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子どもの命を天秤に乗せること

最近ニュースになった
保育園での子どものうつ伏せ寝とSIDS(突然死)問題
とても悲しいニュースですが
抜本的な対策に至ることは少ないように思えます。

よくあるのがSIDSの危険性についての
職員に再周知する程度
つまり「みんなで気をつけましょう」で
終わっているのではないでしょうか?

このような対策では
「現場が気をつければ、事故は起きない」
と言っているようなもので
とてもマネジメントとは呼べないと思います。

問題の本質を考えず
「子どもの命と書類仕事どっちが大事なの?」
という子どもの命を天秤に乗せるような残酷な問い
現場に突きつけるような姿勢では
今後も真の意味で改善はなされないのではないでしょうか?

問題の本質について書いていきたいと思います。


1、SIDSとは?

まずSIDSについておさらいをしましょう。

乳幼児突然死症候群(SIDS)とはどんな病気?
それまで、すくすく育っていた赤ちゃんが、ある日突然、眠っている間に亡くなってしまう「乳幼児突然死症候群(SIDS:Sudden Infant Death Syndrome)」という病気があります。
赤ちゃんが突然亡くなることは、生まれつきの病気や感染症、窒息事故などによっても起こることがあります。しかし、SIDSはそれらと異なり、何の予兆や既往歴もない赤ちゃんが睡眠中に突然死に至る、原因の分からない病気です。

https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201710/2.html

2、なぜSIDSは起きるのか?

SIDSの正確な原因は未だに完全には解明されていませんが、複数の要因が組み合わさって発生する可能性が高いとされています。
以下は、SIDSの発生に関連するいくつかの要因です。

  1. 睡眠環境: 赤ちゃんがうつ伏せや横に向いて寝ている場合、SIDSのリスクが高まります。仰向けでの睡眠姿勢が推奨されています。

  2. 母親の妊娠中の生活: 妊娠中の喫煙、アルコールや薬物の使用はSIDSのリスクを高めるとされています。

  3. 生理学的要因: 一部の研究では、SIDSになりやすい乳幼児には脳幹の異常が見られることが指摘されています。これにより、呼吸や心拍の調節に問題が生じる可能性があります。

  4. 遺伝的要因: 家族内でSIDSの症例がある場合、リスクが高まる可能性があります。

  5. 出生時の要因: 低体重や早産の赤ちゃんは、SIDSのリスクが高いとされています。

  6. 性別: 男の子の方が女の子よりもSIDSで亡くなるリスクが若干高いとされています。

SIDSのリスクを減らすために、保護者やケア提供者に推奨される対策がいくつかあります。
例えば、赤ちゃんを背中向けに寝かせる
柔らかい寝具やぬいぐるみを赤ちゃんの寝る場所から取り除く
部屋の温度(16~20°C程度)を適切に保つ
赤ちゃんの睡眠中は部屋でタバコを吸わないなどがあります。

3、保育園の午睡チェックとはどんなもの?

保育園で行われている午睡チェックは、子どもたちが昼寝をする時間に安全で健康的に休息できているかを確認するための重要なプロセスです。
このチェックは、子どもたちの安全を確保し、SIDS(乳幼児突然死症候群)のようなリスクを最小限に抑えるために行われます。
午睡チェックの具体的なプロセスは以下の通りです。

  1. 環境の確認: 子どもたちが寝ている部屋の温度や湿度が適切であること、十分な換気があること、そして寝具が安全で快適であることを確認します。

  2. 子どもの様子のチェック: 子どもたちが昼寝をしている間、保育士は定期的(0,1歳:5分毎、2歳:10分毎、3歳以降:30分毎)に子どもたちの呼吸、体温、そして快適さの状態を観察します。これには、子どもが発熱していないか、不快に感じていないか、または異常な呼吸パターンがないか等を確認することが含まれます。

  3. 体位の調整: 保育士は、子どもが安全な寝姿勢を維持しているかを確認し、必要に応じて調整します。特に、乳幼児は仰向けに寝かせることが推奨されています。

  4. 覚醒時の対応: 昼寝から目覚めた子どもたちを適切に対応し、彼らがリフレッシュして活動を再開できるようにサポートします。

午睡チェックは、子どもたちの健康と安全を保護するために保育園で実施される非常に重要な仕事です。

4、なぜ仰向け寝が徹底されないのか?

事故の起きた園でも
「仰向け寝の重要性やSIDSの危険性」は
どの職員も理解していたはずです。
ではなぜそれが起きたのか
考えたいと思います。

まず午睡時間に保育士が行うものを列挙してみましょう
■毎日
・寝かしつけ
・午睡チェック(5~10分間隔)
・連絡帳
・日誌や保育の反省の記入
・翌日の保育の準備
・職員の休憩
・掃除、ゴミ集め
・子どもの荷物整理(汚れもの、おむつ)
・起きた子どもへの対応
■不定期
・週案の作成
・月案の作成
・毎月のおたより作成
・書類のファイリング
・クラス会議
・園内会議
・係や行事の業務

細かく上げていくと他にもありますが
ざっと思いつくだけでもこれだけあります。
これらを約2~2.5時間の中でこなすことは
難しいのではと容易に想像つくのではないでしょうか?

お子さんによっては
30~1時間で起きてしまう子もいますし
静かに過ごすことは難しいので
個別の対応が必要になります。
つまり子どもの姿勢を整えたことで
早く目が覚められると
休憩や書類、その他業務に着手できない
最悪起きた子の対応で
午睡チェックそのものができなくなってしまう

という問題があるのです
それがあおむけ寝に直すのが
おろそかになる要因ではないかと推察されます。

5、マネジメントの不備で事故は起きる

あおむけ寝が疎かになる
原因が上記を要約して
「保育外の業務時間の確保不足」
と仮定すると

事故の原因は本当に
「現場の意識や知識」
の問題なのでしょうか?

個人的にはそれは違うと考えます。
・職員の業務量と消化時間
・発達毎に子どもが起こしうる行動の予測とそれにかかる人手
・上記に対応できる職員配置とスケジューリング加えてフォロー体制
これらを
管理職が具体的に想定し仕組み化できていないこと
つまり
マネジメント不足
によるものと考えられます。




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