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芒種 第二十五候 螳螂生

とても暑かった数週間から、二十四節気が芒種に変わるのとほぼ時を同じくして、朝の気温は24度前後、昼間の最高気温は30度に達するかどうかという、雨季が本格化する頃に良くある急激に気温が下がる時期にさしかかりました。空模様も、今、太陽が出ればまた暑くなるのがわかっていても、光が恋しくなってしまうような連日のほの暗さ。そして地域によってはいきなり洪水や鉄砲水が出るような大雨も続きました。

そんな雨のせいでしょうか、残念ながら蟷螂の子供達が羽化するのを見かけることはありませんでしたが、その代わりのように我が家の庭の芝生は小さな昆虫達のおかげで、朝夕に歌うようになってしまいまいました。

その歌声の正体は野生の小さなミツバチ達。東南アジアは野生のミツバチの宝庫と言われとても沢山の種類がいるそうですが、そのうちの幾つかが、悪天候で蜜を集める花に窮したのか、我が家の芝生の小さな花に集まるようになったのです。

はじめはとにかくミツバチの小さな唸り声は聞こえるものの、姿が見えず刺されたらどうしよう。。と、少し神経質になっていた私とゴールデンレトリバーの白いふわふわですが、ある時、白いふわふわがなんだか面白そうに地面を覗き込み、鼻をふくふく動かし、何かを目で追うようにしています。何を見ているのか知ら?と近づいてみると、芝生一面に高さ5センチほどのびた微細な芝の花に、北タイではプンムアンと呼ばれている東洋ミツバチの仲間が留まり、蜜や花粉を集めているではありませんか。
目が慣れてくると、そこかしこにプンムアンや、ハリナシミツバチなど、小さなミツバチが同じように芝の花の間を飛び交い、中には花の穂を折ってしまいそうになりながら、オオミツバチ(下の写真はテラスに来たオオミツバチ。apis dorsata)や西洋ミツバチまでやってきています。

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ミツバチ達が集まる朝と夕方は、ちょうど私は白いふわふわを庭で遊ばせる時間。もしも私たちが庭を走り回ったりすることが、蜂達を追い払ったり蜜を集める邪魔になったらどうしよう。。と、ふと不安にもなりましたが、思い返せば、小さな唸り声が聞こえるようになってからの数日。白いふわふわは遊んでいてご機嫌になると、空にお腹を向けて芝生にごろんと転がったりしますが、私たちは彼らに刺されることもなければ、彼らも変わらず庭へ集まり集蜜に余念がありません。どうやら体の大きさや動きの範囲の違いのおかげで、違いに悪い影響はないようです。
むしろ、ミツバチの羽音を聴きながら、水気を含んだ風のしんとした手触りを感じたり、枯れ葉や土の匂いを嗅ぎ、四つ足の愛おしい毛皮族と庭を走り回るのは普段以上に満ち足りた心地を呼び覚ましてくれます。

季節の変わり目の極端な天候が落ち着き、雨季ならではの晴れと雨のサイクルが落ち着いたらミツバチ達は去ってしまうのか、あるいは芝の花の季節が終わるまで彼らの訪いが続くのかはわかりませんが、今は、このかすかでいながら力強く、幸せな音楽を楽しみたいと思います。

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