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『北風と太陽』を信じるな

有名なイソップ童話『北風と太陽』。

あらすじは…

コートを着た旅人を見つけた北風と太陽が
どちらがコートを脱がせられるかで勝負する。

風でコートを吹き飛ばそうとした北風は失敗するが、
暖かい陽射しを向けた太陽は、旅人に自らコートを
脱がせることに成功する。

というもの。

人を動かすには、無理やりなにかをさせるよりも
自然とそれをしたくなるように促した方がいい、
という教訓があるとされている。


僕も子供の頃に『北風と太陽』を絵本で読み、
太陽のようなやり方は素晴らしいなと思っていたのだが
この前久しぶりにこの物語を読み返してみて
太陽をむやみやたらと褒め称えていいのか疑問を感じた。


以下、その理由を書いてみる。

まず、北風と太陽の勝負はフェアではない。

考えてみれば、北風が地球上のイチ自然現象にすぎないのに対して、
太陽は地球の何十万倍の質量を持つ巨大な天体である。

また北風は長くても数日、短ければ数秒で消えてしまう存在だが
太陽は数十億年という長い歴史と経験を持つ。

対等どころか、アリの幼虫と老練なゾウが争うような
理不尽な戦いなのだ。


さらに言えば、北風とは太陽光により地球が温められ
気圧や温度の差が生じた結果、発生するもの。

北風にとって太陽とは自らの親そのものであり、
おいそれと反発することは難しい。
実力差と同様に、両者の背景にある社会的な構造も
見逃してはならない。

生まれたばかりの北風が、親の前で100%の力を
出すことができたと言えるだろうか?
親の顔に泥を塗るようなことを子どもが簡単にできるだろうか?

北風と太陽の勝負は、始まる前から勝敗の決まった
一種の出来レースと呼ぶのがふさわしい。

しかもこの出来レースは、単なる力比べの域を越えて
千年以上にわたり「北風=悪」「太陽=善」というイメージを
人類に植え付け続けてきた。

そろそろ人間たちは、太陽による嘘と欺瞞のイメージアップに
終止符を打ち、悪者扱いされ続けてきた北風の名誉を回復して
あげるべきだと思う。

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