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理不尽耐性と不条理耐性

体育会系人材の特徴として理不尽耐性があるという話をよく聞きます。長くスポーツをしていると苦しい状況でも粘れる人間は多いのは確かで、それが評価されることもあります。一方で、体育会系は上意下達の文化が強く、イエスマンで指示待ちが多くなっているという批判もあります。

競技において耐性が求められる局面は大きく分けて二つあります。一つは押し付けられたことに耐える力です。例えばチームの方針が自分の意見と違っていてものみ込む。また、集団の中のルールや風習を受け入れる。現状を受け入れて適応する力とも言えます。

もう一つは、目標に対し障壁となるものとぶつかった時に耐える力です。例えば優勝を目指しているチームでエースが怪我(けが)をして状況が危機的になった時や、五輪を目指してきたのに予選で怪我をして逃してしまった後に立ち上がるなどです。挑戦すれば必ずさまざまな障壁が現れますがそれに対し粘って諦めず立ち直る力です。

この両者の違いは、置かれた環境で押し付けられる困難に耐える力と、能動的に動いた結果やってくる困難に耐える力の違いと言えます。さて、理不尽という言葉に似た不条理という言葉があります。理不尽と不条理の定義を調べると

理不尽 道理に合わないこと、矛盾していること、筋が通らないこと

不条理 不合理であること、道理に合わない、筋道が通らない

とあり、あまり違いがないように思えます。ただ、理不尽はもう少し人間同士でのことや感情を含み、不条理はもう少し広い範囲でのことを指すとというニュアンスがあるそうです。理不尽な上司だとは言いますが、不条理な上司だとは言わず、不条理な天候とは言いますが、理不尽な天候とは言いません。理不尽は他者や社会から押し付けられる不合理と言え、不条理は人知を超えた環境から押し付けられる不合理と言えます。

私は、これまでの社会は比較的予測がつきやすくかつ計画が立てやすかったために、組織も管理型に近かったと考えています。その場合、計画通り行える事が大事だったので、計画を優先し組織の都合を優先できる、理不尽耐性がある人が重視されたのではないでしょうか。

一方で環境が変わり予測がつきにくい時代には、計画がそもそも立てられません。以前に学んだ方法や適応した自分の姿自体が環境に合わなくなることがあり得ます。このような変化の激しい時代にその場で耐えていれば時代と共に後ろに押し流されているだけなので、リスクを取って新しいことをやっていく必要があります。新しいことをやると必ず予想もしなかった困難がやってきますから、理不尽体制より不条理耐性の方がより重要になるのではないかと考えられます。

不条理耐性がある人は、今ここを生きることができるのだと思います。物事は思い通りには進みません。動いた結果いちいちショックを受けていてはやってられません。だったら何も新しいことを始めない方がまだ予想がつくからいいと考えてしまいます。臨機応変に対応するには、目の前の瞬間に集中することが必要です。

スポーツ選手の多くが成功より失敗から学んだというのは、この不条理体制を得た経験だからではないでしょうか。

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