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小雪 第五十九候 朔風払葉

小雪も次候、「朔風払葉 (きたかぜこのはをはらう)」 となりました。期間は11月27日から12月1日頃。

この頃、なんだか気温はほんの少しだけ高め。この「ほんの少し」が皮膚感覚にはなんともしっくり来ない感じなうえに、季節の進み方もなにやら戸惑うよう。

そんな日が続いていましたが、11月25日、木曜日の夜、おや?なんだか冷え込み方がいつもより早いような?という気がし、金曜日の朝はそれまでよりぐっと気温が下がりました。部屋の換気をすると日本のような暖房が無く、とにかく涼しくすることが前提のタイの家は、まるで外に居るように肌寒く侘しくなってしまいました。しかも朔風、北風が滔々とリビングへ流れ込み再び外へと通り抜けていきます。

最近良く当たるタイの天気予報でも、金曜日は終日あまり気温が上がらないとのこと。実際、少し雲が多めの薄日が射したり消えたりを繰り返す日で、少し前に衣装ケースから出して夏服と並べていた薄手のニットを終日着られる、日本の物憂い晩秋のような日となり、落ち葉の発酵する甘酸っぱい匂いやバウヒニアのサザンカに似た白粉めいた香りを感じながら、久しぶりに静けさの中に耽溺するような一日を過ごせたのでした。

そして、前夜から部屋が床や窓から冷気が放射してくるような気配があり、白い毛皮族の家族は、少し前のお気に入りだった冷たい床に寝転ぶのをやめて、ソファによじ登って、そっと人族に身を寄せるようになったり、その予兆はあったのですが、27日の朝。気温は久しぶりに19度。冷んやりです。
そして、窓を開けると北風がざわざわと部屋へなだれ込んできて、近所のチークが大きな葉を落とす、がさがさという音が奇妙な鳥の羽ばたきのように聞こえます。
なんだかまるで、冬に羽ばたき音があるとしたらこんな風だろうか?そんな想像をしてしまう、しんみりとしながらどこか荒々しさがある音で、風の匂いにも、雪が降る時のような冷たい匂いがあるような気がしてしまったのです。

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今日は、12月1日。朔風払葉 も今日で終わりますが、北風は止むことなく、空に大きな川の流れがあるかのように滔滔と吹き、空気は澄み、朝は放射冷却も起きるようになりました。遠くから聞こえる音も、湿度が下がったことで、少し軽くざらりとした響きに変わりつつあります。
家に来るハウスキーパーのマダムも、身体を動かすと暑くなるから。。と、家に着くなり脱いでいたセーターが着たきりになり、近所のヨーロッパから来た家族が住む家の門や庭にはクリスマスのデコレーションが始まりました。会社のスタッフたちのシルエットも、みんなそこはかとなく着膨れてはじめてもこもこ丸くなり、犬たちも枯葉の庭でごろごろ日向ぼっこです。

これだけ寒くなれば!短い期間ですが、やっとクローゼットも夏服をしまうことができます。
いよいよ熱帯の冬です。

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