はじめてのデート(つづき)
Amazon Musicで、あいみょんを検索し、「裸の心」を流し始めた。
そして、、、
うっ、
裸の心、イントロが…
静かでゆっくり過ぎる〜〜ー
歌が始まるまで、孫娘の注意を惹きつけられるか?💦
いや、なんとしても惹きつけておかなければ。
私は、力の限りの笑顔を作り、あいみょんのCDジャケット写真が表示されたスマホの画面を見せて、コンサート会場でのペンライトのように、左右に動かし始めた。
さあ、これでどうだ…?
孫娘の眼は、スマホの画面を追って左右に動いている。
うまくいっているじゃないか…と、思った以上の効果に驚きながらも、束の間の?余裕を感じていた。
そう、それはやはり束の間だった。
すぐに画面を眼で追うのをやめて、こっちの顔を見てきた。
これ、まずいんじゃないのか…
また不安そうな顔になってきている。
…と、ようやく歌が始まったので、スマホのあいみよんにあわせて、自分の肉声で歌い始めた。
歌の力なのか、たまたまなのか、わからないが、孫娘の顔から、不安が少しずつ和らいできているのが見えた。
私は歌い続けた。
孫娘の心に届くように。
おじいちゃんですよー
怖くないよー
君のこと、とっても好きなんだよー
おじいちゃんもちょっと緊張しちゃってるけどねー
...思いを込めて歌った。
歌の歌詞はあいみょんだが、その歌詞に私の心の想いを乗せて、語りかけるように歌い続けた。
直接の気持ちを言葉に出して伝えるよりも、歌の歌詞を歌いながら、心で想いを伝える方が、自分でも自然のように感じて、なんとなく心地よかった。
裸の心を一曲フルで歌い終え、私自身、小さな達成感を感じていた。しかも、孫娘も今までよりもリラックスしている。
音楽が心地よかったのか、歌の力なのか、心の声が届いたのか、、、とにかく事態が好転しているのは確かだった。
…でも、そんな喜びに浸る時間などない。少しでも気を抜けば、いつ事態が急変して、泣き出してもおかしくない状況だというのは、自分でもわかっている。
次の曲を探して、またすぐに歌い始めなければ…。
「マリーゴールド」
「ハルノヒ」
「君はロックを聴かない」
と、あいみょんメドレーで続けて歌ったが、あいみょんはこのくらいしか知らない。
次は何を歌うか?
YOASOBIもADOも歌えない。最近の歌はほとんど知らないし…
となると、やっぱり、自分の若い時によく歌った歌を探すしかないか…
赤ちゃんといっても女の子だから、、、
考えた末、
「ユーミン」で検索。
そう、あの頃は、特に女の子の間では、ユーミンは人気の定番だった。
ユーミンなら自分も知ってる曲は多い。歌える。
「アニバーサリー」
「優しさに包まれたなら」
「卒業写真」
「ひこうき雲」
「守ってあげたい」
「瞳を閉じて」
孫娘の瞳を見つめて、口角を上げてニコニコしながら、ユーミンの歌を歌っているうちに、この子の未来を思い浮かべた。
この子も恋をするようになるんだろうな。
どうしようもなく心がたときめいたり、人知れず悲しい夜を過ごしたり、、、
そんなことを考えたら、思わず、
「がんばれよ」
と伝えずにはいられなかった。心の中で。
そうこうしているうちに、後ろから、
「大丈夫?泣かなかったー?」
と、娘の声。用事が終わって戻ってきた。
「う、うん。なんとか泣かなかったぞー」
「すごいじゃん、慣れてきたのかねー?」
なんとか泣かずに、自分の任務を終えることができたことに、ホッとしたと同時に、孫娘に対して、少し繋がったと感じた。こちらからの一方的なものかも知れないが、それでも嬉しい。見返りはなくていい。
孫娘に向かって歌い続けた時間は、二人だけの秘密ができたようで不思議な気持ちになった。大切にしよう。
「おなかすいちゃったよ。」
「おう、それじゃ一緒に食事しようか?」
その日は、娘家族と一緒に、イオンのレストラン階で、韓国料理の店で食事をした。
こうして、はじめてのデートは終わったのでした。
今度、いつ会えるのかな?
Candy G
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?