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その涙は本当に歳のせいなのか

先日、外から景気のいい音が聞こえてくるので、ベランダから顔を覗かせてみたらお神輿が通っていました

元気そうに声をかける老若男女、元気の塊が闊歩していました

この元気が夏の終わりを運んできた

そう思った僕の目には自然と涙が浮かんでました

「あぁ僕もおじさんになったなぁ」と思いましたが、そう思うと同時にそれを認めたくない自分がいました


おいっ!今っ!!!
涙を歳のせいにしたな!!?
そのせいにして感動の内容をないがしろにしなかったか!?



その翌日、ふとある動画を見ることになる

Youtube Music Weekendという企画で各アーティストがこの企画に合わせた特別な動画をプレミア公開やライブでリレーしていくというもの

その一コマが「初音ミク」でこの日のヘッドライナーでした

内容はマジカルミライというVOCALOIDの大きな祭典の2023年の編集映像

僕はちょっとだけVOCALOIDを使った作品を聴いていたし、なんならまたぶり返してきて最近の曲も聴いている

でもこの、VOCALOIDのライブについて、僕は正直わかんないままでいました

初音ミクでの楽曲が投稿され始めた2010年代、もちろん動く初音ミクを前にライブをするというのもこの頃から行われていたと思います

これの良さがよくわかっていなかった

ライブのいいところって演者と観客が双方向でコミュニケーションをし高め合っていくものだと思ってたからです

映像を流して、それに観客が盛り上がる、その間には大きな壁があると思っていました

なのでこのマジカルミライ2023も正直期待してなかったです
まぁ勉強がてら見てみるか、そんなもんでした

ちょうど見始めたのは最後の楽曲のところでした

初音ミクが生のバンドを引き下げ大スクリーンを縦横無尽に駆け回り、そして歌う

それに観客がコールを投げかける


僕はその光景をみて自然と涙が出ました
涙が止まらなかったです


いやそんなことない
だってこれは双方向ではなく一方通行のはずだ
ライブの雰囲気に押されて泣いてしまっただけであって、これはそういうもんじゃない
そう思ってもう一回見てみました


さっきより泣いた
声にならない声が出て
ぐちゃぐちゃになる程泣いた


これはもう嘘じゃない
この涙は本当の涙だと思う

こんなに泣くなんて俺も歳とったな…

ではない

このライブがなぜ僕の涙になったのか僕は知る必要がある
そう思いました


まず感動って人によっていろんなタイプがあると思います
僕の場合、いろんな情報、文脈がいろんな角度からひとつになって押し寄せてるときに感動して涙を流す節があります

今回もこれに当てはまるのではないかと思いました
なのでひとつずつ要素を分解して理解してみようと思いました


①楽曲

この曲は「HERO」という楽曲で作曲はYOASOBIのAyaseさん、ビッグネームの作ったクオリティの高い楽曲だと思います
名前の通りHEROを題材にした楽曲で緩急がうまくつけられておりサビには「HERO!!」と会場全体でコールができるような構成になっている
歌詞の内容は救済とこれからと言った感じでしょうか
この救済というテーマ、これに大残渣は弱い

好きなアーティストのひとつにサンボマスターがいる
この人たちに至っては存在自体が救済である
僕はこの楽曲で大泣きしている
それと同じようにこの楽曲は救済に加えて自らがHEROにもなるという後押しまでしてくれるのである
そりゃ泣くよ

②モーションキャプチャ技術をはじめとしたミクのビジュアルの進化

僕がこのVOCALOIDのライブと出会ったのおおよそ15年ほど前、その時のミクの動きは…正直ギクシャクしてた
完全に向こうの世界のもの
どうしても僕とミクの間には壁を感じました
それが今回はどうだろう、ものすごくぬるぬる動いている
しかも動作もちょっとだけ人間くさいところもあるのだ
おそらくプロのダンサーさんをキャプチャして最新の技術でそれを反映してる
キャラクターのデザインもものすごくかっこいい
モニターの大型化に成功したのも一つの要因だろう、大画面にを縦横無尽に行き来するミクに圧倒されました
その数たる技術の進歩に驚きました

③生バンドでの迫力の演奏とコミニケーション

今回、オケとして流す曲は生バンドが演奏してました
以前は音源がメインだった、その記憶しか残ってないです
これが大迫力だった
やっぱり生バンドはいいね
この生バンドは観客とコミュニケーションしてると思った
観客の熱量が上がるにつれ生バンドの熱量も上がっていく、そんな風に見えました
そこには双方向のコミュニケーションが成立していたと思います
今まで双方向がなかったところにその線を作った
それに感心していました

④観客の熱量

そして観客、この熱量がすごかった
この時テーマカラーがミクの少し緑がかった水色と赤だったのだが、そのペンライトを高々と掲げミクを含めた演者にエールを送っていました
15年ほど前、インターネットの片隅で知る人ぞ知るものだったのが、幕張メッセを満員にし、ここまで熱量の高いファンを集めることができた
その歴史と膨大な熱量に圧倒されました

⑤「HERO!!」

この救済、驚き、感心、圧倒が一気に押し寄せてくる
それがこの曲のサビでおこる「HERO!!」
救済、いやここは感謝も入り混じったHEROだと思います
それを素晴らしい技術で表現されたミクが観客に煽る
それに呼応してバンドも高まっていく
そして大観衆による「HERO!!」によってこれが一気に押し寄せてくる
そこにはミク、バンド、観客による双方向のコミュニケーションが完成してました
僕のキャパシティはどうに限界をこえました
その溢れた感情が涙となった、そう思ってます



これはもう老化による涙ではない
作り手が最高のものを用意してくれて、それを受け取ったときに流れる涙
そうだと思った

お神輿の時とは少し質感の違う涙かもしれないけど、僕はこの"涙の理由"をこれから大事にしていきたい

多分そこには自分の大切なものがあるはずだから


涙の理由を歳のせいで逃げない
そう思った夏の終わりでした


おわり

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