あの頃私は飛影の女になりたかった

私は古の腐女子である。
その時好きなものを好きなように細々と書いていて、量産できるほど集中力がなくなったけれど、Twitterなどで流れてくるその時好きなジャンルをにこにこと眺める日々。


ある時、友人とオンラインで通話していた時、夢小説の話になった。
私は腐女子と夢女子の二足のわらじを履くことが可能だし、乙女ゲームもプレイする。一方、話していた相手は夢小説については好きな作家さんが書いていれば読むといったくらい。そんな彼女と夢小説の変遷についてなどの他愛もない話をしている時、ふと記憶が掘り返された。

それは当時、私が幽遊白書の飛影に人生を狂わされていた時の話。

少女漫画を読んでいた夢見る女子は、ある時幽遊白書の飛影にガチ恋をした。
彼のグッズを集め、カードを集め、文房具も集め、アニメイトに足繁く通った。
(そこで買った同人誌で腐女子に目覚め、よくわからず買った触手プレイ本が母親に見つかり家族会議になったのはまた別の話)
彼の一挙手一投足に感情のすべてを注ぎ込んで、当時は表現における情緒なんてかけらもわからないから、魔界統一トーナメントが終わった後の「ハッピーバースディ」を見た日には、「飛影に女ができたあああああああああ」と号泣して、熱を出して寝込んだりもした。
そりゃもう「飛影はそんなこと言わない!」状態である。夢見る、そして恋する女の子だった。

さてその当時、もちろんピクシブなんかない。インターネットもない。自分の中の滾る思いはすべて、キャンパスノートにぶつけられた。
そこで書かれていたのが、現在で言うところの夢小説だ。当時はそんな言い回しもなかったけど、あれは夢小説だった。
いやあったかもしれないが、私の夢小説の認識ってJavaScriptで「あなたのお名前は?」ってやるやつだと思ってるもんで。

いま思うと、幽白の夢小説ってめちゃくちゃ難しくない????????という会話になった。

某テニスのあれなら同じ部活になったり、架空の妹や姉になったり、幼馴染になったりできる。某マフィアの復活ものでも●●の守護者という設定を作って無双できた。

でも幽白はどうだろう。
飛影の女になるための選択肢は、当時以下の3つだった。

・人間として彼と結ばれる
・妖怪として彼と結ばれる
・隔世遺伝で後に妖怪となって彼と結ばれる


「人間やめないといけないのかよ!!!!」とは彼女の談だ。そうだよ!!!!!!!!!!!妖怪だったら添い遂げられますからね!!! 人間として生きるんだったら彼を置いていかなければならない!!!!それもまた創作をするとしたらものすごく美味しい要素になるんですけどそういう話じゃないので割愛しますね。

夢女子になると決めたら彼と出会わないといけないですね。妄想はそこからスタートします。
でもね、出会うと言っても難しいんだよ。
なにせ主役の幽助からして難しい。幼馴染のポジは蛍子ちゃんがいるし、彼は学校にあんま行ってない不良だからクラスメイトってのも望みが薄い。しかもすぐ死ぬ。死から始まる。接点がないじゃん!かといって相棒の霊界探偵になったところで、すぐ暗黒武術会編に入っちゃうじゃん! 幽助の夢女子は大変だったと思う。大変だったね。

飛影なんか投獄されるじゃん。チャンスなんて人間のうちはそんなにないじゃん。だったら妖怪になる?妖怪でなら出会うチャンスもちょっと出てくるよね。人間やめる? やめよう!

さてさて、人間だろうと妖怪だろうと、飛影の女になるためには、出会ったら次に自分の立ち位置が必要になってくる。
それは、蛍子ちゃんや雪菜ちゃんたちと一緒に彼らの戦いを見守るポジションか、それとも彼らとともに戦うポジションかだ。
どちらを選ぶかは自由だ。でもどうせなら戦いたいよね。人間やめる? やめよう!

いろいろできるんだよ。たとえば雪菜ちゃんの『涙が宝石になる』をリスペクトして、『血液が不老不死の薬になる』みたいな。無茶だって?無茶を通すのが夢女子なんだ。これなら狙われる理由ができるね!って浅はかな当時の私は本気でにこにこしていたんだ。

でもここでもまた問題がある。暗黒武術会って、余計な試合(つまり夢女子の)をねじ込もうとするとどうしても無理がでてくる。あれは勝ちも負けもすべて説明されているから、自分が戦う相手いないんだよね。そりゃ当然なんだけど。もはや幻海さんの代わりに自分が出るくらいの無茶苦茶をしないと成立しないんだよね。戦うのやめる? やめない!

見守るポジションになると途端に彼らとの交流がなくなるからどうしても戦おうとするんだけどいろいろ無理が出てくるからこのあたりで夢女子である私は悩み始める。この妄想だけで数年過ごしていた。何度こねくり回してもまあ無理が出てくるので飛影の女になりたい私は思考がパンクして阿波おどり踊ったりした。

そして人間のままでいると魔界の扉編とかトーナメント戦とかで置いていかれるんだよ。そうすると夢女子は「いつ来るかわからない彼の帰りを待つ私」を妄想し始めるんだよ。どうやったらそばにいられる?人間やめるしかないよね。妖怪になろう。

当時の私は飛影の女になりたかった。
なりたかったから、妖怪になった。

これが、夢女子の話をした友人とともに「もしかして難易度が高いのでは」と思った理由だ。
いまピクシブを席巻してるスマホゲームとか、ゲームだから最初に自分のポジションが用意されてて優しい世界だなって嬉しくなる。友人が同情の目で私を見ている。

ところでここからはこのnoteを書いた理由なんだけど、幽白以上にあまり物語に隙がなくて夢女子になるのが難しい作品って他になにかありますか?
ちょっと私と友人が通った道では思いつく作品がなかったので、興味がある。推しの女になるために人間やめた人とかいますか?

良ければ教えてほしいなと思った次第です。

幽遊白書の完結から26年。
私の26年越しの初恋の話を聞いてくれてありがとう。

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