見出し画像

追いかける

太陽を掴みたい男がいた。
山を越え、谷を渡り、追いかけに追いかけた。
いつか掴めると信じて。
ある日、追いかけて山を登ってゆくと、
もう行き止まりで足元は垂直の絶壁が延々と続いる。
底の見えない深い谷がどこまでも深く深く続いている。
谷の向こうはなにも見えるものはない。
ただ太陽がはるかな空の、彼方に浮かんでいるだけだった。
男は無の世界を初めて見た。
男と太陽の間には、無があることを知った。
太陽を掴むには、無になるしかない。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?