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突劇金魚『小さいエヨルフ』

突劇金魚『小さいエヨルフ』を扇町ミュージアムキューブで。
http://kinnngyo.com/lp/long/
大きなステージじゃなく、稽古場に使われるサイズの部屋を洞窟みたいにして、妖しい芝居小屋の雰囲気。
アングラ風のオープニングで始まるが、それを裏切るように、意外にも生々しく重たい家族の物語が始まる。
それは海に面したお屋敷に住む、一見幸せそうな一家に訪れた不幸の物語。
だが安易に「家族の喪失と再生の物語」なぞでは納めず、「感情」というコントロールのできないものを舞台上で暴れさせる。
それでいて演出家は光の少ない芝居小屋を深海に見立て、ビジュアルや身体に注意を払い、冷静でいる。
この感情と冷静が生み出すのは「流行りのリアリズム」でも無ければ「踏襲された小劇場」でもない。もっと「芝居」が生まれた頃の原始的なチカラに触れようとする実験。
ここでは山田蟲男の特徴的な声が祝詞や儀式の唱文のようにゼロ磁場を生み出す。
そして、サリng氏の舞台ではよく見る動物の首。その首は、イプセンが書いたこの戯曲に登場する近代的な苦悩をする人々を、神の代理者として俯瞰する。
サリng氏はそうすることで演劇のいにしえの儀式性を一気に高めるのだろう。近代演劇の父だろうが、チェーホフだろうが、サリng氏はその舞台を自らが仕える神に捧げているように見える。
激しくとも暴力的にならないのは、この舞台に原始的信仰があるからではないか。だから激しいのに静かだ。
役者たちは全員が素晴らしかった。絶妙なバランスを綱渡りしていた。実存と儀式の間を。
関西にこんな劇団や役者がいて良かった。凄い。
是非観て下さい。10/31まで。

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