【JBpress町田さん記事感想③】アイスショーの価格

JBpressオートグラフに掲載された、町田樹さんの記事の中から、気になった話題をピックアップして書いてみたいと思います。
第三弾は、「アイスショーの価格」についてです。


アイスショーのチケット価格

「とても多いですね。毎週末アイスショーがどこかで開かれているような状況なわけです。加えて10年前と比べると軒並み20〜30%ほどチケット価格が上昇し、急激なインフレを起こしています」

 実際、多くのアイスショーでは、チケット代の値上げが続いてきた。

町田樹が考察するアイスショーの現状と問題点、公演数の増加とチケット代の高騰による「インフレ」をどう乗り切るか|スポーツ科学研究者、元フィギュアスケーター・町田樹インタビュー(1)町田樹/松原孝臣

他のエンタメと比べて、アイスショーのチケット価格は高いと言われます。
理由はいくつか考えられるのですが、主に下記の点でしょうか。
アイスショーにおける特殊な事情がみえてきます。

  • 舞台設備(スケートリンクを作らなければならない)

  • 音響設備、権利関係(音楽使用の権利関係、アーティスト招聘など)

  • 出演者(人数が多く、海外スケーターも含めると滞在費や渡航費がかさむ)

アイスショーの価格弾力性

「いま、日本全体がインフレ時代に突入していますが、アイスショーの価格の上昇率は非常に高いために、観客の負担がかなり増していっています。一般の方々にとってアイスショーは価格弾力性が高い——価格の変動が需要に大きく影響する——サービスだと推測できるため、この顧客層の需要は落ちているのではないでしょうか。ゆえに、現在のアイスショーは主に複数回鑑賞する熱烈なスケートファンの方々によって支えられていると考えられますが、チケット代が高騰しているためにリピーターとしてチケットを購入することが難しい状態と言えるでしょう」

町田樹が考察するアイスショーの現状と問題点、公演数の増加とチケット代の高騰による「インフレ」をどう乗り切るか|スポーツ科学研究者、元フィギュアスケーター・町田樹インタビュー(1)町田樹/松原孝臣

実際問題、アイスショー乱立の現状とチケット価格の高騰は切っても切れない関係にあります。
観客が出せる金額の範囲は有限であり、その中でやりくりするため、どのアイスショーにお金を出すかを選別するのにさらにシビアになっていくからです。
(そのために、情報提供が十分にあるといいのですが…)
つまり、この記事が指摘するように、「アイスショーは価格弾力性が高い=価格の変動が需要に大きく影響する」と考えられるのです。

(※)「価格弾力性」についてはこちらに詳しく記載しています。
<参考>【用語解説】価格弾力性

また、この記事にある通り、観客の中には同じアイスショーを複数公演鑑賞する、という方も少なくありません。
場所や回によって出演者や演目が異なったり、座席によって見え方が変わることもあり、何度も見ることで新たな発見や、違った面白さを味わうこともできます。リピーターチケット(少し割引になる)を販売しているショーもあります。
しかし、1回分のチケット代が高ければ、複数公演の鑑賞を断念する可能性も十分に考えられます。

アイスショーが求められるクオリティ

「私はスケートの優れた作り手がもっと現れなければいけないと思っていますし、振付家という意味での人材育成がさらに促進されなければならないと思います。個々のプログラムを創作するだけでなく、ショー全体を総合的に演出できるような人材が、これからより一層求められるようになるでしょう。すでに十何年以上、本当にコアなファンはついてきてくれていると思うので実に目が肥えているはずなんです。チケット価格がかなり高騰しているだけに、少しでもクオリティが落ちた時点で顧客が離れてしまう恐れがあります。そうした肥えた目による鑑賞にも耐え得る質のショーを創作することのできる人材を、スケート業界の中から輩出していかなければなりません」

現在のアイスショーに必要なものとは?町田樹が提案する「スターに頼らない経営」と「ショースケーターの育成」|スポーツ科学研究者、元フィギュアスケーター・町田樹インタビュー(2)
町田樹/松原孝臣

アイスショーの差別化にもつながる話ですが、チケット価格が高騰している以上、その金額に見合ったと観客が感じることが重要です。
特に現在、集客のメインはいわゆるスケオタと呼ばれる、コアなフィギュアスケートのファンの方々。
長年ファンを続けている方も多く、日本全国様々な試合やアイスショーに足を運んでいる人も少なくありません。
そういった方々に満足していただく、金額に見合ったと感じられることが重要かなと感じています。
(逆に、それが感じられないと観客は離れていってしまいます)

最後に

それぞれのアイスショーが、きちんとコンセプトを明確にすること。
来てよかった、また来たいと思わせるようなクオリティにすること。
それは、コンセプトや構成、演技内容はもちろんですが、事前の情報発信からチケット購入、スタッフの応対や事後の対応まで、アイスショーの一連の流れの中で(表面には出てこなくても)観客はジャッジしていると伝えたいです。

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