見出し画像

なぜ女子選手の腕振りは横で振られるのか

非常によくある質問なので私なりに考えていることをまとめてみました。動画でのまとめはこちらになります。

女子選手の腕振りの動きを考察するにあたり、以下の疑問が浮かぶと思います。

①そもそも腕振りとはなんなのか

②女子選手の腕振りはなぜ横振りになるのか

③特に日本の女子アスリートの腕振りに横振りが多いのはなぜなのか

それぞれ疑問にお答えしていきたいと思います。

まず、腕振りとはなんのために行われるものなのかをご説明します。一つは地面に力を加えるため、もう一つの役割の身体の制御、骨盤の安定です。ここでは主に骨盤の安定の話をします。人類は直立二足歩行に適応しています。四足ではなく二足でしかも不安定な直立姿勢を維持する必要があったために、下半身はとても重要でよく発達しています。下半身だけで人体の重要の6割以上になります。その中で人類の移動はほとんど歩行やゆったりとした走りでしたから(狩りも短期間のダッシュではなく、長時間のランニングで追い詰めていた)、回転数をあげるようには適応していません。ゆったりと振り子のように足を前後に振り出しながら移動する動きに適応しています。

スプリントは最高速度を求めるために、その重たい足を素早く入れ替えなければいけません。その重たい足を振り回すために骨盤も回転を繰り返すのですが(でんでん太鼓のような動き)、それがあまりに激しくなってしまうと根本がぐらぐらして足に振り回される動きになってしまい(太鼓と棒の接続部分がぐらぐらしているでんでん太鼓のイメージ。早く回せない)、速く足を動かすことができなくなります。速く足を動かせなければ速く走ることもできません。足を素早く安定して動かすためになるべく腰を安定させる必要があります。その腰の動きを相殺するために腕振りを行いますクルクル回すオフィスの椅子の上で両手を横に広げ振ってみてください。速く動かすと椅子がクルクル回りますがこの力を使って骨盤の動きを制御するわけです。

女子選手は男子に比べ、骨盤が広くなっています。半径が広いわけです。そうなるとそれを制御するために腕振りも必然と回転する力を求められます。しかも男子に比べ非力な女子選手はそれを補うために腕振りがやや前後方向ではなく回転方向、つまり横振りをするようになります。この動きで骨盤を制御しているわけです。

ところが、海外の選手を見るとそれほど横振りをしている選手を見かけません。これはまず人種的に骨盤が横に広がりやすいタイプと、縦に伸びやすいタイプがあるためだと考えられます。日本人も様々な人種がありますが、多数はモンゴロイド系で、足がやや短く太く横に広がりやすい傾向にあります。例えばきちんとしたデータを見たことはありませんがアリソンフェリックス選手は骨盤が狭いように見受けられますが、腕振りもまた綺麗な縦振りになっています。しかし、ここで別の疑問が浮かびます。近い人種であるアジア系の中でも特に日本人だけが腕を横に振る傾向にあるのですが、これはなぜなのでしょうか。

私はここに内股で歩く文化が影響しているのではないかと考えています。着物を着ていたからとか、自分を小さく見せるためとか、原因ははっきりとはわかりませんが、日本の女性の内股率は極めて高いです。私は人が歩くのを見るのが趣味なのですが、銀座で女性が歩いているのを見てもう服装では見分けがつかないですが、歩行のスタイルでかなり見分けがつきます。中韓は訳いにくいですが、日本人はかなりはっきりわかります。内股だからです。

人間が姿勢良く直立すると内股という姿勢はとても取りづらくなっています。直立姿勢ではガニ股が基本です。ですから素早い回転を行うバレエなどではガニ股での直立を基本にしています。内股になるとどうしても腰が後ろに引けてしまい直立できないからです。内股姿勢をとるということは、少し腰を後ろに引くことになり、けれどもバランスを取るためには上半身は前に倒し気味になりさらに肩は丸まり猫背気味になります。ちょうどおへそあたりを後ろに引っ張ってみると体が丸まる感じになりますがあの姿勢に近いです。

この猫背気味、腰が引けている、後ろ重心の状態で腕を振ると必然的に脇が開き腕は横回転をするようになります。そうしないと回転のバランスが取れないからです。ですから日本女性の腕振りは横を振るように覚えたというよりは、生活様式、文化的な影響により自然に身についた内股姿勢で走った場合、バランスを取るために腕を横に降らざるを得なくなっている、というのが実際のところではないでしょうか。

ですから、もし私が女子選手をコーチングするならば、最初に姿勢、次に歩行、それから腕振りに着手する順番で行います。腕振りだけ直してもバランスが変わっていなければ、違うところに弊害が出るからです


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?