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何気なく見始めた「義妹生活」から謎の熱量を感じて最後まで見てしまった

ふと配信で見始めた「義妹生活」がとても良くて最後まで見てしまった。ネタバレなしでどこが良かったのかを書いてみようと思う。

感想

紹介文(公式サイトからのコピペ)


ある日、互いの親の再婚によって義兄弟になった浅村悠太と綾瀬沙季のふたりの物語。

高校生・浅村悠太は父・太一の再婚をきっかけに、同い年の少女・綾瀬沙季とその母・亜季子と一つ屋根の下で暮らしていくこととなる。

互いに両親の不仲と離婚を経験しているがゆえに、男女関係に慎重な価値観の二人は、義理の兄妹として適切な距離感を保とうと約束する。

私はあなたに何も期待しないから、あなたも私に何も期待しないでほしいの

考えを述べあい、すり合わせを重ねることで、互いを理解していく悠太と沙季。

新たな生活に居心地の良さを感じはじめた時、二人の関係はゆっくりと、しかし確実に、変化をはじめて…………

静かに、確実に進んでいく物語


このアニメは劇的にストーリーが進む展開はほぼない。バトル物とかに慣れている人にとっては少し退屈に感じるかもしれない。しかし、毎話悠太と沙季の会話で少しずつ、確実に展開していく。

僕はプロとかではないので想像だけど、これはかなり上手くやらないと、「静かで、退屈なストーリー」になってしまい、難易度が高いと思う。ストーリーがゆったりと進んでいく分、物語の構成や劇中の音楽で間を持たせないと、簡単に見ている人間の心が離れるからだ。

そんな中、義妹生活では上手く機能している。原作のストーリーの良さは勿論だと思うけど、作画や演出、音楽の総合的な映像で訴えかけてくるある種のこだわり、というか熱量が感じられた。この熱量が何か?というのは(単に僕が感じたというだけの話ではあるけど)「徹底した世界観の演出」だと思う。

原作者の三河ゴーストさんの X(旧 Twitter)を読んだ感じだと、結構カットや追加エピソードがあるとのこと。特に、悠太と沙季のストーリーであるというところに重点を置いた結果他のキャラクターのエピソードがまるまるカットになっていたりするらしい。これは原作未読で初めてこの物語に触れる身からするとすごく分かりやすい構成で良かった。

異常なまでの引き&ロングカットの多さ


このアニメのアニメーションの特徴としては、異常なまでに引きのカットが多いということ。しかもめちゃくちゃ長い。

僕はアニメーターではない(どころか絵もまともにかけない)けど、引きのカットの作画カロリーがめちゃくちゃ高いのは、以前たまたま見た Youtube の動画で、岡田斗司夫さん(元ガイナックス社長)が語っていて知っていた。以下の動画の 11:40 くらいから。

動画で語られているのは「異世界はスマートフォンとともに」という作品についてで、「もっとカット短くして楽できるのに、馬鹿正直な構図で映画的に長尺で描いている」ということ。これ、まさに義妹生活でやろうとしたことなんじゃないだろうか?そう考えると、この「義妹生活」は映画のような雰囲気がある。

場面繋ぎで引きのシーンが一瞬入るものとかは結構見かけるけど、ここまで徹底的に引きのカットを入れているテレビアニメを僕はあんまり見た記憶がない。

何気なくアニメを見ている人間からするとほとんどこの大変さに気づかないのではないか、という気がするし、動きの多いアクションシーンとかと比べるとある意味で「割に合わない作画」だと思う。また、引きのカットが多い影響で、途中の話数で顔が(ほんとに少しだけど)崩れていたように見えた部分は正直見受けられた。何年も製作期間をかけたハイクオリティの作画アニメが当たり前になりつつある昨今の傾向だと、それすら作画崩壊と言われる可能性がある。

それらのリスクを背負ってでも世界観の演出のために引きのシーンを多用している。バトルシーンのように目立つ作画じゃないけど、めちゃくちゃ気合の入った作画だ。何より、僕個人としてはそんなことが気にならないくらい素晴らしかったと思う。

僕は古い人間なので、今回アニメーションを制作しているスタジオディーンというと「Fate / stay night」の印象だったけど、今後僕の中では「義妹生活」になりそう。

徹底した世界感の演出


作中の大部分を占める悠太と沙季の会話シーンはすごく贅沢な間の取り方をしていて、これが独特な空気感というか、映像として物語を描く上での世界観のベースラインとして機能している。

中でも僕が一番驚いたのは第三話だ。10:35 ~ 11:15 くらいの間、なんと無言でただ悠太と沙季が食事するシーンが引きのアニメーションで描かれている。

その間約 40 秒

信じられなかった。もちろんいい意味でだ。

アニメというのは尺が限られているから、普通はむしろ逆にセリフを詰め込む傾向にある。一話約 24 分のうちの 40 秒はとても貴重で、展開の早いアニメとかならひとイベントとか、ボケ→突っ込みのサイクルが 2、3 回あってもおかしくない秒数だ。しかも静止画で流すとかじゃなくて、ちゃんと食事しているシーンがアニメーションで描かれていて、ものすごい徹底されている。無言の間を持たせるために、声優さんの力を一切借りることなく映像で演技をしないといけなくなるので、アニメーションを作る側が覚悟を決めないといけないのは想像に難くない。

世界観の演出のために徹底していたこのシーンを見て、僕は最終話まで絶対見ようと思ったし、見てよかったと思う。

原作者の熱量がすごい


放送終了後に気づいたけど、毎話放送後に原作者の三河ごーすとさんが長文の解釈を X(旧 twitter)に投稿していた。当たり前のように毎回 5000 文字くらいはある。熱量がすごい。

特に、5 話の読売先輩から悠太への言葉は意図が汲み取れずにいたけど、原作者ならではの解説で腑に落ちた。

自由に見れたという意味では、解説とかを見なかったのはプラスだったと思う。あと、(当たり前なんだろうだけど)ストーリーを構築するうえでめちゃくちゃ考えられている。実はこういう裏設定があって・・・、みたいな話がばんばん出てくるので興味がある人はこちらも見ると面白いと思う。

最後に


その他劇中の音楽や声優さんの演技もすべて世界観を作り上げていて、見ていて飽きなかった。

一方で、率直に言うとこの作品はかなり視聴者を選ぶというか、伝わる人には伝わるけど、伝わらない人にはあんまり伝わらない作品なんじゃないか?という気もする。

この文章を読んでもし気になった方がいたら、一話だけでも見てみて、自分に合いそうか確認してみてほしい。一話で合いそうだと思ったなら、多分最終話まで面白くみれるはず。


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