議会など、広島市職員、教員の方の研修を担当させていただけるようになりました。
私のことを育てていただいた公民館は、所期の目的を果たし終え、今は定期的な主催事業の開催を行っていませんので、仕事のご依頼をいただくことは減りました。それでも、たまに「以前、●●公民館でお世話になった●●です」「職員研修を受講した●●です」「職員の●●さんからご紹介をいただいて…」と声をかけていただいています。30年変わらずにお付き合いできていること、地域活性のお手伝いができていることを幸せに思っています。
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