インターネットと小説のこと
父が携帯電話を買って来た日のことは今でも覚えている。
これから何か緊急のことがあったらこの番号にかけなさいと言われた電話番号は、今でもそらで言える。自分の社用携帯や、一緒に暮らしている彼氏の電話番号も覚えていないのに。子供のころの記憶って、根っこのほうに根付いているんだなぁと思う。
家に家族共用のパソコンが来たのは小学校6年生くらいのときだった。
書くのも読むのも、小説に夢中になっていた私は、ノートに手書きでずっと物語を書き溜めていたんだけれど、そのうち頭の中で走り出すストーリーに自分の手が追いつかないことがもどかしくなっていった。
その昔、うちに何のためにあったのかわからないワープロがあったことを思い出して、奥の部屋から引っ張り出してもらった。ローマ字入力でさえなかったそのワープロで小説を書こうと奮闘する私を見かねたのか、それとも単に良いタイミングだったのか、父がパソコンを導入してくれた。
頭の中のストーリーに追いつきたくて、タイピングソフトでブラインドタッチも練習して、ワードにどんどん小説を書いていった。
その当初、そのパソコンはインターネットにはつながっていなかった。それでも、自分の物語を吐き出すのについてきてくれるパソコン本体があるだけで私は大満足。
中学生になってから、そのパソコンにネットが繋げられた。そこで私は自分の小説をネット世界に放ってみるということを覚えた。
まるっきり二次小説で、とある作品のファンサイトの小説投稿ページに載せていただけだったけれど、それでも反響が来ることが信じられないくらい嬉しかったのを覚えてる。
一番嬉しかったのは、私がそのサイトで何作目かを載せるようになっていた頃、新作に対するコメントで
「この前まで○○を書いていた△▲さんですよね?あの作品が大好きでした。新作も楽しみにしていますね」
と言われたこと。
ハンドルネームも、その作品の名前もはっきりと覚えているけれど、こっ恥ずかしいから割愛。
誰かに褒められたくて書いている気持ちは全くなかったその頃だったからこそ、そんなふうに言ってくれる人がいたことが、心臓がバクバクするくらい嬉しかった。
私にとってのインターネット黎明期は、小説と切り離せない。
また書いてみようかな。褒められるわけないってわかってるからこそ、気楽に。
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