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ソーシャル・フィットネスへようこそ。 Vol.1―フィットネスの「最適解」はつながりである

バディトレ会員の皆様、そして直接つながりのある皆様、こんにちは、バディトレ代表の星野です。

さて、今回は読者のあなたが、健康になりたい、あるいは痩せたいという目的で、何らかの生活改善を考えていると仮定して、僕が今考えていることを書いてみたいと思います。

あなたが最初にすることはなんでしょうか?
①とりあえずジムに入ったりトレーナーをつけている友達に聞いてみる
②名前を聞いたことのあるサービスをWebで検索する

このへんではないでしょうか。

ところで、いまあなたが②を実行するとしたら、どんな名前が出てくるでしょうか?特に最近レスミルズやb-monsterといった暗闇系のエクササイズが流行っていますね。ではボクシング?サイクリング?あるいは、ヘルスケアのアプリケーションも増えていますね。FinCやみんチャレと言ったサービスも多くの方が知るようになってきました。アプリでなんとかしようと考えますか?

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2つのトレンド:ナッジとゲーミフィケーション

星野は、いまあるフィットネス系のサービスは、ざっくり分けてナッジとゲーミフィケーションの観点から分類できると思っています。

ナッジとは「そっと背中を押すこと」
ゲーミフィケーションとは、その名のとおりフィットネスを何らかの意味で「ゲーム化」すること。

まず、ナッジ。この分野で目覚ましいのは、上図のとおりアプリですね。
「昼食を記録しましたか?」「今日は何歩歩きましたか?」とプッシュ通知を送ることは、一見なんでも無い工夫に見えますが、認知行動科学の分野では、これが絶大な効果を発揮することが知られています。
 みなスマホに釘付けになる時間が長いという現代社会の闇は、反転させるとスマホをハックするだけで、必ずメッセージを受け取らせることができるという大きなメリットになります。
 しかし、逆に言うと、ナッジは最初のひと押しに過ぎません。ここから継続は、アプリだけでは難しい。なぜなら、人間のモチベーションはこうなっているから。

「やるぞ!」と決めた瞬間からやる気はゆっくり落ちていくことになります。フィットネスジムを経営するとわかります。だって、極端な例では、お金を払って「やります!」と言った翌日から一回も来なくなる人すらいるんですよ。人間の「面倒くさい」は、しばしばお金より強いです。

 
この「やるぞ!」スイッチを何度も押すのがアプリの使命ですが、はっきり言って、プッシュ通知は、目覚まし時計を止めるようにスワイプして追い払ってしまうことができるので、ナッジとしては弱い。ナッジは、継続をうながす仕掛けとセットでなければ有効ではないのです。

 さて、あなたは今、ナッジだけでは足りない、なにか継続するモチベーションが必要だと考えています。

 前の図をもう一回みてください。いくつかのフィットネスジムでは、ある種のゲーミフィケーションを取り入れています。ゲーミフィケーションは、苦行をゲーム(遊び)にすることによって、モチベーションを内在化します。つまり、「それ自体が楽しいから継続が苦ではない」ということです。
 ここでは本来の意味から少しずれて言葉を使用しますが、最近のジムにおいては「文字通りのゲーム化」傾向がみられます。光や音のエフェクトや、動きの複雑さ、それから指定されたパネルをタッチすることで進んでいくポイント制の競技など、日進月歩でさまざまなものがでています。

もうひとつの、本来の意味での「ゲーミフィケーション」は、まさに継続をうながすインセンティブ設計という意味で使われています。たとえば、日々のカロリー計算や運動量がポイントとなり、それがポイントとなって競うことで報酬が出たりするようなアプリ(ex. Fitbit)は、まさにその例です。こちらは、人間の行動を変えるという観点では、ずっと説得的です。

 しかし…ちょっと目新しい、光ったり暗かったり、音が出たり、あるいはRPGをずっと簡単にしたようなポイント獲得のゲームには、正直飽きがすぐに来るんですよね。もちろん「フィットネスのゲーム化」というトレンドの今後の成長からは目が離せませんが、アーケードゲームなみのクオリティを保ったものがそこらじゅうでプレイできるようになる…というところまではまだ遠い。

あなたは、そもそも、「ジムにいくのがめんどい」という気持ちを、そこまでの精度ではないゲームがしたい!という気持ちによって乗り越えるということを、想像できますか?そのような面白いゲームが出来る可能性をもちろん否定はしませんが…

「続けること」への収束

このようにどのようなフィットネスも一長一短です。
あなたは、もしかしたら、「じゃあ何を選べばいいの?」と思っておられるかもしれません。

日々ブログやSNSで行われる、パーソナルトレーナーの「こっちのほうが正しいメソッドだ!」「こっちのほうが痩せられる!」「俺の方が勉強している!」みたいなマウンティング合戦にも少々疲れを感じてきた僕としては、やや気が重い質問です。

僕は東京大学で筋生理学の修士号を取得しました。
トレーナーとしても早くから活動し、理論と実践の両面でかなり試行錯誤してきたほうだと思いますが、

そんな僕が得た真実は、「人間という身体の複雑さ」です。

「こうすればああなる」「ああすればこうなる」という簡単な因果関係を取り出すことは極めて難しい。

そして、非常にしばしば、メソッドAとメソッドBの微妙な効果の差よりも大きいのは、結局継続するかどうかなのです。

そもそも、昨今のヘルスケア業界の改善施策がナッジとゲーミフィケーションに集中しているということ自体、動作やメソッドだけでなく「継続性」がカギである、という共通了解がひろまってきた証拠ではないでしょうか?
結局、よいフィットネスは、あなたにとって続けられるフィットネスなのです。

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