夜爪(よづめ)考
荒唐無稽な説が流れている。
説と言うより創作に近いのではないか。
日本書紀説、戦国時代説、江戸時代説
まあ、研究としてではなく読み物としての出版物なのだろうけど
こちらも創作に近い、みんな想像力が豊かで良いとは思うが
あくまでざっくり調査だが
まずは、次のサイトで「夜爪」を検索して欲しい。出版日は古い順で
出版年が明治21年(西暦1888年)の柏原叢志に「夜爪ヲ切レハ其親死ス」と記述があるのがわかる。さらに明治26年(西暦1893年)の古今俚諺類聚 第1類に「夜爪をとると親の目に這入る」と記述がある。
世事画報(1898年)に「夜爪を取れば狐につかれる」、他に夜爪、出爪の記述あり。私個人は登録してないので詳細は確かめられないが、そういう記述があることはわかる。
花影暗香(明治32年/1899年)に「夜爪を剪れば神の祟りを受け足袋履きしまゝ寐ねれば親の死にめに會はぬといふ」という記述があるのがわかる。夜爪と夜足袋について言及されている。足袋を「靴下」に変えて現在は迷信が残ってると思います。
迷信の日本(明治33年/1900年)では「夜爪を切ると親の目に這入る。」とある。
風俗画報(1901年)「夜爪を切れば世を詰める」←ダジャレ来たあああ!
風俗画報(1902年)「夜爪を剪れば親の死目に逢へぬ」←現在の来たあ!
俚諺辞典(明治39年/1906年)では「語呂が同じだから」と解説してる。
「夜足袋」と検索して欲しい。少国民(1901年)に「夜足袋をはいて寢ると親の死目に逢はぬ」の記述が見られる。
面倒臭いので詳細は検証しないが、途中から夜爪の迷信が変遷してるように思う。夜足袋はそのまま、靴下に引き継がれる。そう考えると日本書紀説、戦国時代説、江戸時代説とか盛りすぎじゃないかなと個人的な感想。
俚諺大辞典(昭和8年/1933年)でも「夜、爪を翦ると、親の目に這入る」の方がメインっぽい。補足で、「親の死にめに逢はぬ、早く親に別るゝともいふ」
おもしろいのでピックアップ
参考 自愛 : 衛生小説(明治44年/1911年)
うまく探せてないが、夜爪と夜詰はこのへんか?
江刺郡志(大正12年/1923年)
ここでは「夜足袋は親の死に目に会えない」も併記されている
横手郷土史(昭和8年/1933年)夜爪を切ると夜詰(通夜)する事が起る
禁忌習俗語彙(昭和13年/1938年)柳田国男
「夜詰」するような不幸が起る系の迷信か。
語呂が同じものは後付け
夜爪→世詰(短命になる/早死にする)→親の死に目に会えぬ
夜爪→夜詰するような不幸が起る→親の死に目に会えぬ
こうやって調べると、かなりいい加減な説を吹聴しようとしてるような気がする。
調べててなんとなく思ったこと
検証必要な仮説だが、「夜爪」の理由はかつてバラエティ豊かだったのだがいつごろからか「夜足袋を履いて寝ると親の死に目に会えない」と混同されて「夜爪は親の死に目に会えない」が追加され、いつしかメジャーな迷信になったのではないだろうか。それを元に辻褄合わせの自説を開陳してしまってる人達がいるのでおかしな説になってるのではないか。もう少しきちんと調べればおもしろいことがわかるかもしれない。ただ、迷信の真相に近づくのは難しそうではあるが。
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