映画「パブリック 図書館の奇跡」 *20/8/2

最近の日本の公的扶助についても、思いを巡らせずにはいられない映画だった。

(※劇場公開中の映画なので、ネタバレになりそうなものは控えます)

あらすじ
米オハイオ州シンシナティの公共図書館で、実直な図書館員スチュアート(エミリオ・エステベス)が常連の利用者であるホームレスから思わぬことを告げられる。「今夜は帰らない。ここを占拠する」。大寒波の影響により路上で凍死者が続出しているのに、市の緊急シェルターが満杯で、行き場がないというのがその理由だった。約70人のホームレスの苦境を察したスチュアートは、3階に立てこもった彼らと行動を共にし、出入り口を封鎖する。それは“代わりの避難場所”を求める平和的なデモだったが、政治的なイメージアップをもくろむ検察官の偏った主張やメディアのセンセーショナルな報道によって、スチュアートは心に問題を抱えた“アブない容疑者”に仕立てられてしまう。やがて警察の機動隊が出動し、追いつめられたスチュアートとホームレスたちが決断した驚愕の行動とは......。


血税が使われるような公共の場での仕事をしたことがある人には、とても刺さる映画だと思う。「公」って、「市民」って、一体だれにあたるのか?「あいちトリエンナーレ」は税金でなければやればいいと考えている人が多いことも、この映画にもつながってくることだと思う。

また、映画の中では、事実以上の見出しで視聴者を煽り、注目を取れればいい(バズればいい)という、マスコミに対する批判も描かれていたことは、描き方も含めてとても良かったと感じた。

それらと主人公が戦うために言葉が、本から引用した文章だったりと、図書館職員としての戦い方がかっこよかった。個人的には、図書館職員の女性が「私は図書館職員よ」と生き生きと再び動きはじめるシーンがとても好きだった。図書館への尊敬、図書館職員への矜持が溢れている映画だった。

また、音楽に対しても、とてもリスペクトがある映画だったように思う。映画の始まりと終わりがどちらも音楽で一貫されていて、ラストシーンに至るまでに音楽がとてもうまく使われていて、センスの良さに痺れた。

刑事の息子についてだけ、少しもやっとしてしまう。どうか彼にも、主人公にとっての本のような、救いがありますように。

邦題は、「図書館の奇跡」がない方が良かったなぁ…なんだかチープな感じがしてしまうのは私だけだろうか。原題の「The Public」そのまがかっこいいのにな。。


電子書籍が普及するなかでの図書館の役割について、日本も今後同じような流れがあるのではないだろうか。ただ、それよりも、昨今の日本の図書館で深刻なのは、運営形態の変化によって、国家資格の司書たちが活躍できずに国家財産としての知の保存機能を失いつつあり、リクエストを受けた本をいち早く入荷することで人気の図書館が出来上がるという現状だと思う。この映画で描かれたような図書館職員の矜持を語れる人、いまの日本の公共の図書館にいるのだろうか…と、悲しくなってしまったりもした。

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