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日記:呪いの言葉

「もうすこし愛想があればいいのにね」とT子が僕に伝える。T子は小・中学校時代の同級生だ。学校を卒業してから一度も会ったことはない。誰かから近況を聞いたなんてこともない。T子は女子バレー部(だったと思う)で背が高い。モデルの仕事をしているとか、CMに出ているとか聞いたことがある。(もちろん中学生時代。実際にその何かを見たことはない)身長に合わせるように手足が長い。顔は四角く、目はそんなに大きくなかったと思う。象。これが僕の中のT子の印象だ。親しく何かを話す間柄でもなかったので声を覚えていない。すべてが漠然とした記憶の中でこんなことを言うのも失礼だとは思うのだけど良い印象はなかったと思う。T子に恋をしていたなんてこともない。中学を卒業するときに、卒業アルバムの後ろの空白のページに寄せ書きをする。一行目の言葉はそこに書いてあった。そのとき僕は「なるほど」と思う。ずいぶん時間が経った今、僕には愛想がない。表面的な愛想を除けば、「どうか、どうか残っていてください!」と神様に祈りたくなるくらいしか、自分の中に見つけることはできないと思う。独りでいることはそんなに辛くはないけれど、やっぱり「寂しいなぁ」と思う時もあって、そういう時T子の言葉を時々、思い出す。

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