敗血症性ショック改善後にどの薬剤から中止すべきか【NAd? VP?】
【疑問】
今回は、敗血症についての勉強をしていて感じる疑問の一つ、
敗血症性ショックの治療に用いるノルアドレナリンとバソプレシンについて
ノルアドレナリンとバソプレシンをどちらから減量していくか?
という疑問についてまとめました。
1.敗血症性ショックの循環作動薬についての総論
敗血症の治療については、
感染症の根本的治療としての早期の抗菌薬投与が要となります。
迅速な培養提出と、適切な抗菌薬投与が必須である一方で、
感染源のソースコントロールはより重要であることを忘れてはなりません。
敗血症の治療についてより学びたい方はコチラをチェック👇
また、敗血症性ショックに陥っている場合には循環を立ち上げるために
適切な輸液と適切な昇圧剤の投与が重要です。
●敗血症性ショックの循環作動薬についてのまとめ
第一選択:ノルアドレナリン
第二選択:バゾプレシン
ドパミン…?
ノルアドレナリンのほうが28日死亡率を有意に
改善させ、合併症(特に不整脈)を減少させた。
アドレナリン、ドブタミン…?
十分な輸液とノルアドレナリンの使用でも循環動態の維持
が困難な場合に、使用を弱く推奨する(エビデンスはなし)
これらのポイントを踏まえ、実際に治療しながら血圧およびLacの値を参考にしながら投与量を決定していきます。
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2.ノルアドレナリンとバソプレシンをどちらから減量していくか?
敗血症性ショックの患者で、ノルアドレナリンの投与のみでは血圧上昇が不十分な場合には、バソプレシン(VP)の併用が必要であることは上記の通りです。
しかし現在のガイドラインでは、
敗血症性ショック改善してきた際にどの血管作動薬を最初に中止すべきか
について言及されていません。
この疑問について、参考になる論文について紹介させていただきます👇
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ノルアドレナリンとバソプレシン 敗血症性ショックではどちらを最初に中止すべきか?
2020 Jan;53(1):50-57.
背景
敗血症性ショックの患者で、ノルアドレナリン(NE)投与のみでは血圧上昇が不十分な場合には、バソプレシン(VP)の併用が必要である。
しかし、現在のガイドラインでは、敗血症性ショックが消失し始めたら、どの血管作動薬を最初に中止すべきかについて臨床家に助言していない。
さらに、NEとVPの併用療法を受けている敗血症性ショック患者に対して、どのようにしてバソプレシンを中止すべきかについては、臨床医の指針となるデータには議論の余地がある。
方法
PubMed、EMBASE、コクラン・セントラル・レジスターの各データベースを2018年10月18日まで検索。
NEとVPの併用療法を受けた敗血症性ショックの成人患者で、バソプレッサーの中止順序が異なるものを含むものに研究を限定した。
主要アウトカムは低血圧の発生率。
全死亡率、ICUでの死亡率、ICUでの滞在期間(LOS)を副次的転帰とした。
感度解析とサブグループ解析、および試験の逐次解析を行った。
結果
今回のメタ解析では、前方視RCT1件と後方視的コホート研究7件が対象となった。
VPを先に中止した場合と比較して、NEを先に中止した場合の低血圧の発生率は有意に低かった(オッズ比、OR 0.3、95%信頼区間、CI 0.10~0.86、P = 0.02、I2 = 91%)
全死亡率(OR 1.28、95%信頼区間、CI 0.77~2.10、P = 0.34)またはICU死亡率(OR 0.99、95%CI 0.74~1.34、P = 0.96)のいずれにおいても、これら2群間で有意差は検出されなかった。
さらに、ICU LOSについても5つの研究で評価したが、離乳時のバソプレッサーの順番が異なる2群間では統計的有意差は認められなかった(平均差1.35、95%CI -2.05~4.74、P=0.44)。
サブグループ解析では、特にコルチコステロイドの使用率が低い患者において、低血圧とVPを最初に中止する習慣との間に有意な関連が示唆された(オッズ比、OR 0.18、95%信頼区間、CI 0.04~0.78、P = 0.02)。
試験の逐次解析では、今回の結果から結論を導き出すのに十分なエビデンスが不足していることが示された(必要情報量=11 821)。
結論
敗血症性ショックの成人において、VPとNE療法を併用した場合、最初にVPを中止すると低血圧の発生率が高くなる可能性があるが、死亡率やICUのLOSとは関連していない。
より大きなサンプルサイズの前向き研究が必要である。
翻訳サイトDeepLで翻訳 一部著者が意訳した
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この論文を読むと、ノルアドレナリンから漸減のほうが良いかもしれないと考えることが出来ますが、今後も様々な論文の発表を待つ必要があります。
3.引用文献
1)SHOCK. 2020 Jan;53(1):50-57.
2)重症患者管理マニュアル
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