能登半島地震ファクトチェックシリーズ1「報道ヘリの音で瓦礫の下の声が聞こえない」
野嶋ゼミ2年のファクトチェックチーム松村です。
今回は、「報道ヘリの音で瓦礫の下の声が聞こえない」という書き込みのファクトチェックを行いました。
1.検証対象
この書き込みは、2024年1月1日に、X(旧Twitter)にて投稿されました。2024年1月18日の時点で、20万いいね、4.6万リポスト、3,027.7万件の表示がされていました。
なぜ、このテーマを選んだのか
結果によっては、多くの人の命にかかわることだから
いいね、リポスト、表示の数からみて、とても影響力があると考えたから
2.検証結果:根拠不明
今回は、誤りと証明できないが、証拠・根拠がないか非常に乏しい、「根拠不明」と判断しました。
3.検証過程
3-1報道ヘリが飛ぶ位置について
まず、報道ヘリがどのくらいの位置を飛んでいるのか検証しました。今回のデータは、NHK公式ホームページの航空デスクに実際に取材をしたページから参考にしました。
救助ヘリの高度:1000~1500ft(約305~455m)
報道ヘリの高度:2500ft以上(約760m以上)
上記からも分かるように、報道ヘリの方が300~400mほど高い位置を飛んでいることが判明しました。そして、下記の画像からヘリコプターのそばの騒音が110㏈ということが分かります。そのため、110㏈のヘリコプターが760m離れたときの音の大きさも検証しました。検証結果は、約52㏈になることが分かりました。そして、52㏈の騒音と下記の騒音例の画像を比べてみると、エアコンの室外機や静かな事務所と変わらない大きさになることが判明しました。つまり、760m離れた報道ヘリは、あまり大きい音を出していないことが分かります。
3-2報道ヘリの役割について
次に、報道ヘリは上空から撮影することしか行っていないのか疑問に思ったため、報道ヘリの役割について調べました。この検証も、先ほどと同じNHK公式ホームページの航空デスクに実際に取材をしたページから参考にしています。
なるべく早く継続的に航空取材をする
周辺にいる救助のヘリに無線で場所を伝える
人命に関わりそうな現場を最優先にする。
上記のことから、報道ヘリは上空からの撮影だけじゃなく、周辺にいる救助ヘリにも無線を送っていることが分かりました。また、現場状況よりも人命を最優先にしていることも判明しました。そして、撮影した映像によって支援が入りやすくなったり、行政が動いたりすることもあります。つまり、報道ヘリも人命救助が全くできないわけではないという結果になりました。
4.まとめ
今回私は、「報道ヘリの音で瓦礫の下の声が聞こえない」という書き込みのファクトチェックを行いました。
本件から分かったことは以下のことでした。
報道ヘリは、救助ヘリよりも高い位置を飛んでいる
報道ヘリが飛んでいる位置から算出したヘリの音量は、エアコンの室外機程度の静かなものであり可能性が高い。
報道ヘリも人命救助を全くできないわけではない
今回のファクトチェックで、報道ヘリがあまり騒音を出しておらず人命救助の役にも立っていることが分かりました。しかし、報道ヘリがいる時といない時での死亡者数や被害の大きさを具体的な数値を出して検証したわけではありません。そして、ヘリの数や救助者の健康状態などからも結果が変わってくると考えられます。そのため、今回のファクトチェックでは根拠が不十分だと思い、「根拠不明」という結果になりました。
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