短編 顔がほころぶ。
彼女の洋服の試着を待っている間に、人間観察を行う僕。
ショッピングモールにはたくさんの人が行き来していて、見ていても飽きることはない。
「この服とこっちの服、どっちがいいかな?」と彼女は聞いてきた。
僕は純粋にどちらも可愛いと思ったので
「どっちも可愛いよ」と答える。
彼女からしたらそれは正解ではないらしい。
頬を膨らませ
「どっちもじゃなくて、どっちか!なの」と言う。
うーん難しい質問だ・・・・。
「んー・・・こっちかな。」と紫の小花をあしらったフリルのついたワンピースを指差した。と彼女は
「わかった!ありがとう!」と言って試着室のカーテンを閉める。まだかかるのか・・・
と思うと彼女が試着室から出てきた。
僕が選んだ服を購入している。
「お待たせーーー!!」
彼女は購入した服に着替えて戻ってきた。
やっと来た・・・。と口に出そうか一瞬迷ったが堪えた。
彼女は満面の笑みで僕の手を掴んで走り出した。
「危ないよ!」と言いながらも僕の顔も笑顔になった。
ふと彼女が僕の手を離したかと思うとふわりと回転した。
買ったばかりのワンピースを他のみんなにも見せるように、ひらり、ひらり、くるくる、くるくると回る。
今は今だけはこの世には僕と彼女しかいなくて彼女は可憐で輝いている。綺麗だなあと見惚れている僕がいる。
ジリリリリリリ・・・音がうるさい、目覚まし時計だ。
うるさいなあと時計を止める。
「夢か・・・」と時間を見ると彼女とのデートの時間が迫っていて、僕は慌てて準備をして
出掛けていったのだった。