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小雪 第五十八候 虹蔵不見

タイに居てはただ憧れるばかりの雪の字が現れた、第五十八候「虹蔵不見 (にじかくれてみえず)」 。期間は11月22日から26日。

小雪になってから、なぜか空に雲が増え、この時期には珍しい大雨と雷の夜もありました。とはいえ、その大雨は地上に残っていた雨季の名残の熱っぽさを洗い流し、昼間も気温が上がるようでいて、意外にそうでもなく、空気はさやさやと軽く、日射しはいよいよ淡くなり、モズの高鳴きが聞こえたり、マゼンダ色のバウヒニアの上品な白粉のような銀色を感じる香りがどこかから流れてきたり、風の音も枯葉や乾き始めた野原を鳴らすかそけさを含むようになったり、冬の気配が迫ってきました。そんなあたりの様子を考え合わせると、この時期は、気温よりも光や音から季節が先に始まるのかもしれません。
人もそれらに触発されて、暑季のように、体感で季節を思い知らされるのではなく、内側から生ずる感覚に秋や冬を察知するようにも思います。

大雨の降った日の前後こそ、積乱雲がそこここに盛り上がりましたが、雨季の頃よりひとまわり小さく、盛り上がる時間は短く、またあっけなくくずおれていくものとなり、虹が立つのに必要な強い光や雨の柱は暦通りできなくなりつつあるようです。

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そんな中、美しい大気光学現象があるとしたら、朝夕の淡い雲にかかる幻日でしょうか。これも、これからどんどん空気が乾いていくと見られることも稀になってしまうことでしょう。
そのかわりに、これからの主役となるのは、日没のあとの薄明光線や地球の影のヴィーナスベルト。

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夕方の光の孔雀、光のパイプオルガンとも呼ばれる薄明光線の中には、この頃は金星が見られ(この写真でも!)、その少し東側には、土星と木星が並んでいるのも見えます。
まだ太陽の光が残ってほんのり明るい空に光る星は、なんだか儚いような、けれど、何かが生まれる先ぶれのような、不思議に胸をくすぐるような雰囲気を持っていて、なるべく明るいうちに星を見つけるのがこの時期の楽しみです。なかなか見えないものを見つける、宝探しに似たような感覚があるのかもしれません。

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