行政を軸にした国家の変遷

国家(組織)の運営手法

官僚制
比較的規模の大きい社会集団や組織の管理システム。規則にしたがって形式的に運営され、職務が専門的に分かれた運営形態をとる。
凛議制
組織の末端部署の担当者が起案書を作成し、それを上位に位置するものに順次回覧し、それぞれの承認を経て最終決裁者が決裁する意思決定方式。ボトムアップ型で、関係者全員が意思決定に関われる一方、最終決定までに時間がかかり、責任の所在も曖昧になる。

行政を実行するにあたって、これらのシステムに乗っかっていろんなことを決めて実行している。

100年単位の国家の変遷

夜警国家
18~19世紀ごろ。国家の仕事は国内の治安維持や個人の生命・財産の保護で、必要最小限の任務以外は国民の自由に任せる国家観。
福祉国家
20世紀ごろ。国家の仕事は社会保障政策も含めて国民の福祉も手厚く行うべきという国家観。行政官僚が中心となり国を運営した結果、中央集権化し、いわゆる「大きな政府」となった。
行政国家
21世紀初頭から。官僚優位から政治主導へとシフトすることを目指す。つまり、民間でできることは民間に任せ、政府は社会政策や経済政策を縮小し、「小さな政府」の実現を掲げている。

福祉国家から行政国家へのアップデートを行政改革と呼んでおり、政治主導と小さな政府をテーマに2000年以降に行政国家化が進んだ。1996年に当時の内閣府に設置された行政改革会議に端を発する改革。要点を整理すると、以下の①〜③になる。

①政治主導の準備と実行

1990年代に橋本内閣のもと準備が進み、各省における副大臣、大臣政務官などの政治任用ポストの拡充と国会における政府委員会制度(官僚答弁)の廃止、党首討論の実現など政治主導を目的として2000年ごろに様々な変更があった。

②中央省庁の再編

2001年に政治主導を実現して行政をスリム化するために「中央省庁等改革」が実施された。

現在の中央省庁の府と省
内閣府、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、国家公安委員会、防衛省

以前はもうちょっと数も多くごちゃごちゃしていた。

③NPM(新公共経営)

新公共経営(New Public Management;NPM)は、民間企業における経営手法などを公共部門に導入し、より効率的で質の高い行政サービスの提供を目指すという新しい公共経営の考え方。

以下のような行政改革の流れを辿り、新しい公共経営が進展してきた。

1999年のPFI法制定。これにより民間資金を活用した社会資本整備(Private Finance Initiative)が進む。また同年の1999年に独立行政法人通則法が制定され、独立行政法人が新生。2001年の政策評価法制定では政策評価がアップデートされ、2003年の地方自治法改正によって指定管理者制度が導入された。指定管理者とは、公の施設の管理・運営を民間の団体にも行わせるための制度のこと。2006年には公共サービス改革法が制定され、市場化テストと呼ばれる「民間企業と行政組織の間で競争入札」が実施できるようになり、民間企業が行政に勝るケースでは民間企業に業務委託する例も増えた。

なるほど。国民の保護をより手厚くしていく中で必要になった仕事を全て国(行政の実行部隊である官僚たち)が担うようになって、中央がやる仕事の規模が肥大した結果、社会の変化についていけなくなった。官僚主導の国家運営になっていたことも問題視され、困った果てに仕事を減らすために地方や民間に仕事を投げ、中央の仕事をスリム化。いろんな仕事が昔より効率が良い状態で進められるようになったと。

最近で言うとコロナの対応で都道府県知事がある程度独立して自由に施策を実行できているのもそういう背景があるのね。

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