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大学生のはなし

私が今住んでいるこのアパートはもうしばらくしたら出て行かなければならない。だけど、この部屋はただの部屋じゃない。そんなふうに思いたい。思いたいだけだけど。

目を瞑ればこの部屋に来た数々の友人たちが思い浮かぶ。忘れたくない、若い思い出たち。

1年生。先輩に恋をした。片想いにおいて1番忌まわしい行為である「思わせぶり」をされた。サークルの先輩や同期とこの部屋で宅飲みをした。

2年生。先輩への失恋から、遊んで暮らした。その後悔も滲む部屋である。夏、彼氏ができた。初めてちゃんと愛してくれた人だった。寒い夜はぎゅっとくっついて寝た。2人分の吸い殻が懐かしい。

3年生。春に彼氏と別れ、病的に落ち込み、ひどく痩せた。思えば彼は自分ばかり可愛がる人だった。まさに恋は盲目。3ヶ月ほど別の男性と恋人同士のように、でも友達として過ごした。喧嘩別れとなったが、彼のわがままさと思いやりから学ぶこともあった。付き合わなくたって別れは悲しいものだった。その彼が居候していたのもこの部屋だ。
毎日のように酒を飲み、カラオケに通ったフッ軽の友達とfirst loveを見て泣いたのもこの部屋である。

今はここで終わり。というのもまだ3年生だからだ。きっとこの部屋に住んだかつての住人たちも家を出るとき、こんなふうに過ぎ去った季節に思いを馳せていたんだと思う。 

大学に入ったと思ったらもう3年生なのだから、卒業するのも瞬く間なのだと思う。その時にまた、改めて書くことができればいいなと思う。
文字に起こしたって、記憶は思い通り風化するが。

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