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芸能界と家族主義

テレビの仕事をやるようになった最初の頃に印象に残った風景があります。確か若い女性のタレントさんがお世話になっている男性芸能人に「お兄ちゃんと呼んでいるんです」と話をしていました。それ以外にも「お母さんと呼んでいます」「お父ちゃんなんですよ」という表現と出会うことがあります。

ファミリー的なものは、事務所のくくりというわけではなく、飲んだりしているうちに仲良くなっていき、自然とそのグループができるもののようです。

しかし、これが芸能界だけの特徴かと言えばスポーツにも似たところがありますし、企業ですら財閥時代の関係は今も残っています。

この家族的なものを凝縮しきった世界が、いわゆるヤクザの世界だと思います。名前からして家族であり、叔父貴と呼んだり、親父と呼んだりします。集団を形成することで生存しやすくする戦略だったのだと思います。海外でも似た集団はファミリーと呼んで、集団を形成し、鉄の掟を持つことが多いです。

この凝縮を少し薄めていくと、「絆」や「思い」という言葉が出てきます。

母性社会日本の病理で河合隼雄さんは日本のこの包括的で優しく、一方で個人として独立し切り離すことを許さない特徴を解説しています。父性は物事を切り離し、定義し、独立させますが、母性は包括し、境界を曖昧にし、一体であることから逃しません。

時代は個人主義に向かいつつあります。家族主義は包括的でもあり、家父長的でもあり、ホモソーシャルでもあります。男性だけのコミュニティのほとんどは母性的です。

芸能界もまた個人主義の方向に向かいながら、新たなコミュニティの形を模索するのでしょうか。


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