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懐古とこれからと

GWは地元に帰った。帰省といっても3月中は大学を卒業して地元にいたのだから帰ってきたなーといった実感は全くない。大学生活の時に味わった帰省の新鮮味みたいなのはもう二度と味わえないのか。

 暇だったので小学生の頃からの腐れ縁とも言うべき友人と飲みに行くことにした。街の中心部にある商店街は時代の流れで百貨店の閉鎖、店としてはほとんど機能していなかった。かろうじて飲食店は賑わいを見せていた。この街って意外と人がいたんだな。

 その日の2人は焼肉の口だったので焼肉屋の店を探していた。街を歩くとカルビ○○という暖簾が出ていた。ここはどうだろうかと暖簾をチラッとめくり覗いてみる。店内は薄暗く客は誰もいない。店主であろうおじいさんが明後日の方向を向いていた。怖すぎる。どこの飲食店も数人の客がいるのに店主しかいない。あまりにも不気味だったので店主に気づかれないように静かに暖簾を戻し再度店を探す。

 街を歩くとスナックの店の前に地域猫が寝転んでいた。私はというと「あぁ〜猫ちゃん〜どこから来たの〜」と猫を見る度にIQが下がってしまう性分である。まずは指先を近づけ匂いを嗅いでもらう。猫はそっぽを向いてどこかに行ってしまった。人にも好みがあるように猫にだって好みがあって良いのだ。悲しいけれど。

 結局このままじゃ飯にも酒にもありつけない不定職者のような心持ちになりそうだったので再度例の焼肉屋に訪れた。年季の入った引き戸を開け空いてますかと聞く(言うまでもなく空いていたのだが)
「カウンターでもいいかい」店主はそう呟き対面で座ることに。

メニューを見るとカルビー定食なるものがあった。2人はその定食を注文し追加でレバーとビールを注文。すると店主は杖を突きながらビールサーバーの元へ向かい水滴のついた冷えたジョッキへと注ぎ始める。そして、なみなみと注がれた2杯を持ちながらこちらへと向かおうとしたので、いいですよ持っていきますと取りに向かった。
「悪いねえ」と言いながら店主は定食の調理を始めた。

ビールを飲みつつ15分ほどで定食が運ばれてきた。メインはもちろんカルビ。そして気持ちばかりの玉ねぎ、キムチ、ナムル、おこげのあるご飯、わかめが入ったスープがセットの内容。

渋い

小さめのコンロにチャッカマンで火をつけて貰い丁寧に肉を焼いていく。焦ることは無い。肉には足が生えてないのだから遠くに行ったりしない。肉はもちろん美味かったがナムルが絶品だった。ナムルだけで酒が進む進む。

食べてる最中店主と話をした。君たちはどこから来たのかだったり、仕事は何をしてるんだといったようなもの。何を言っても見透かされているような気分になった。なぜだかわからないけど。

 店を出て2軒目に行くことにした。2軒目については書きたいエピソードがあったので別枠で後述させていただく。

 家に帰ったあと親父に行った店の話をした。まだその店やってたのかと言われ、どうやらスナックで飲んでた人たちが2軒目で行くような店らしく道理で似つかわしくなかったわけだ。

ベロンベロンになった状態で食べたら美味いだろうな。酒ありきの焼肉店。渋い店主、時代を感じさせる店構え。きっと20年も経てば昔ながらの店なんて無くなってしまうんだろう。

不意に20年後、自分がどうなっているのか考えてみた、もしかしたら結婚して子供もいるかもしれないし独身貴族を堪能しているのかもしれない。結局自分はあくまでも自分だ。どこへ行こうとも変わらない。人生に答えなんかあるんだろうか、幸せとは何なんでしょうか。そんな疑問焼いて食べてしまいたいぐらい不毛な物体なんだけど今の自分には調理する術を持たない人のような存在にすぎない。悲しいことに。


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