立冬 第五十五候 山茶始開
今日で二十四節気「立冬」の初候、「山茶始開 (つばきはじめてひらく) 」が終わります。(11月7日~11月11日ごろ)
タイの気象庁からは、北東からのモンスーン風が強くなり、中国の方からの高気圧が南下してくる影響で、北タイの地域ではちょうど9日から13日頃にかけて気温が大きく下がるので、暖かく過ごせるように準備をしてくださいという予報がちょうど7日に出て、ああ本当に立冬の通りの予報になった!と、少しわくわくしていました。
確かにこの予報の頃から、空気は乾いて、ドアを開けてもあのまるでなにか微かな弾力がある流体がぶわりと身体を圧すような熱と湿度が生み出す密な存在感が消え、空気が薄くなったようにさえ感じるほどの軽さとなり、身体を熱するよりは、もはや熱を奪うような感じがします。日の出も遅く、日の入りはめっきり早くなり、日射しも淡くぱきんとプレパラートのように折れそうな手触りです。
うん。これは熱帯の冬だ。
これで予報のように気温が上も下も3度くらい下がってくれたら、いよいよ冬の本当の到来!
冬の洋服を楽しめるし、暖かいスープが美味しい!冷たい床から離れてくれない毛皮族の家族が、ソファーによじのぼって寄り添ってくれるようになる!キャンドルをたくさん灯しても暑く無い!と、寒い季節の楽しみをあれこれ想像し、その冷たいモンスーンの到来を心待ちにしていたのですが。。
空気や光こそ冬めいているのですが、なんだか暑いのです。
しかも、勢いは弱く、割合早く消えてしまうとはいえ、午後になるとそれなりに立派な積乱雲が育って、会社のスタッフの中には「昨日、今日とうちのあたりは大雨だったよ!」という人までいる始末。今年の雨季は小雨だったので、雨は歓迎ですが、やはり暑さにはみんな少し食傷気味です。
しかもしぶとい暑さの居残りで、せっかく衣替えの準備をしたというのに、夏物もしまえず、秋冬物も出してしまってひっこめられず、かえってクローゼット周りが渋滞しているような状態です。
閑話休題。
第五十五候のお題である椿についてです。
北タイにツバキや似た植物があるかと見渡すと、少し夏椿に似たカイダーオと呼ばれる(目玉焼きの意味。学名はOncoba spinosa、英語名もオンコバ)というアフリカ原産の植物が庭木であります。
けれど残念!花が咲くのはタイが一番暑い3月から4月頃。最近では、日本から植物が色々輸入されるおかげで、椿も植木市場で時々見かけることもありますが、なかなか育ってくれず、冬の椿やサザンカに見立てられる花はなかなか思いつきません。なので写真は残念ながら椿ではなく、件の「カイダーオ」の花。そしてその花の蜜を集めに来た、オオミツバチです。
ただ、ツバキ科としてあらためて考えてみると、チェンマイの山では山岳民族の人たちが自分たちが飲むための伝お茶の木を伝統的に育てていますし(烏龍茶を番茶にしたような、薄い香りのキームン茶のような独特な香りと味。美味です。)、1941年に欧米人がお茶の木を見つけてから(だって、山に暮らす人たちはそのまえからずっとお茶を飲んでいたのですから!)栽培が続けられています。
この北タイに自生するお茶の木はアッサム種ですが、そこから作られるお茶は、残念ながらインドのアッサムティーのような濃厚や色や芳醇で柔らかな香りや味はなく、強いて言えば中国茶に近く、とはいえ中国茶のそれ自体が芸術のような稠密な加工も施されず発酵も浅い、いたって素朴なもの。
それだけだと、青臭く、金属的な尖った味がして、飲み慣れない感じです。素朴ながら、山の人たちのお茶はあんなに美味しいのに。。と不思議です。それでも、フライパンで良い塩梅に焙じると、かなり美味しいほうじ茶になります。(最近では、チェンマイよりもう少し北のチェンライという県では本格的な茶の木の栽培をし、美味しい烏龍茶や、日本風の緑茶を作るファームや工場もあります。)
と言う風に、実は北タイはお茶の木のある場所なので、もしかすると、山の中のお茶畑へ言ったら、小さな白い椿の花のようなお茶の花を見られるのかもしれません。
実は、華麗な大輪の椿の花よりもともとお茶の木の慎ましやかで、優しい香りのする花が好きなのです。
これを書きながらお茶の木をどこかで手に入れて育ててみようか。そうしたら来年の今頃は、茶の木の白く芳しい花を楽しめるかもしれないと思っています。
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