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ココロのバトンパス

昨年度、10回にわたってデーリー東北の「ふみづくえ」に投稿した編集長のエッセイを紹介します。


6月1日号の広報くじ(№366)で、牛の手綱をがっちりとつかむあどけない表情の女子生徒が表紙を飾った。久慈市内の中学校に通う彼女は、同市山形町で行われている「平庭闘牛大会」で、牛を巧みに操る勢子(せこ)としてこの春デビュー。同大会最年少で初となる女性勢子の誕生は話題を呼び、本紙でも取り上げた。「父のように格好いい勢子になる」との書き出しとともに、師として背中を追う父親とのツーショットが紙面を飾り、読者に明るい話題が届けられた。

久慈市の2021年度定期人事異動で、部長級ポストに初の女性職員が起用されるなど女性の活躍を目にする機会も増えてきた気がする。

今回は弊誌の16年4月号からスタートした久慈地域で活躍する女性たちのコラムを紹介したいと思う。これは仕事や団体活動を通じて地域を明るくしようと奮闘する女性にスポットを当てた見開き2ページのコーナーで、2人の女性が毎号1ページを担当。個々の活動を通じて得た興味深い情報や、普段の暮らしの中にある何げない出来事を写真と文章で気取らずに紹介している。ちなみに、コーナータイトルは連載開始当初の執筆者で、いわて復興応援隊員として活躍した宮本慶子さんに由来する。

宮本さんはJR八戸線のレストラン列車「東北エモーション」を洋野町沿線で歓迎する「洋野エモーション」の仕掛け人。有志によるこの活動は乗客と沿線住民との心の交流を生み、洋野町を全国に発信する取り組みに発展した。私はこのプロジェクトに共感し、乗客と沿線住民の関係と同じように、誌面でも読者と執筆者をつなぎ心地よい共感を生み出したいとの思いから「ココロエモーション」というタイトルを据えて連載を始めた。執筆者のバトンをつなぎ、連載は現在も続いている。

このコーナーは連載開始からこれまでに7人の女性が誌面を彩ってきた。久慈地域に移住し、自分らしくなりわいを作り出そうと奮闘する地域おこし協力隊員や、子どもの食物アレルギーについて理解を広げようとPRに取り組む母親など多彩な顔ぶれだ。

現在、鋭意編集作業中の9月号から、地域資源を活かした唯一無二の器作りに取り組む陶芸家と、整理収納を通じて心の整え方を指南する生前整理アドバイザーによる連載が始まる。店頭に並んだ際はぜひ目を通して、2人の活動を応援していただければうれしい。

結婚や出産、育児などのライフイベントとキャリアアップをてんびんにかけ、選択を女性だけに押し付けるのは不平等だと思う。女性だって自分らしくやりたいことをやる権利があるし、男性も主体性を持って育児や家事に関わる責任がある。

女性の活躍は地域社会の底上げにつながるはずだ。誰もが自分らしく個性を発揮できる地域づくりの一助となるよう、誌面を通じて輝く女性たちを紹介していきたい。

海女と南部潜りの里からダイバーシティが広がることを願っている。(2021年8月18日掲載)

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