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ビートルズ ホワイトアルバム一枚化計画

1968年に発表された『The Beatles』、通称ホワイトアルバム。
メンバーそれぞれが持ち寄った30曲、どれも削れないということでビートルズにとって最初で最後の2枚組となった。
多様なジャンルを反映した音楽の標本箱のようなアルバムである。

私もこのアルバムが最も好きで、ベスト盤の『1』に続いて初めて買ったオリジナルアルバムで思い入れがある。
当時13歳で、どの曲もはじめは取っ付きにくかったが、聞いていくごとに良さがわかって来たのを覚えている。

さて、今回は「捨てる曲は(ほとんど)無い」けども苦渋の選択で一枚組にしたら?
やってみた。

The Beatles White Album

レノンマッカートニー11曲、ハリスン2曲、スターのヴォーカル曲1曲の黄金比を守った14曲。

  1. Yer Blues

  2. Dear Prudence

  3. Ob-La-Di, Ob-La-Da

  4. Happiness Is A Warm Gun

  5. Martha My Dear

  6. Long, Long, Long

  7. I'm So Tired

  8. Blackbird

  9. Sexy Sadie

  10. Honey Pie

  11. I Will

  12. While My Guitar Gently Weeps

  13. Helter Skelter

  14. Good Night

曲解説

1 Yer Blues

いきなり賛否あると思われるが、Back in the U.S.S.RからのDear〜の流れ、もうよくないか?と個人的に感じている。(散々聞きすぎたのもあるが)
飛行機のSEとクロスして始まるスリーフィンガーのアコギ…から新しい流れを作りたいという逆張り。
ただ、1曲目を任せられる楽曲の強さ、この時期に緩み始めたメンバーのメンバーの結束力がみられるためこの位置にしてみた。

俺は孤独だ、死にたい。
朝も夜も死にたい。

散々な歌詞だが、インドでの瞑想体験を通してジョンの深層心理が表に吹き出してきたかのようで、ただのブルースロックに落ち着いてはいない。
このアルバム全体のレノンはまさにブルーで尖っている。

お気に入りの曲のようで、68年にロックンロールサーカスというストーンズ企画の一夜限りのライブでも演奏され、69年でもトロントでクラプトンらを迎えて演奏された。

ジョンレノン、エリッククラプトン、キースリチャーズ(ベース)、ミッチミッチェルという奇跡の布陣。

2 Dear Prudence

この曲のカギはポールのベースにある。
リッケンバッカーによる半音階ずつ下降するゴリゴリのベースと、イントロから同じフレーズを繰り返すスリーフィンガーのギター、開放感のあるメロディーとコーラスが曲に空間的な広がりをもたらしている。

リンゴスターが一時脱退したため、ドラムはポールが演奏していて、これが逆に粗野な感じがして曲に合っているように思う。
ポールはこれ以降ドラムを練習したのだろう。
73年の『Band on the run』あたりでは本業にも負けず劣らずなしっかりとしたビートである。

3 Ob-La-Di, Ob-La-Da

幼稚園の時にスーパーの屋上にあったゲームコーナーで、100円で汽車に乗れるものがあった。
その曲に使われていて好きだった。
楽しい曲。ポールのベースが良い。

4 Happiness Is A Warm Gun

アダルティックでどこか退廃的な雰囲気の漂うジョンの名曲。
Yer Bluesにも繋がるジョンのブルージーな楽曲。
後半のドラムが4分の4のリズムを刻むのに対して、楽器群は4分の3の拍子でポリリズムになっている。

5 Martha My Dear

ポールによる多重録音にオーケストラを重ねた才能の光る曲。
個人的に学生時代にこの曲にインスパイアされてキーはEbメジャー、左手を凝らせた曲を作ったことがある。

左利きのポールらしく、ピアノのベース音が凝っていて、ラグタイムのようなクラシカルな雰囲気を感じる。

マーサについてマッカートニーは、「僕が初めて飼うペットだ。僕が動物に凄く優しいのを見て、ジョンが『こんなおまえを見るのは初めてだ』って驚いていたのを覚えてる。マーサはとても可愛らしくて、思わず抱きしめたくなるような犬だった」と語っている。
Wikipediaより

ポールマッカートニーという人は、わりと誤解され損な立ち振る舞いをする人に感じている。
メンバーの中で最後までドラッグに躊躇していたのに、一番最初にメディアにドラッグを使ったことを喋ってしまったり、
最後まで何とかバンドを存続させようとしながら、ビートルズ解散の悪者の立場を引き受けてしまったりする。
少年時代から寝食を共にしたジョンにこういわれるとは、なかなか人間とはわからないものだ。

映画でも養女のヘザーマッカートニー(6歳)をとてもかわいがっているシーンも見れたり、元々子どもや動物にはとても優しい人なのだろう。

6 Long, Long, Long

ジョージによる神への愛を歌った曲。
わりと雑な扱いをされがちな気がするが、この曲が昔から好きだ。
The Bandの『Music from Big Pink』からのサウンド面での影響を受けており、同アルバムの『Caledonia Mission』や『We can talk』などを彷彿とさせる後半のピアノがこの曲のアクセントになっている。

7 I'm So Tired

ジョンレノンのヴォーカルの凄さがわかる曲。
本当に疲れている。
「またふざけてるんでしょ?」とヨーコにあしらわれるあたりの歌い方は
混乱と鬼気迫る感覚が伝わってくる。

サウンド面はシンプルなバンドサウンドだが、沈み込むようのようなベースがこの曲のダウナー、レイジーな雰囲気を醸し出している。

8 Blackbird

名曲のレシピ。
ポールマッカートニー 1人
アコースティックギター 1本

2013年のポールの来日公演で、この曲を生で聞けたのが最高の瞬間だった。
Yesterdayと並ぶポールのアコギの技が光る曲。

9 Sexy Sadie

G→F#→Bm→C→D7→G…と
繰り返されるコード進行がベースになっており
F#→Bmの唐突感とでも言おうか、地下室に降りていって扉を開けたら満身創痍の友達が倒れていたような箇所が胸を打つ。

ラフな感じのするサウンドだが、ジョージのブルージーなギターなど聴きどころは多い。
これがフォーク調だったら?ジャズだったら?
ロックだったら?とどんなアレンジをしても映えそうな底力のある曲である。

10 Honey Pie

ポールによるジャズテイストの曲。
1920年代の雰囲気を再現するための手間をかけた作品だが、一息つくためのこの位置。

このアルバムは全体的にジョン、ジョージが哲学的、退廃的な曲が多いのに対し、ポールは明るく牧歌的な曲が多い。
インドへの旅の捉え方の違いだろうか。
軸のブレないポールに対して、ジョンとジョージはわりと思想に影響を受けている。

11 I Will

またもポールによるのどかで美しいメロディの佳作。このアルバムの清涼剤。
完成までに67トラックも要しており、ジョンは終始パーカッションを叩いている。
(20テイクくらいで飽きて出ていきそうなものだが…)

12 While My Guitar Gently Weeps

どこか西部の匂いのある曲。
クラプトンによるリードギターも相まって、アウトローのダンディズム的なかっこよさも感じる。

初期のデモではジョージがアコギで弾き語りをする哀愁漂うものがあるが、私はこっちの方も好きだ。

13 Helter Skelter

ラウドなプロトハードロック。
70代になってもポールはこの曲をライブでやるのだからミュージシャンとしての覚悟が違う。

こういう激しいサウンドに対して、ヴォーカルが負けては曲が成立しないが、もはやこの曲はポールのヴォーカルが無理やり引っ張っている感がある。

14 Good Night

ジョン作の子守唄。
最初はレボリューション9をラストに持ってくる予定だったが、それだとリンゴの出番が無くなるので…

あまりビートルズらしくない曲だが、ジョンの優しさが垣間見える曲。
ラストのリンゴの語りも良い。

振り返り

改めて数年ぶりホワイトアルバムを聞き返したのだが、子どもの頃と今とでは好きな曲がわりと変わっていた。
改めて気づくこともあったり
(Happiness Is A Warm Gunがポリリズムだとか)

それだけのメロディの良さと楽曲のパワーとしかけに満ちている。

そして結論

ホワイトアルバムは2枚組30曲で良い。

おわり

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