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五輪と世代間のずれ

五輪に関する報道で実際に参加したことがある選手からすると少し首を傾げるような情報が見られるので、私の知る限りで(2000-2008)実際はどうなっているのかという情報をシェアしたいと思います。私は選手に対し共感が強すぎるのでやや客観性を失っている可能性があることを先に謝っておきます。

他国の選手が事前に競技会場を体験できず日本の選手だけ体験できることは不公平であるという意見がありましたが、私自身が実際に五輪で現地の競技場を事前に体験したのは3大会のうち北京だけでした。時差調整の負荷と、競技場は大体どこも同じ条件だと考えるとあまり事前に体験する意味はないという判断からです。今回日本の競技場で初めてプレイする選手も多いでしょうが、これは別に珍しいことではありません。

世界の選考会が行われた国のタイムを見ていると例年とさほど違いがありません。一方途上国では選考会もできず厳しい状況だと思います。つまり、メダルに絡むような先進国にはそれほど大きな練習環境の差はなく(決勝レースなどは例年通りになる可能性が高い)既に差があった国とはさらに広がることが予想されます。この点はとても不公平だと考えられます。もう少し踏み込むならそもそも五輪がとても不公平な条件のもとに行われていたということを私たちは認識すべきだと思います。

普段は試合が終わったりすると観光をしたりします。選手が観光などに出れば一般の方と接触があるかもしれませんが、各国で報道であまり自分たちが歓迎されていないことは選手も認識しているでしょうから積極的に出る可能性は低いのではないでしょうか。選手にとっては現地の人間と会うメリットはあまりありません。選手が接触する機会が多いのは選手村内で働いている洗濯、通訳、掃除、食事などのボランティアの方です。ここにはリスクがあると思います。

ウーバーイーツが許可されたという報道がありましたが、これはどんな受け渡しになるのかわかりません。選手村はセキュリティゲートを通過してしか入れません。空港でゲートの内部に入っている人に荷物を渡す様子を想像してもらえるとわかりやすいと思います。普通に考えると難しい気がしますが。

選手は五輪で結果が出るかどうかで人生が分かれます。キューバの選手は五輪で金メダルを獲得し、マンションと車そして軍のポジションを得ました。選手にとっては一攫千金の舞台である五輪の舞台ですから、選手村内はリラックスしていながらもそれなりに緊張感が漂っています。一般のイメージで言えば数年かけて勉強してきた司法試験やセンター試験の前日に何をして過ごしますかというのが近いかもしれません。選手村は完全なゼロサムゲームで誰かが勝てば誰かが負けます。勝手に気を抜いて転げ落ちてくれるなら他の選手にとってはラッキーなだけです。

選手村で宴会が行われるという意見があります。これは実際にはどうなるかわかりません。アルコールは選手村では販売していません。外部で買って選手村に持ち込むのですが、セキュリティがありこれから試合がある他の選手の目があることから、飲む人も人目を避けて飲んでいた気がします。ただ日本の滞在場所周辺しかわからないので、別では派手に飲むのかもしれません。

最近のZ世代(選手の大半がZ世代)はあまり酒を飲まないそうです。私の経験では東アジア、旧ソ連、南米あたりは飲酒に寛容ですが、それ以外の地域ではそうでもありません。むしろ世界的な流れで、身体にダメージの少ない合法大麻などの使用を求める声が大きくなってきています。CBDなどは使用している選手もいます。痛みを抱える選手も多いですから、今後選手村で使用許可を求める動きが出るかもしれません。

選手村に入るのはZ世代が大半です。一人の選手は酒の解禁とかどうでもいいからSNSの解禁だよねと言っていました。宴会よりtiktokやinstagramの方が楽しいと感じる世代と、人が集まって楽しいことといえば宴会だろうと自然に考える私のような旧世代とのずれが出ているように思います。特に日本は世界的にも例がないほど高齢化が進んだ国ですので、自然と発想が高齢者寄りになるのはわかりますが、やってくるのは世界の10,20代がほとんどだということは忘れずにいたいです。

参考資料
米ティーンの飲酒減る、酒類メーカーの酔いさめるか
選手村のコンドーム

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