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【はじめに全文公開】孤独に悩む全ての人に読んでほしい!孤独とうまくつきあうための9つの習慣とは?

『孤独と上手につきあう9つの習慣』
和田秀樹(だいわ文庫)2021/4/10発売

【オビあり】孤独と上手につきあう9つの習慣

コロナ禍で外出自粛を余儀なくされ、外でもソーシャルディスタンスを保った生活をしてきたこの1年。
多くの方が孤独と戦ったのではないでしょうか?
友達がいるのに孤独、誰もわかってくれない気がする…など孤独感への悩みは尽きません。
2015年発売のベストセラー『孤独と上手につきあう9つの習慣』文庫化にあたりまして、その「はじめに」を全文公開いたします!
あなたの孤独を救うヒントになれば嬉しいです。

私もずっと「孤独」でした ― はじめに

 精神科医として私は、 36年のキャリアを積み重ねてきました。
 いま、私がもっとも関心を寄せているテーマは「孤独」です。というのも、現代病理の多くが、孤独や疎外感が「根っこ」になっていると思われるからです。
 それに加えて、2020年は「コロナ問題」という人工的な孤独状態が生み出されてしまいました。
 外出を控え、人との会話や接触は極力避けるという「新しい生活」は、まさに人間を孤独にさせるものでした。
 私は、これはとても危険だと考えました。
 ただでさえ人は外出をしないことで、セロトニンという神経伝達物質が減り、うつ病になりやすくなります。さらにコロナによる不況で、この先の生活の不安を抱えたり、実際に失業して経済的困難に陥ったりする人も少なくない。そのうえ、つらさを共有したり、語り合ったりできないことでより追い詰められ、自殺する人がかなりの数で出るのではないかと考えたからです。
 残念なことに自殺者数は増えました。
 さまざまな自殺予防対策が成功し、2019年まで10年連続で自殺者数が減っていたのに、2020年は2019年より750人多い2万919人が自殺で命を失っています。しかし、かつて年間3万人もの方が亡くなっていたことを考え、私はもっと増えるだろ うと思っていたのですが、2万人台でした。ネットを通じたつながりのおかげかもしれませんし、会社の人間関係で悩んでいた人が出社しないですむことで楽になったのかもしれません。
孤独や疎外感を恐れて社会に合わせていた人が、無理をしなくてよくなった、孤独とのつきあい方を覚えた、ということなのでしょう。

 しかし、そううまくいかない人も、たくさんいるはずです。
 この「新しい生活」において、ITを用いた人間関係をつくれない人もいるでしょう。

  また、酒類の売り上げが伸びていることから、アルコール依存症が増えているようです。
 本書でもふれますが、ひとり飲みはアルコール依存症の危険因子です。
実際、アルコール依存症、買い物依存症、セックス依存症、ギャンブル依存症といったさまざまな依存症は、孤独や疎外感によって起こるとさえ言える病気です。

 よく考えてみてください。
 友達と連れだって買い物をしたり、仲間と一緒にギャンブルをしたりする人が、それらの依存症に陥ったという話はあまり聞いたことがありません。アルコール依存のようなものでも、キッチン・ドランカーのような「ひとり飲み」の人のほうがはるかに危ないのです。
 それは、「もうやめたほうがいいよ」と、止められる人がいないからなのです。

 そして、コロナ時代以前から問題になっている、ひきこもりやスクールカーストも、孤独や疎外感をはずしては語れません。
 スクールカーストという学校内での人気の序列は、「みんなと合わせていないと嫌われる」という恐怖感から生じるとされています。表向きの仲間は多くても決して本音が出せないのですから、当事者の多くが疎外感に悩まされることも多くあるでしょう(今から40年以上前に、精神分析学者の小此木啓吾先生はこれを「同調型ひきこもり」と呼びました)。一時期話題になった便所飯症候群(ランチ仲間がいないことを極端に恥ずかしく思い、トイレで隠れて弁当を食べること)。これも、仲間がいないのがわかると寂しいやつだとバカにされるという意味での対人不信の病理、つまり、孤独や疎外感の病理ともいえるものです。
 モンスターペアレントや暴走老人というのも、「どうしてちゃんと相手にしてくれないのか!」という疎外感の裏返しで、思い切り厚かましくなるという側面があるはずです。

 人間は、それほどストレス耐性の強い生きものではありません。

 これほど多くの現代病理の原因になっている背景には、孤独や疎外感というものが、いかに人を生きにくくさせているか、ストレスの原因になっているか、という証拠だといえるでしょう。
 しかもこれらの「名づけられた」現象は、孤独や疎外感というものが生み出す問題のほんの一部にすぎません。
 実際、これらの病理よりはずっと軽いレベルですが、自分の居場所で安心してくつろげない、本心が出せないという人は、かなり多くいるでしょう。みんなに合わせて生きるのに疲れたという人もいるでしょう。

 とくに現代社会では、インターネットによる表面的なつながりを持ちやすいため、こうした孤独や疎外感というものが巧妙に隠される傾向にあります。
 表面上はうまくやっているとか、ネット上の「友達」は多いという「見えない孤独」は数多く存在します。
 自分でもそれに気づかず、いつのまにか心をさいなまれ、依存症や不安障害といった精神疾患にかかっている人も少なくありません。
 慢性的に、なんとなく寂しい、安心できない、孤独だという感覚に苦しめられているのです。

 もちろん、孤独というのは、上手につきあうことができれば、
自分の精神世界や人格に深みを与えてくれるものでもあります。

 昔の格言や文学作品には孤独を扱ったものがたくさんあることからわかるように、孤独といかにつきあうかというのは、洋の東西を問わず、人が生きるうえでの一大テーマでした。しかし、孤独が巧妙に隠される傾向にある現代社会においては、孤独や疎外感に対して、受け身の姿勢ではなく、より自覚的に向き合う必要があると思います。

 孤独とはいったい、なんなのか。
何が孤独を見えなくさせていて、どこに問題があるのか。自分はどう孤独とつきあっていくべきなのか。

 こうした考察を深めることこそ、社会を確かな目で見抜き、本質的でオリジナリティに富んだものの考え方をするために必須の教養です。
 そしてそれは、自分の人格を成長させ、しなやかでたくましい精神を形作ることにもつながっていきます。こうしたことが、現代人に必要な「孤独の作法」であると私は考えています。

 今は、上辺だけ取り繕って、魅力のある人間であるかのようにふるまうノウハウやテクニックのほうが重視されがちかもしれませんが、そんなメッキはいとも簡単にはがれてしまいます。

 実は私も、みんながわかってくれないという孤独感を、
 子どもの頃から40年近く感じ続けていました。

 しかし、あるきっかけで本音を平気で出せる仲間と知り合い、ワインを趣味にして、酔っ払って言いたいことを言い合ううちに、少しずつ人間不信が解け、孤独感がかなり和らいできました(それでも、なくなったわけではないことは断っておきます。でも、この程度の孤独感ならあったほうがいいとも思っています)。以前より、少なくとも、素直に人に依存できるようになったのは確かです。

 本書を手に取った読者のみなさんは、きっと、表面的なものの捉え方が蔓延しているのに気づきそれが嫌になったり、みんなに合わせるのにもう飽き飽きしていて、より本質的で根源的なものの考え方をしたいと、心のどこかで思われたのではないでしょうか。
 だからこそ、この本を手に取ったのでしょう。あるいは、表向きはうまくいっているが、なんとなく孤独で疲れる自分にさよならをしたいと思ったのかもしれません。

 孤独や疎外感というのは、人間なら誰しも避けては通れない根源的な悩みです。
 しかし、私も精神科医になってから 年経ち、いろいろな経験も積み、社会観察もし、いろいろと考え続けてきたことは確かです。

 なぜ自分が、どうにか孤独感から逃れることができたのか。

 自分なりの結論もふくめて、自分なりに考えてきたことを、できるかぎりお伝えしていきたいと思います。

 本書をきっかけに、孤独についてちょっと考えるきっかけを得て、あるいは、少しでも楽になり、本当の意味で底力のある魅力的な人間になれる一助となれば、著者として幸甚です。
和田秀樹


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