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日記:徒歩1分

晴れ。蒸し暑い。玄関を開けると、丸く温かい空気が僕にぶつかりながら家の中に入ってくる。徒歩1分。近所にあるCafe & Bar「SOFT」の前に到着。店の前に置いてある看板を動かすため、Mさんが出てくる。「こんにちは」挨拶をする。

「会いたかったんですよー!」Mさんが言う。キャロットラペの味をみてほしいらしい。キャロットラぺの皿が2つ、僕の目の前に並ぶ。ひとつはラぺのみ、もう一つはラぺの上にスライスアーモンドとパセリ。人参は平たい。濃い味で酸味が強い。暑い日にはとても合う。Mさんはこの味に納得がいかない。僕が教えたレシピだけど、材料や調味料、人参の水分を抜く時にどれだけ絞るかによって味は変わる。僕が作るラぺとは味が違う。「伸びしろのある味」Mさんはそう形容する。「美味しいですよ」僕が何度言っても半信半疑だ。「僕が作ったラぺ、今度持ってきますよ。食べ比べてみましょう」Mさんと約束する。

家から一枚、風呂敷にくるまれた絵を持ってきている。

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SOFTの店内に飾ってもらうように描いた絵。SOFTという文字が書かれたプレートに女の子が寄りかかっている。「ふともものラインがいいですよね。ちょうどいいエロ」絵をみてMさんが言う。お店のインスタグラムをフォローしたことで、僕が絵を描いていることを知ってくれた。「ちょうどいいエロ」インスタグラムにアップしていたイラストを見たときもMさんはそう言ってた。お店の壁に飾る。

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絵を飾るため、Mさんが壁にネジをねじこんでいる。なかなか刺さらない。「大変そうですね。手伝いましょうか」僕が言う。「全然、大丈夫です。左手でやってるってのだけが大変です。私は完全な右利きですから。」Mさんが言う。「今まで不完全な右利きの人とか聞いたことないです」僕が言う。「ああ、そうか。じゃあいいんだ」Mさんが言う。Mさんの使う言葉が好きだ。SOFTに来たのは3回目。お店のインスタの投稿は文字が画面を覆いつくすくらいの長文。

「写真適当でしょう?私写真撮る人じゃないし、店の中も外も写すものなんてないからね。いつも同じになるの。文章が長いってよく言われる。ほめてくれる人もたまにいるよ」Mさんが言う。

僕がカウンターでアイスコーヒーを飲んでいる間、やってきたお客さんに「作家在廊してます」と絵を指して言うMさんはとても楽しそうだった。

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