ペアダンスは心が通じ合うのではなく会話

ペアダンスをはじめた当初、私はペアダンスをすると相手と心が通じ合う感じがしてうれしかったです。しかし、さまざまな経験を積んで考え至ったのは、ペアダンスは非音声言語によって会話をしているのだということです。

ペアダンスにおける要素は、それぞれ言語としては以下のように考えられます:

・リードは提案
・フォローは返答
・ステップは単語
・一連の動きは文

ペアダンスを会話だと考えると、パートナーと踊る上でのさまざまな問題を解決する材料になると考えられます。

リーダーは「こっち!」と提案し、フォロワーが「OK」と返すのが会話の基本ケースになり、これは初心者段階のペアダンサーによる会話となります。

慣れてくるとより流暢な会話になり、リーダーは「こちらに行くのはいかがでしょうか」と丁寧に提案し、フォロワーは「あら、私はそれよりもあちらに行きたいです」と返答し、リフォローするリーダーが「わかりました、それで行きましょう」と返し、動きが決定されます。

このように会話がうまくいけば円満で楽しいダンスになることでしょう。しかし会話である以上、コミュニケーションミスというのはどうしても起こります。

頻出する基本的なコミュニケーションミスの例としては、リーダーが「こっち!」と提案し、フォロワーが「あっちねわかった!」と返答してお互いが別な動きをしてしまう、というものです。これは単に、リーダーとフォロワーどちらか、もしくは双方の伝える技術と聞く技術が不足しているために発生するよくあるケースです。

より発展してくると起こるコミュニケーションミスの例としては、リーダーが「こっち!こっち!こっち!こっち!」とフォロワーがどうフォローするのかを気にせず動き、一方的にまくしたてるかのごとく、フォロワーを無理やり動かしてどんどん進んでしまうものです。
これは、リーダーの技術が上達してくると誰もが一度は感じる「リードさえうまければ、フォロワーの力量に関係なく動かすことができて、リーダーの自由に踊れる」という万能感によるもので、相手を支配して自由に踊りたいリーダーはこうなってしまいます。自分の話をするだけでなく、相手の話も聞きましょう。

そしてそのようなリーダーに慣れてしまったフォロワーは「リーダーについていけばいい」、「リーダーに任せておけば楽しく踊れる」、「うまいリーダーが相手なら私は華麗に踊れる」、「私を楽しませてみなさい」のように、一方的に従うフォロワーや、リーダーが楽しませてくれるのを一方的に待つ傲慢なフォロワーになってしまいます。どのタイプのフォロワーもフロアにはたくさんいます。リーダー任せではなく、自分から踊り、自分もリーダーを楽しませることを身に着けましょう。

さらに起こるめんどくさい問題は、リーダーがどんなにがんばって楽しませようとしても、フォロワーは無表情またはつまらなそうに踊り、あとになって「私は本当はこんなふうに踊りたかった」と言われるというものです。これはつまり「私の気持ちを察してくれなかった」ということですが、伝えなければ伝わらないのは通常の会話も同じことです。自分はどう思っているのか、自分はどう踊りたいのかをダンスで伝えられる技術を身に着けましょう。

このように、ペアダンスが「心が通じ合うもの」と考えてしまうと「通じ合えなかった…」という不幸が起こりやすく解決不能に陥ってしまったりもしますが、会話だと考えれば解決の糸口が見つかる可能性がでてきます。

伝えようとしてくれていることが理解できなかったら聞き返してもよいのです。
自分の話ばかりする人が嫌われやすいのはダンスも同じなので、相手の話も聞きましょう。
一方的に楽しませてもらうのを待つのではなく、相手のことも楽しませてあげましょう。
不満を溜め込まないように、自分の考えは相手に伝えましょう。

そして、そのように問題を抱えている相手と無理に踊る必要はないので、合わないなとか、会話が成り立たないなと思ったらやんわり相手を変えましょう。わかりあう努力は大事なことですが、どんなにがんばってもわかりあえない相手はいます。

このようなことに気をつけて、心穏やかなペアダンスライフを送りましょう!

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