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東日本大震災

12年前の今この時間。ロッカーの上で左右に激しく揺れる金魚の水槽。泣き叫ぶ女の子たち。それを笑って平静を保とうとする男の子たち。雪がちらつく校庭。校舎の窓から上着を投げてくれた先生。迎えがきて一人一人いなくなる。残った私と兄、そしてもう1人の男の子。3人で下校する。揺れるといつも意地悪な兄が私を庇うようにしてくれた。帰り道の断層、壊れた食器たち。津波と地震の情報で溢れるテレビ。聞き慣れない言葉、原子力発電所、放射能、圏内。いつでも出られるようにと窓を開けて2人震えながら過ごす時間。

そしてあれから住むことがなくなった街。たった一つのふるさと。もう2度と、という枕詞が付きものの悲しい思い出。この時私は、震災を経験していない同年代の人たちよりもはるかに大人になった、そんな気がした。

生まれ育った町より、避難先で過ごした日々の方が長くなっていくこと。生まれ育った町のことを思い出せなくなっていくこと。避難先がいつしか実家になってしまうこと。この虚しさが。

毎年この日は帰りたくなってしまう。あの場所とあの思い出に。

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