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ジョジョ・ラビットを観た話

 私の個人的な感想です。

 戦争モノというのはどうしても苦手なタイプです。目を背けてはいけないこともわかっているんだけれど、

「『目を背けたくなるくらい辛いもの』という感覚があるなら、もうそれで十分じゃあないか」

という言い訳を盾にして逃げまくっていました。
ましてや、観続けるしかない映画館という環境下でそれに触れるというのは、自分にとってはなかなか飛び込まない機会でした。

 ジョジョ・ラビットもビジュアルにどう考えたってヒトラーにしか見えない人物が映っていたから、きっと残酷なんだろうと思って、もうそれ以上は興味を持っていなかった。
Twitterで『残酷表現が無い』というレビューを見て、それなら大丈夫かな、評判もいいしなぁと、足を運んでみることにしたのでした。


 観ているときに思ったのは、今の価値観で見るとえげつないことが、なんとも自然にさらさらと流れていくなということでした。もちろん脚色もフィクションもいっぱいいっぱいあるんだろうけども、
『そうかこれがこの時代の日常だったんだ』
と否が応でも知らされたような気持ちになりました。

 子どもの徴兵も、教え込まれる差別意識や殺しの手法も、自爆して来いと背中を押されるシーンも。

 日本も竹やりの訓練を女性陣がやったというけれど、横にスクロールしてゆく背景の中に、ランチャーを担ぐ年配の女性たちが映っていて、それもひどく印象に残っている。

※※※

 登場人物でいえば、ロージーがずっと自分の中に残り続けるだろうなという人でした。あの人はあの時代の中で自己を持っていて、そしてとても、自由な人だった。

 首を吊らされた人たちからジョジョが目を背けた時に、頭を掴んで「見なさい」と言った。同志たちへの敬意であったのかもしれないし、彼女にとって何より直視しなければいけない現実であったのかもしれない。ゆくゆくは、己もああなるかもしれないという、予想もあったのかもしれない。

 プールのシーンでステップを踏むお母さんの足元ばかりが映っていたのも、そのあと(前だったかもしれない)の、ジョジョと自転車に乗る前に
『自由に踊る』
と言うシーンに繋がっていたんだなと思うとすごく切なくなる。吊るされてしまった時も、何が悲しいって、両足が地面についていないことが悲しかった。もう踊れないのだ。ロージーは命もだけど、なにより、自由を奪われたんだなと思ってしまった。

 私はキャプテン・Kのことがとても好きなので、あの時代の同性愛ってもしかしたらと思って調べてみたら(無知すぎる己)、やっぱり迫害の対象だったんですね。

 身分証明書のシーン、たぶんどこか間違えてるんだろうと思っていたら案の定で、その時はKのやさしさだと思っていたんですけど、彼も、追われる側になるギリギリのところにいたから、エルサと近いところにいたから、彼女を逃がしたし、彼女に寄り添ったジョジョを救ったのかなと思いました。
他者のために自己犠牲をするキャラクターに弱いので、終盤は割と彼に持っていかれました。中盤から好きだったけれども。



 残らない映画でした。何も。あとに。内容が薄くて心に残らなかったということではなくて、ずぶ濡れになった靴を履いてるときのまとわりつくような後味の悪さ、そういったものが何も無かった。残らないくせに、急にくっきりはっきりといろんなシーンが頭に浮かんできて、おなかがギュッとなる。

 残酷で悲痛なシーンも時間をかけずにサクサクと切り替わっていたように思います。あらゆる場面がそれだけで一つ、物語の中核になりそうなくらいなのに、余韻に浸る間もなく次へと進む。ドラマティックにされすぎることの無い、日常。でもだからこそ各シーン各シーンがとても印象に残っているし、こういう描き方が心から見事だと思いました。

 町が襲撃されるところはさすがにスローモーションとかの映像効果が使われていたけれど。


 纏められなくなってきたので雑多に感想を書いていきます。

・宙づりにされた母の脚にしがみつくジョジョの顔が忘れられない。
母親の死体を見るっていったいどういう気持ちなんだろう。
精神が壊れそうだなとおもうけれども、そうならなかったのは、エルサ(守る人)がいたからなんだろうか。


・靴紐について
誰かに結んでもらっている間は、自分の力で歩いていないということ。
ナチスの思想に動かされている状態だったのかな。
『結べるようになる=ナチスの思想からの脱却』、なのかもしれないし、自分の紐じゃなく他人(エルサ)の紐を結んであげているのが、
ジョジョが自己を解放できただけじゃなくて、他者の手を取り外に連れ出すことができる人になったということの現れなのかな。

エルサが履いていたのがロージーの靴だったことに胸を打たれました。

・ジョジョの描いた絵、お母さんとの自転車の場面だったね。あの子の心にあったのはあの思い出だったのか。


※※※

 観終わったときは(矛盾を承知で書くけど)スッキリしつつもしんどくて、もう二度と観られないかもしれないなと思っていたけれど、もう一度結末を知った今の状態で、向き合って見たいと思える映画です。

 一人で観に行ったので次は家で友達や家族とリラックスしながら観たいし、感じたことを交換したいなぁ。映画全然観ない人間なので他と比べられないんだけども、間違いなく自分の人生の中に残る作品でした。


 ツイッターに上げたものほぼそのまま再掲したnoteでした。

 読んでくださった人がいたらありがとう!では、また。