復活を遂げた蒼空
去年から何故か京都に行く機会が増えたため、女酒(軟水で造られる甘口のお酒)の発祥である伏見には特に寄ることが多い。
その中でも、今回は特に見学をしてみたかった藤岡酒造さんに伺った。
1人では酒蔵の見学ができないため挫折していたが、今回なんと一年越しに赴くことに…!
元々知ってはいる名前だったものの、蔵に併設するバーに行ってから蒼空の大ファンになった。
念願の酒蔵見学、いざ。
蒼空とは
現在5代目である藤岡正章社長兼杜氏が再度盛り立てた蒼空は、実は一度閉業した蔵元でもある。
それを藤岡社長がもう一度お酒を造りたいという熱い思いから2002年に酒造りを再び開始した。
酒造業の開始は1902年に京都の東山区。
滋賀県の大津市に製造場を設するなどしながら、1918年に現在の伏見で製造をするようになった。
順調に進んではいったものの、3代目の急死により1995年に酒造業を止めた。
それから7年を経て、阪神淡路大震災で倒壊の恐れがある酒蔵を新調し、藤岡社長と蔵元の2人で酒造りを再開するに至った。
20万リットルは製造していた当初と比べ、現在の製造量は4万リットルと量は減少したものの、手造りで手間隙をかけた仕込みでお酒が出来上がっている。
飯米「キヌヒカリ」で醸す
蒼空は「青空を見上げた時のホッとする瞬間のように、飲んだ人がホッとできるお酒を目指して」名付けられた。
現在では、伏見の中でも最良の地下水とされる白菊水という水と米に特にこだわり、純米酒のみを醸している。
藤岡社長は、先代が最後に仕込んだお酒を口に入れた時の感動が忘れられないのだそうだ。
それを超えるお酒を造りたいとの心持ちの中、藤岡酒造の歴史の中で究極のお酒と自信を持つお酒がある。
飯米のキヌヒカリを使用したお酒である。
藤岡社長が以前見学を行ったワイナリーで、原料の葡萄と、その実を育む土壌へのこだわりに強い衝撃を受けた。
それを蒼空の酒造りに生かせないかと、米の勉強を始めた。
京都府の北東で作られるそのキヌヒカリは、現在、自身で田植えや稲刈りも行う徹底ぶりだ。
伏見で一番小さな蔵の素晴らしい工夫
蔵に着くとまず出迎えてくれるのが、蒼空のボトルのオブジェ。
ボトルは全てベネチアングラスでできており、内容量は500mlと家で飲むような四合瓶に比べて220ml少ない。
これは、2人で飲む際に美味しいまま飲み切れるようにと計算された量なのだ。
入って左側には「えん」という名のバーが併設されている。
オブジェの先では2階に上がることが出来、その場で藤岡酒造の歴史と蒼空へのこだわりなどを伺う。
その後、汚れを持ち込まないようキャップをつけたり靴を履き替えるなどを行い、蔵内見学に移る。
最初の印象は、本当に小さい蔵だというものだった。
住宅街の中にあることもあり、物理的に醸造場を広げることは難しい。
しかし、伏見で一番小さい蔵元といわれるその蔵は工夫が素晴らしかった。
蒸しあがった米を冷ます際に使用する、大きな放冷機などは普段は端に畳んで置き、使用する際に持ち出して利用する。
出来上がった日本酒に加熱をするにも、多きなステンレスの桶を使用するため普段は壁に立てかけてある。
麹室も二階に作る事で空間を作り出している。
少し手間はかかるものの、あるもので、できる範囲のもので、より良い環境ややり方をあみ出していく姿勢はとても素晴らしいと感じた。
また、丁度数日前に造りが終わったばかりのタイミングであった内部は、日本造りの緻密さがとても伝わってきた。
お米に水を吸わせる際、目標の吸水率に近づけるため、どの程度水に漬けていくかを秒単位で管理していく。
それがホワイトボード一面にびっしりと記されており、1つ前の吸水率によってそれ以降の吸水時間を変化させていく有様を見て、やはり日本酒は何と手間暇がかかり神経を削る作業を要するのか、改めて感動した。
Bar「えん」での試飲
蔵見学が落ち着くと、先ほどの併設のバーで試飲が始まる。
待ってました。
もちろんお酒もおつまみも追加OK。
その日試飲として頂いたのは、
蒼空のメインの酒米である美山錦と、雄町の生酒。
蒼空のお酒はすっきり爽やかな酸味のイメージがあったが、どちらもお米感と膨らみがある味わいで美味しい。
特に雄町の生酒はどっしりとした濃さがたまらない。
そこに合わせて塩豆が付いてくるが、そこまでが蔵見学のセットである。
前日に熱中症でダウンしていた私には本当にありがたいし、とても美味しい。
この時期はぜひポケットに忍ばせたい。
更におつまみも数品追加してしまったためお酒が進む進む。
お話を聞いて気になっていた、キヌヒカリを使用した通常酒と生鮭酒おりがらみの2種類も追加。セットの2種類とまた違った味わい。
濃さは確かにあるものの、フルーティーで後味に少し苦みがあるような…?
ただ全く嫌な苦みでなくふわっとした濃さにメリハリを与えてくれるような雰囲気。
そして最後に酒粕のアイスで〆を。
これが可愛くて美味しい。
夏はバニラアイスよりも入ってきやすい気がする。
ありがたい事に色々お気遣い頂いて、本当にありがとうございました。
それらを堪能してまた暑い外に繰り出すのでした。